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新築記念パーティ③



「そうそう、カイトさん」

「うん?」


 明るい表情で声をかけてきたアリスの方を向き、軽く首をかしげる。


「さっきの情報に捕捉ですが、アインさんはあまり勘違いされることは無くて、ツヴァイさんは勘違いされやすいのには、もう一つ原因があるんですよ」

「ふむ」

「さっきも言った通りツヴァイさんはアインさんの真似をしているわけですが、やはりなにもかも同じってわけじゃなくて所々に違ってのはでるもんなんですよ。例を挙げるなら……アインさんってパッと見はクールでお堅い感じじゃないすか、でもアインさんはアレで結構ユーモアもある人だったりするので、そういう部分でも違いは出てきますね」

「……なるほど」


 言われてみれば思い当たる部分はある。アインさんは喋り方も丁寧で、メイドに関すること以外ではいつも冷静沈着なクールな女性ではあるが……それだけではない。

 バーベキューの時にはアハトにツッコミを入れていたり、神殿ではクロノアさんにジョッキミルクを出していたり、六王祭ではアリスの挑発に乗って料理勝負なんてことをしていたり、そして先ほどみたいにツヴァイさんをからかったりと……意外とノリのいいところがある。


 例えるなら、アインさんは『冗談が通じる人』という感じだが、ツヴァイさんはアリスの真面目過ぎるという発言から察するに『冗談の通じない人』といった感じなのだろう。

 そういった細かな性格の部分で違いが表れているからこそ、ツヴァイさんは誤解されやすいのかもしれない。


「まぁ、完璧に同じ性格の人なんていないわけだし、そういうこともあるんだろうなぁ」

「ですね~……さて『現実逃避』はこの辺にしておいて、いい加減いま目の前で突発的に発生した『世界の危機』に関して話しましょうか……」

「……そう……だな」


 アリスの言葉を聞いて、俺はできれば関わりたくないと思いつつも……その世界の危機とやらに目を向けた。

 もしこれが漫画なら「ゴゴゴゴゴ」という擬音が浮かんでいるであろう睨み合い……片や無表情ながら地響きが起こるほどの魔力を放つこの世界の神(シロさん)

 片や、明らかな怒気の見て取れる表情を浮かべ、空間が歪むほどの魔力を放つ異世界の神(エデンさん)

 冗談抜きで、世界のひとつやふたつ滅びそうな事態である。


「だ、だけど、いったいなにがあったんだ……」

「分かりません。というか珍しいですよね? シャローヴァナル様とエデンさんの喧嘩って……あのふたり、結構いろいろ契約を交わしてるみたいで、普段は互いにあまり邪魔してない感じですし……」

「言われてみれば、あのふたりの喧嘩って初めて見るかも……」

「クロさんもどっち止めていいか分からず、オロオロしてますね……さすがのクロさんでも、あのふたりまとめて相手するのはキツイでしょうしね」


 睨み合うふたりの近くでは、クロが珍しく焦った様子で交互にシロさんとエデンさんを見ていた。アリスの言う通り、どっちを止めれば喧嘩が収まるのか分からず割って入れないみたいだ。


「……正直、関わりたくないんだけど……やっぱ、駄目だよな?」

「駄目ですね。確率で言うと100%中500%ぐらいの割合で『原因はカイトさん』なんですし……」

「……そう、なるよな……」


 できることならこのまま見なかったことにして回れ右したいところだが、アリスの言う通り原因は高確率どころかほぼ確定で俺に関わるなにかだろう。

 俺が原因で世界が滅ぶとか冗談じゃないので、なんとかしたいところではあるが……あの睨み合いに割って入るのは……。

 そんなことを考えていると、無言で睨み合っていたエデンさんが……静かながら威圧感のある声で呟いた。


「……なぜダメなのですか?」

「再度繰り返しますが、この件に貴女を関わらせるつもりはありません」

「……契約外だとでもいうつもりですか? ですが、私はこれまで再三に渡り契約外の事柄に対して譲歩してきました。今度は、貴女が譲るべきではありませんか? シャローヴァナル」

「それに関しては感謝していますし、私も今後契約外の事柄において譲るべきところは譲りましょう……ですが、『ソレ』と『コレ』は、別の話です。貴女の参加を認めるわけにはいきませんよ、エデン」

「「……」」


 バチッと両者の間に火花が散る光景が見えた気がした。事情はよく分からないが、エデンさんがシロさんに対してなにかを要求し、シロさんがソレを拒否しているみたいだ。


「……といっても、それでは貴女は納得しないでしょう?」

「その通りです」

「ならばやはり、コレで決める他ありませんね」


 そう呟いたあと、シロさんは白金貨を一枚出現させてエデンさんに見えるように持つ。それを見たエデンさんは、なにかを了承するように頷いた。


「……ルールは覚えていますか?」

「コインが落下するまでの時間を変えることは禁止、ですね?」

「えぇ、その通りです。では、私は表で……」

「ならば、私は裏ですね」


 な、なんだろう? 事情がさっぱり分からないけど、コイントスで決めるってことなのかな? シロさんが表、エデンさんが裏……それだけなら、普通のコイントスだけど……なんだ? この異常な雰囲気は?

 妙な緊張感が漂う中、シロさんがコインを上空に弾く……弾かれたコインは、ものすごい勢いで上空へと昇り、一瞬で見えなくなった。

 それだけでも常識外の出来事だが……それはまだ、序章に過ぎなかった。


「やばっ!?」


 シロさんがコインを弾いた直後、そんなアリスの声が聞こえ……シロさんとエデンさんの周囲に、クロ、アリス、フェイトさんの三人が出現する。

 そして、シロさんとエデンさんを覆うように半透明の円柱型の障壁のようなものが張られ……直後にそれが滅茶苦茶に形を変えながら揺れ始めた。


「ぐぎぎ……なんて圧力……このクソ神共、フルパワーじゃねぇっすか!?」

「シャルたん! 冥王! 頑張って!? こんなの少しでも外に漏れさせたら『大陸どころか世界が消し飛ぶ』から!?」

「分かってるけど……抑えるだけなのは、かなりきついね」


 ちょっと、まって、なにこの状況? なんなのこれ?

 かろうじてシロさんとエデンさんがとんでもないことをしており、ソレを必死に三人が余波が外に漏れないように止めてる感じなのは理解できるんだけど……状況に頭がついていかない。


「……ヘカトンケイル!」

「……物語の始まり(プロローグ)!」

「……対象は私達三人のみ……運命の臨界点!」


 ……あれ? 俺たちなにしてたんだっけ? 新築パーティだよね?


 ……『最終決戦』とかじゃないよね?






シリアス先輩「……とんでもない状況なのは分かるけど、原因がほぼ確実に快人絡みで、たぶんくだらない理由だと予想できる」

???「カイトさんへの愛で世界がやばい」

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― 新着の感想 ―
このタイミングで臨界点使ったのなんでや?と思ってたけど…なるほど ヘカトンケイル中は成長ロック外れるおかげで効果出るから使えるんだ
フェイトさんの運命の臨界点、クロやアリスに効果あるの?
[一言] カイトが近寄れば済みそう
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