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新築記念パーティ①



 ついにというべきか、ようやくというべきか新築記念のパーティが始まった。

 最初は家主である俺の挨拶からだが、今回は以前の誕生日パーティとは違って時間は十分にあったので、しっかり文面は考えてきている。

 まぁ、とはいっても、集まっているのは知り合いばかりなので難しい挨拶は必要ない。「今日は忙しい中来てくれてありがとうございます。楽しんでいってください」的な内容を少し長めに話しただけだ。


 ちなみに俺の家は王都の中央区画で、首を伸ばすと王都のほとんどが影になるということで……さすがにマグナウェルさんの参加は難しかった。

 そのためファフニルさんが代理としてマグナウェルさんからのお祝いを持ってきてくれた。マグナウェルさんには、後日こちらから出向いてお礼を言うつもりだ。


 パーティ会場となる家の庭は、アニマ、イータ、シータ、キャラウェイさん……そしてイルネスさんを始めとしたリリアさんの屋敷のメイドさんたちも手伝ってくれ、見た目も華やかで美しい感じに仕上がっている。

 皆にも改めてお礼を言わなければならないけど、まずパーティが始まって一番にお礼を言うべき人たちのところに行くことにしよう。


「……アインさん、ツヴァイさん。今回はいろいろ手伝っていただいて、本当にありがとうございます」

「お役に立てたようなら幸いです」

「ミヤマ様の助けに成れたのであれば、これ以上の喜びはありません」


 俺の言葉を聞いて、アインさんとツヴァイさんは軽く微笑みながら言葉を返してくれた。なんというか、こうして二人でいるところを見ると、アインさんとツヴァイさんは似ているところが多いと感じた。

 敬語口調なのもそうだが、クールな雰囲気とかも似ている気がする。ただ、ツヴァイさんの方がアインさんより少しピリッとしているというか、ほんの少しだけ怖そうな雰囲気である。


 もちろんいまは感応魔法で感情がわからずとも、ツヴァイさんが俺に対し友好的であるのは分かっているが……やはり厳しい教師といった雰囲気のツヴァイさんを前にすると、少し背筋が伸びる思いである。できればもう少しツヴァイさんとも仲良くなりたいものだ……。


 そんなことを考えながら軽く雑談をしたあと、俺は他の人たちに挨拶をするためにふたりから離れて移動する。

 するとそのタイミングで、姿を消していたアリスが出現して声をかけてきた。


「……う~ん。私としても、あの子は家族の分類ですし……『誤解されたまま』ってのはアレですね。このあたりで誤解を解いておきましょうか」

「うん? 誤解?」

「ツヴァイさんのことですよ。カイトさんはツヴァイさんをどんな性格の人だと思ってます?」

「へ? えっと……冷静沈着な仕事のできる大人の女性で、フィーア先生とかの話だと礼儀作法に厳しい」


 アリスの言葉の意図がわからず、首をかしげながら聞き返すと……アリスは軽く溜息を吐いたあとで、苦笑を浮かべながら言葉を返してくる。


「実はそこが大きな誤解だったりするんですよ」

「……つまり、ツヴァイさんは俺が思っているような性格の人じゃないってこと?」

「そうですねぇ……ちなみに、アリスちゃんの印象だと『真面目過ぎてちょっと抜けたところがあるけど、頑張り屋で感情豊かな明るくて面白い子』ですね」

「……え?」


 真面目って部分は理解できるけど、抜けたところがある? むしろ隙がなさそうな印象だ。

 感情豊かな明るくて面白い子? 表情ほとんど変化しない気がするし、声もいつも一定なんだけど……たしかに、アリスの語るツヴァイさんの印象は、俺が思い描いているものとは違う。なんでだろう?


「まぁ、その辺りも解説しますよ。一度ツヴァイさんのところに行きましょう」

「あ、あぁ……わかった」


 戸惑いつつもアリスの言葉に頷いて、先ほど別れたばかりのツヴァイさんの元へ移動する。


「……おや? ミヤマ様……挨拶回りに行かれたのでは?」

「あ~私が頼んで、一度戻ってもらいました。久しぶりですね、ツヴァイさん」

「これは、シャルティア様。ご無沙汰しております。こうしてお会いできて光栄です」


 俺が戻ってきたことに一度首を傾げたツヴァイさんだったが、アリスの言葉を聞いてすぐに丁寧な動きで挨拶をする。う~ん、やっぱりアリスから聞いてたイメージとは合わない気がする。


「それにしても、貴女も立派になりましたね。昔はいつも『アインお姉ちゃん! アインお姉ちゃん!』と、いつもアインさんの後ろをチョコチョコ付いていっていたのが懐かしいですよ」

「……シャ、シャルティア様? い、いったいなにを?」

「おや? その『手袋』、まだ大切に使っているんですね。たしか……『クロム様にいただいた手袋が破れてしまいました』って、貴女が泣きついてきて私が直してあげたんでしたね」

「……シャルティア様。ば、場所を変えましょう! こ、ここには私の家族もいます……わ、私にも姉としての威厳がですね……」


 どこか大げさな言い回しで話すアリスの言葉を聞いて、ツヴァイさんは分かりやすいほど慌てふためいている。


「そういえば貴女は昔から家族想いの優しい子でしたね。誕生日に大好きなアインさんにケーキを焼いてもらって、ひとりで食べればいいのにわざわざ私のところまでもってきて……『シャルティア様も一緒に食べましょう!』って言ってくれたんですよね~」

「シャルティア様! お、お願いします。もうその辺で……」

「私が食べていいのかって尋ねると、貴女は満面の笑顔で『もちろんです! だって、シャルティア様も私の大好きな家族ですから!』って言ってくれましたよね。いや~いい思い出です」

「後生です! シャルティア様!! もうやめてください!?」


 あ、あれ? なんかツヴァイさんの様子が全然いままでと違う。なんというか、姉にからかわれている妹みたいな……あれ?

 ツヴァイさんのあまりの変化に俺が驚いていると、どこからともなくアインさんが現れ、なにやら溜息を吐きながら口を開いた。


「……懐かしい話をしていますね。あの頃のツヴァイは、本当に私を慕ってくれていましたね」

「アイン!? 話に入ってこないでください!」

「もう、アインお姉ちゃんとは呼んでくれないのですね……寂しいものです。嫌われてしまったのでしょうか?」

「嫌ってません! 嫌ってませんから!!」

「……でも、いつの間にかアインと呼び捨てにするようになりましたよね?」

「……そ、それはその……は、恥ずかしいからで……決してお姉ちゃんを嫌っているわけでは……」

「よく聞こえませんね? もう一度大きな声でお願いします」

「~~~~!?!?」


 アインさんにまでからかわれ、半泣きで顔を赤くしながら縋るようにアインさんのからかいを止めようとするツヴァイさん……いままでからは想像もできないほど、感情豊かな姿である。


「とまぁ、こんな感じです」

「……えっと、つまり、いまのツヴァイさんが……言ってみれば、素の性格ってこと?」

「えぇ、あの子は普段冷静な風に振舞ってますし、魔導人形なので平時の表情の変化は乏しいので誤解されがちですが……割と心の中では百面相してますよ」

「……う、うん。そうなんだ……」


 つまり、ツヴァイさんは普段はあえてクールに振舞っているということだろうか? なんでそんなことを……さっき言ってた、姉としての威厳ってやつなのかな?

 そんな俺の考えを察したのか、アリスがどこか意地の悪い笑みを浮かべながら説明してくれた。


「まぁ、いまカイトさんが考えてる理由もあるにはありますが……じつはもっと大きくて、可愛らしい理由があります」

「……可愛らしい理由?」

「さっきの私の言葉を思い出してください。ツヴァイさんは大のお姉ちゃん子で、アインさんが大好きなんですよ……ほら、いるでしょ? クロさんの家族の中で、丁寧な口調で話すクールなメイドさんが……」

「え? まさか、それってつまり……」

「えぇ、そういうことです。ツヴァイさんにとって憧れの女性はアインさんなんですよ……つまり普段のあの感じは、大好きなお姉ちゃんみたいになりたくて、真似をしてるだけです」

「……もしかして、ツヴァイさんって実は……かなり可愛い方なんじゃ……」

「アインさん含めた六王の家族内では、いじられキャラです」


 これはまさかの新事実である。ノインさんやフィーア先生がアレだけ恐れるツヴァイさんが、実際のところはお姉ちゃん大好きないじられキャラだった。

 これ、たぶん……フィーア先生とかも知らないのではないだろうか?




???「実は、アリスちゃんの番外編である始まりの来訪者にヒントがあったりします。クールというよりは、ハキハキとした明るい子です」

シリアス先輩「……やめよう? ヒロイン力上げはやめよう? もう「いいパーティだった」で終わって次の話に行こう?」

???「次のエピソードは、とあるキャラのルートらしいですけどね」

シリアス先輩「できるだけパーティを引き延ばすんだ! 八人目の恋人登場で私の命が危ない!!」

???「あと関係ない話ですけど、活動報告に七巻のキャラデザを公開中です!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 愛いやつめ…( -∀-)
[一言] マグナウェルさんは人化できないのかな?
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