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顔合わせ④



 顔合わせもいよいよ最後……クロの番になった。とはいっても、クロに関しては俺の予想通りではあるが、まったく問題など無かった。

 クロは葵ちゃんや陽菜ちゃんとすぐに打ち解けたようにコミュ力高いので、母さんと父さんともものの十数分で打ち解けてしまった。

 ただ、それでも母さんと父さんの顔からは完全には緊張の色が消えていない。それはクロとの会話に不満があるわけではなく、このあとに予定されているクロの商会でふたりを雇うという話、その内容が気になっているのだろう。


 そんなふたりの様子はクロもすぐ察したみたいで、優し気な笑顔を浮かべながら告げる。


「さて、お互いの自己紹介はこのぐらいにして……アカリちゃんとカズヤくんも気になってるだろう、仕事に関しての話をしようか」

「あ、はい!」

「よろしくお願いします」


 いよいよ母さんと父さんにとっての本題ともいえる就職の話が始まった。クロは何枚かの書類を取り出し、それをふたりに渡しながら説明を始めた。


「ある程度はカイトくんからも聞いてると思うけど、ふたりに提案するのはこの一年かけて魔法具製作の技術者を育成するっていう内容だね。えっとたしか異世界ではケンシュージッシュウセイとか言うんだったかな? その細かな内容について説明するね」


 そう言いながらクロは一枚の紙、おそらく年間のスケジュールが書かれているであろうものを指差しながら言葉を続ける。


「流れをすごく簡単に説明しちゃうと、午前中に座学……魔法についての基礎から知識面の勉強をして、午後は実技……最初は本当に簡単な作業から実際に魔法具に触れながら勉強してもらって、徐々にレベルアップしていく感じだね。そして一年経ったところで簡単な試験を受けてもらって、合格すれば正式に魔法具技術者として雇用する形になるね」

「……えっと、クロム様。その試験に落ちた場合は?」


 試験という言葉を聞き、少し不安そうな表情で母さんが訪ねるが、クロは優しい表情のままで言葉を返す。


「心配しなくていいよ。試験に落ちたからって解雇したりしないからね。もちろん勉強の手を抜いてたり、普段の行動に問題があった場合は解雇もあり得るけど、ちゃんと勉強して試験に落ちたとしても見放したりしないよ。その場合は、十日間の勉強を追加して、もう一度試験を受ける形になるね。普段の態度に問題が無ければ、合格するまで何度でも挑戦してくれて大丈夫だよ」

「なるほど、ありがとうございます」

「うん、他に質問はあるかな? ないなら、次は一日の流れについて説明するね」


 母さんがホッと胸を撫でおろすのを確認したあとクロは、二枚目の紙……今度は一日のスケジュールが書かれたものを指差しながら説明を始める。


「こっちも簡単に説明をすると……朝の十時から開始して、二時間座学の勉強をしてもらう。そして、一時間のお昼休憩を挟んで、昼の一時からまた二時間、今度は実技の勉強をしてもらう感じになるね」

「……えっと、クロム様? それはつまり、すべて合わせて五時間ということですか?」


 今度は父さんがやや戸惑った表情を浮かべながら尋ねると、クロは笑顔を浮かべたままで言葉を返す。


「うん、そうなるね」

「……それは研修中だけですか?」

「うん? いや、正式採用してからも同じだよ。もしかしたら時間帯はズレてもらうかもしれないけど、通産の勤務時間は変わらないよ」

「……『拘束時間五時間、実務四時間』……そ、それだけでいいんですか?」

「変かな? 『この世界での平均的な勤務時間』だけど……あっ、もしかして異世界はもう少し勤務時間が長いのかな? 実務五時間ぐらいかな?」


 ふたりとも唖然としている。いや、かくいう俺も驚いている。日本にいたせいか、どうも一般的な一日の勤務時間は八時間以上をイメージしていたので、正直ビックリである。

 そんなことを考えつつ、ふとあることが気になったのでクロに尋ねてみることにした。


「……クロ、それで、母さんと父さんの給料はどれぐらいになるの?」

「そこは気になるところだよね。うん、それじゃあ給料の説明をしようか……これに関してはふたりには申し訳ないんだけど、勉強中は正式雇用に比べて給料は低くなっちゃう。あと年間の特別給料……えっと、ボーナスっていうんだっけ? それも、正式雇用してからになるね」


 少し申しわけなさそうに告げるクロだが、それは俺や母さん、父さんも予想していた……というか、当たり前と言っていい内容だったので、特に驚きはない。

 ふたりにしてみれば魔法の勉強もできてお金ももらえるので、多少給料が低くても文句は……。


「だから、勉強中の給料は月に『3000R』だね」

「「「ッ!?」」」

「あっ、国にかかる税金とかは商会の方で払うから、給料が減ったりはしないから安心してね。あと、勉強中にボーナスは出ないけど、勉強態度が問題なければて光の月と天の月の給料は『倍』になるから、そこは期待してくれていいかな」

「「「!?!?」」」


 ……ちょっと待ってほしい。3000R……日本円にして30万円? その上光の月と天の月は60万円? しかも税金とかはひかれた上での、手取り額?

 ……それ、手取り30万のボーナス年に2ヶ月分ってことなんじゃ……。


「……ち、ちなみにクロ? 正式雇用になったら?」

「正式雇用になったら、魔法具技術者の基本給『5000R』になるね。もちろん、昇給もあるからね! あと、ボーナスは光の月と天の月の二回。それぞれ給料の『3ヶ月分』だね!」


 月収手取り50万、ボーナスは年に6ヶ月分……それいきなり年収1千万クラスなのでは? とんでもねぇよ。さすが世界最大の商会……。

 クロの説明を聞いて、母さんと父さんも呆然としている。というか、父さんに至っては頭を抱え始めた。


「……実務4時間で、手取り50万? ボーナスは6ヶ月分? ……ホワイト……異世界は……超絶ホワイト……」

「……えっと、カズヤくん? 大丈夫? 何か気になることはある?」

「あっ、えっと……月の勤務日数はどれぐらいでしょう」

「正式雇用になると勤務変更とかもあるから絶対じゃないけど、大体『月に15日』かな?」

「……月の休み半分、実務4時間で手取り50万……異世界すげぇよ……レベルが違うよ……」


 そういえば、前に父さんが働いてた会社ってホワイト企業って呼ばれてたんだっけ……それでも、このクロの商会の条件を聞いてしまうと、ブラック企業に思えてしまうから不思議だ。


「な、なぁ、クロ? 念のために確認するんだけど、それって他の研修生も同じ条件?」

「そうだけど?」

「……そっか、凄いな……ものすごい好条件だ」

「うん? 条件っていうならボクのところより、シャルティアのところの方がいいと思うよ? シャルティアの配下はうちと似たような条件で、ボーナスが年二回『10ヶ月分』だからね」

「……すげぇよ異世界」


 つい父さんと同じような言葉が零れえてしまう。だけど、これはしょうがないと思う……異世界すげぇよ、レベルが違うよ……。





~おまけ・それぞれの条件~


セーディッチ魔法具商会(技術職)

基本給(手取り):50万(昇給有)

賞与:年二回計6ヶ月分

拘束時間:5時間

実務時間:4時間

年間休暇:180日(有給制度あり)

支給:技術服、交通費、各種技術本

備考:残業無し



幻王配下

基本給(手取り):30万(昇給有、潜入任務中は手当あり)

賞与:年二回計20ヶ月分

拘束時間:平均8時間(任務によって変動あり)

実務時間:基本的に指示が無い限り8時間の内容を報告書に書いて報告するだけ(そこまで細かに描かなくてもOK、作成にかかる平均時間は20分ほど)、

年間休暇:120日(有給制度あり)

支給:交通費、制服、各種武器

備考:残業無し、『副業可』

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― 新着の感想 ―
[一言] 幻王配下の雇用条件が以前から変わってる!
[一言] う…異世界がホワイトすぎて行きたいんだけど!
[一言] 昔働いてた企業ではボーナスは年3回で1回平均が5ヶ月でしたね 営業トップの人は凄まじくボーナスの年間総額は46ヶ月分もらってました(実話) 大企業じゃなくて中小企業の話
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