表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
706/2406

閑話・アニマ~得た友~



 真新しいと言える新築の快人の家、そこにいつも通りの軍服風の衣装を身に纏ったアニマが戻ってきた。

 そして玄関をくぐったタイミングで、彼女を迎えるようにキャラウェイが姿を現す。


「おかえり、アニマ」

「ああ、いま戻った……ご主人様は?」

「まだ戻られてはないけど、たぶんもうそろそろ戻ってくると思うよ」

「そうか……」


 キャラウェイの言葉に頷いたあと、並んで廊下を移動しながらアニマは口を開く。


「キャラ、自分は書類をある程度纏めたら、ご主人様の元へ相談ごとに伺う。その間に契約書を作成しておいてほしいのだが?」

「うん? 了解。ってことは、今日見てきた商会には出資するんだね」

「見たところ活気もあり、製作予定の新商品についても悪くはなかった。方針も安定しているし、出資して問題ないと判断した」


 マジックボックスから書類を取り出し、軽くキャラウェイに見せながら説明するアニマ。キャラウェイのことを愛称で呼んでいることからも、ふたりが親しい関係であることが伺える。


「ふむふむ、出資額とか条件は最初に考えてたのでいいかな?」

「問題ない。それとお前のことだ、それほど時間がかからず作成するだろう……もし時間が余るようなら、イータとシータの方を手伝ってやってほしい」

「信頼が厚いなぁ~嬉しいけどね。そっちも了解だよ。シータの方にはイルネス様も居るし、イータの方を優先して手伝う方がいいかな?」


 現在イータは手伝いをしてくれているツヴァイと共にパーティの会場の準備を、シータはアイン、イルネスの両名とパーティで出す料理の用意をしていた。


「あぁ、アイン殿とツヴァイ殿の手伝いはとてもありがたいが、今回の主催はあくまでご主人様だ。なにもかも、おふたりに任せるというわけにはいかないだろう」

「だね。あぁ、そうそう。頼まれてた招待客に渡すお土産だけど、無事に届いたよ。個数も品質も問題なし」

「そうか、個別に袋詰めは?」

「終わってるよ。まとめて倉庫に入れてあるよ」

「……さすがだな」


 キャラウェイは身体能力はもちろんだが、それ以外もかなり優秀である。元々爵位級高位魔族として高い身体能力を有している上に、基本的に器用なのでなんでもそつなくこなす。

 そういう意味でも、アニマにとって安心して仕事を任せられる相手となっていた。


「いよいよ明日だね~。さすがに招待客がビックネームすぎて緊張するよ」

「……そうだな。だがご主人様も、初めてのパーティの主催で緊張されているだろう。ご主人様のためにも、自分たちがしっかりしなければな……お前にも期待しているぞ、キャラ」

「もちろん頑張るよ。あ~でも、いろいろ指示貰っちゃったし、少しは見返りが欲しいかな~」

「……なんだ? 言ってみろ」


 話の途中でなにかを思いついたような、少し意地の悪い笑みを浮かべるキャラウェイを見て、アニマは軽くため息を吐く。

 キャラウェイは非常に優秀な存在ではあるが、少しだけいらずら好きな面もある。敬愛していると言っていい快人に対してそんな面を見せることはないが、親友と言っていい間柄のアニマに対しては時々からかうようなことも口にする。


「今度一杯付き合ってほしいかな? ほら、放っておくとどこかのクマさんは、ひっきりなしに働いちゃうからね~たまには息抜きも必要だよ」

「はぁ……自分としては休息は最低限でいいのだが……」

「ダメダメ、そんなこと言ってると、またミヤマ様に『働きすぎ』って叱られちゃうよ?」

「ぐっ……それを言われると……」


 キャラウェイは、高位魔族としてはそれなりに長い年月を生きている。だからこそ、働くべき時はしっかり働き、休むべき時はしっかりリラックスするといった切り替えが上手い。

 だからこそ、だろうか? 真面目過ぎるほど真面目で努力家なアニマと彼女の相性はよく、キャラウェイがこうしてたびたび息抜きに誘うことで、アニマも適度に気を抜くことができている。


「……分かった。ただ、翌日に差し障らない程度に節度は守ってだ」

「はいはい。相変わらずお仕事大好き……というより、ミヤマ様大好きなアニマで安心だよ」

「からかうな、キャラ」

「あはは、それだけミヤマ様が魅力的ってことだね」


 明るく笑うキャラウェイの表情を見て、アニマも毒気を抜かれたのか、軽く微笑んだあと……『肩から力を抜いた』。

 ソレを見てキャラウェイは軽く頷き、話を切り替えるように告げる。


「よしっ、それじゃ切り替えて頑張ろう! 私は契約書の作成とパーティの準備の手伝い。アニマは書類の整理と、ミヤマ様への相談だね」

「ああ……自分もご主人様との話が終わったあとは、手伝いに加わるつもりだ」

「了解、じゃあ力仕事系は残しとくよ?」

「ふっ、そうだな。任せろ」


 今後の動きを確認し合ったあと、ふたりは執務室の中へと入る。そして、契約書の作成に必要なものを用意するキャラウェイに、アニマは小さな声で呟いた。


「……キャラ、お前が居てくれて心強い。いろいろ気を回してくれて……礼を言う」

「ありゃ? 珍しい……困ったなぁ、明日はパーティなのに雨降っちゃうよ」

「……おい」

「あはは」


 アニマはこの二年の間に成長した。知識の面でも、精神の面でも……クロムエイナも指導ももちろん大きいだろうが、こうして気の合う友人を得れたことも……彼女を大きく成長させた要因なのかもしれない。





シリアス先輩「パーティ始めるって言ったじゃないですかぁぁぁぁ!?」

???「閑話は別なので……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ