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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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思い出したよ

 ジークさんの両親の衝撃的な登場から少し、現在俺達の前ではルナマリアさんが膝と手を地面に付き、小刻みに体を震わせていた。

「……あの、すみません。決して悪気があったと言う訳ではなく、言い忘れていただけで……」
「……」
「いや、本当に偶々、リグフォレシアに訪れるにあたってお手紙をお送りしたら、快く案内を引き受けて下さったので……」
「……」

 ルナマリアさんの首筋のすぐ横には、二本の剣が地面に突き立てる様に置いてあり、その前では怒りに満ちたジークさんが仁王立ちしている。
 どうやらジークさんの両親が俺達を案内してくれると言うのは、ジークさんにだけは知らされてなかったらしい。
 まぁ、リリアさんにはちゃんと伝えてた辺りから考えると、この駄メイドは確信犯だと思うけど……

「じ、ジークちゃん。ルナちゃんも悪気があった訳じゃないんだから、もうその辺で……」
「……」
「ひっ!?」

 ジークさんの母親である赤髪の女性が声をかけるが、ジークさんに一睨みされてすぐに引っ込む。
 これはジークさんの怒りが収まるまで、少し時間がかかりそうだ。

「ミヤマ様! 助けて下さい!」

 って、おい!? こっちに振るな駄メイド!!
 いやいや、そんな縋る様な目を向けてきても、今回は……いや、今回もだけど自業自得だから、俺は関係ない話だから。
 俺には助ける義務も義理も無い訳で、このまま静かに……だからこっち見ないでルナマリアさん。俺そう言う縋りついてくる様な目に弱いんですから……ああ、もう!!

「……あ、あの、ジークさん。もうその辺で、許してあげてくれませんか?」
「……」
「いや、気持ちは分かりますけど、ルナマリアさんも反省してると思うので、そこを何とか」
「……」

 俺の説得の言葉を聞き、ジークさんはやや不服そうではあったけど頷いてくれ、ルナマリアさんの首の横にあった剣を抜く。
 それを見てルナマリアさんは心底ホッとしている様子だが、残念ながらこのまま放置するつもりはない。
 この状況下においてどっちの味方に付くと聞かれたら、俺はジークさんと答えるだろう。このままではジークさんが可哀想なので、手は打っておく事にする。

「ジークさん。もし今度ルナマリアさんが変な事をしたら、俺に言って下さい。考えがありますので……」
「……あの、ミヤマ様? その考えと言うのは……」
「クロに頼んで叱って貰います」
「申し訳ございませんでした!! どうかそれだけはご容赦を!!」

 狂信者にこの脅しは大変効果的だったようで、ルナマリアさんは地面にこすりつける程の勢いで頭を下げる。
 ジークさんに怒られてた時より明らかに必死なんだけど、それはどうなんだろうか?

 ともあれこれでジークさんの機嫌もある程度は戻った様で、改めてジークさんの両親と向かい合う。

「気を取り直して、ようこそ皆。ジークリンデの父親でレイジハルトと言う。気軽にレイさんと呼んでくれたまえ」
「同じくジークリンデの母親のシルフィアよ。フィアって呼んで頂戴。よろしくね~」
「「「よろしくお願いします」」」

 明るい笑顔で自己紹介をしてくるジークさんの両親。
 しかしこうして間近で見ると、本当にどちらも若いと言うか……20代どころか10代でも通用する程に若々しい姿だが、どちらも200歳は越えているらしい。エルフって凄いな……

「ご無沙汰しています。レイさん、フィアさん」
「リリアちゃんも元気そうね。旦那さんは見つかったかしら?」
「あ、いえ、それは……」
「恋愛神様の祝福を受けても無理でし――ごふぁっ!?」

 余計な事を口走ったルナマリアさんの腹部に、綺麗なボディブローが叩き込まれた。ホントに懲りないなこの人……
 どうやらリリアさんはジークさんの両親とは面識があるらしく、非常に丁寧な挨拶を交わす。

 さっそく街を案内してくれる感じだったが、ルナマリアさんが先に予約している宿の場所を確認して荷物を運びこんでくると告げ、ルナマリアさんが戻るまでぜひ家でくつろいでくれとレイさんとフィアさんが提案してくれたので、俺達はジークさんの実家にお邪魔する事になった。
 レイさんとフィアさんはとても明るい性格をしているみたいで、移動中も俺達に色々と話を振ってきてくれる。

「ところで、ミヤマくんと言ったね」
「え? あ、はい」

 移動中突然レイさんが真剣な表情を浮かべて話しかけてくる。
 端麗な容姿も相まって、真剣な表情を浮かべる顔はどこか鋭さを感じるものだ。

「どうだい? うちのジークは、可愛いだろう!」
「……は?」
「……!?」

 いきなり何を言ってるんだろうかこの人は?

「いや、親の私が言うのもなんだが、ジークはプロポーションも整ってるし、とびきりの美女だ!」
「は、はぁ……」
「君も男なら、ジークの魅力が分かるだろう?」
「あ、はい。まぁ」

 確かにジークさんはスラリと高い身長に、凛々しさと愛らしさが一体となった様な綺麗で整った顔、赤い髪とエルフ族特有の長い耳もマッチしていて、美人と呼んで間違いない人だと思う。
 性格的も穏やかで優しいし、料理やお菓子作りも得意で気立ても良くて非常に魅力的な女性だ。
 でも、何故このタイミングで、しかも実の親がそんな事を聞いてくるのだろうか?
 俺の返答を聞いたレイさんは、どこか満足した様に頷いた後で、ズイッと俺に顔を近づけながら興奮した様子で口を開く。

「そうだろう、そうだろう! それで、君はジークとどこまで進んだのかな?」
「……はい?」
「~~~!?」

 もう一度繰り返すが、何を言ってるんだろうこの人は?

「デートはしたかい? それとも、もうキス位は済ませちゃってるのかな?」
「い、いや、別に俺とジークさんはそんな関係では……」
「なんだって! 君は正気か!? ジークと一月も一緒に生活をしていて欲情しないなんて、君は本当に男なのか!」
「……え、ええっと……」

 ちょっと混乱して頭がついていかないが、たぶんレイさんはとんでもない親馬鹿なんだと思う。
 口振りや態度からジークさんを非常に愛しているのは伝わってくるんだけど、何だろうこのとてつもなく残念な感じ……

「いやね、勿論私も父親として可愛い娘に恋人が出来るのは辛い。しかし、同時に娘に幸せになって貰いたいとも思うんだ……そして今日、ジークが生まれて初めて男性を連れて実家に帰って来た! 私はもう、結婚報告ですら涙を飲んで受け入れる覚悟だった!」
「……」
「だと言うのに君は……このままではいけない! 男とは時には野獣の様に攻めなければならない時もあるんだ! よっし、お小遣いをあげるからジークと二人でデートでもして――ぶぉっ!?」

 ぐいぐいと物凄い勢いで押してきていたレイさんの顔面に、それもう凄まじい速度で拳が叩き込まれた。
 拳を叩き込んだのは言うまでも無くジークさんである。
 ジークさんは顔を真っ赤にしており、ぶるぶると握りしめた拳が震えていた。大変お怒りである。

「じ、ジーク、お、落ち着きなさい。お父さんはジークの為を思っ――ぶへっ!?」
「……」

 尻餅をつきながら弁明の言葉を続けようとしたレイさんの顔面に、再びジークさんの拳が叩き込まれる。
 もはやジークさんに慈悲等は存在していない様で、レイさんが何かを言うより早く次々と拳を振り下ろしていく。

「あらあら、ごめんなさいね~騒がしくて」
「え? あ、いや、止めなくて良いんですか?」
「いいのよ。今のはあの人が悪いわ」

 大変バイオレンスな事になっている旦那を見ながら、フィアさんはのんびりした口調で俺に話しかけてくる。
 ああ、何と言うか、ジークさんの家の日常が目に浮かんだ気がするよ……この流れ、レイさんがふざけてジークさんが怒り、それをフィアさんがのんびり眺めるのはいつもの事みたいだ。

「まぁ、あの人も悪気があった訳じゃないのよ。ジークちゃんが、貴方の事を凄く気に入ってるみたいだったからね」
「え?」
「!?!?!?」

 フィアさんがのほほんと告げた言葉を聞き、レイさんを殴っていたジークさんの拳が止まる。

「だって、最近ジークちゃんから送られてくる手紙には、いつも貴方の事が――むぐっ!?」
「~~」
「ジークさん?」

 フィアさんはそのまま言葉を続けようとしたが、最後まで言い切る前に素早く移動したジークさんが口を塞いだ。
 ジークさんは真っ赤な顔で俺を見ながら、何やら必死に首を横に振っている。
 う~ん。多分だけど、ジークさんは珍しい異世界人である俺の事を手紙に書いて両親に送ったんだけど、それをレイさんが勘違いしちゃったって事かな?
 それならジークさんの慌て様も納得がいく。そりゃ、自分が意図してない風に受け取られて、両親がぶっ飛んだ事言い始めたら慌てもするだろう。

「葵先輩。ジークさん、私から見ても結構分かりやすいんですけど……宮間先輩って、鈍いんですか?」
「たぶん、自己評価が低くてその発想に至らないんじゃないかしら?」

 拝啓、母さん、父さん――ジークさんの両親は中々強烈な方で、ジークさんはとても大変そうだった。だけど、何て言えば良いのかな? その慌ただしい様なやり取りを見て、母さんと父さんが生きてた頃の事を――思い出したよ。











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