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家を建てよう⑥

活動報告にコミカライズ第一巻の発売日と表紙を公開しました!


発売日は4月25日です。どうぞお楽しみに!



 僅か一夜で家を建てたというアリスの言葉。最初は驚いたが、少し落ち着いてくると……まぁ、アリスなら可能だろうと納得することもできた。

 こちらの要望をなにも伝えていない段階での完成ではあるが、まぁ、その辺も大丈夫だろう。


「……じゃあ、さっそく見せてほしい」

「はいはい、それでは移動しましょう。こっちです」

「転移魔法とかは使わないのか?」

「いや、すぐ近くですしね」


 歩き出すアリスに続いて俺も部屋の外へ出る。なぜ俺が最初はともかく、いまはこんなに落ち着いているのかというと……ひとえにアリスへの信頼からだった。

 もしこれが仮に、シロさんが作っただとかエデンさんが作っただとかの状況になれば、俺の心の中は不安でいっぱいだっただろう。だけど、アリスなら……安心だ。


 アリスは悪ふざけも多いし、頭良いのに馬鹿という言葉がしっくりくる奴だが……ことこう言った面に関してのバランスのとり方は実に絶妙である。

 たぶん紹介される家は俺の想像を超えていて、俺は驚くことになるんだろうけど……なんだかんだで最終的には、この家でいいかと納得すると思う。

 俺だって馬鹿ではない。俺が思い描く普通の一軒家とかそんな家が出てくるわけないというのは理解している。


 俺の恋人や知り合いは王だとか神だとかそんな方が多いので、遊びに来る機会もあるであろう俺の家にはそれなりの格は必要になってくるだろう。

 おそらくアリスは、そのギリギリのラインの家を用意しているんだと思う。俺が妥協できる範囲で、クロたちが訪れたとしても問題ないような豪華さも兼ね備えた。そんな感じの家を用意してくれてるんだと思う。


「……なんでしょう。カイトさんから熱い信頼の眼差しを感じます。ちょっと恥ずかしいですし、おふざけ案を採用しなくてよかったとか思ってる私がいます」

「アリスのことは信頼してるよ。まぁ、ふざけた発言はよくしてるけど……心から頼りにしてる」

「……そ、そういうのはやめましょう。アリスちゃん、そういうストレートな誉め言葉に弱いんです。言っときますけど、私はカイトさんがキメ顔で好意をぶつけてきたら、速攻でチョロイン化しますからね!」

「……そういうのって、自分から力強く宣言するものだったっけ?」


 照れているのか、少し早足になるアリスを微笑ましく感じながら、廊下を進んでいると……ふと違和感に気付いた。


「なぁ、アリス?」

「なんすか?」

「……俺の家に向かってるんだよね?」

「えぇ、そうですけど?」

「……『玄関は逆方向』だけど?」

「ですね」

「うん?」


 俺の家に向かうと言いつつも玄関とは逆方向に向かって進んでいくアリスに対し、俺は首をかしげながら続く。

 そして湧き上がる疑問を口にしようとして、視線の先に妙なものが見えてきたことに気付いた。


「……え? あれ?」


 俺たちが進む先には渡り廊下らしきものがあった。だけど、おかしい。俺はリリアさんの屋敷には一年住んでいたわけだが、そんなもの一度も見たことはない。

 どういうことか分からず戸惑う俺を尻目に、アリスは渡り廊下の前で立ち止まって振り返る。


「着きましたよ! この渡り廊下の先……正確には真ん中から先が、カイトさんの家です」

「……う、うん?」

「おや? 戸惑ってますね。まぁ、たしかに中からだと分かりにくいかもですね……じゃ、外から見てみましょう!」


 言うが早いかアリスは近くの窓を開け、パチンと指を弾いて俺の体を浮遊させる。そしてそのまま窓から外に出て、全体が見える位置まで上昇した。

 そうして見えてきた光景は……うん。なんというか、やはり予想外のものだった。


「……なぁ、アリス。リリアさんの屋敷が倍ぐらいの大きさ……というか、同じような屋敷が横に増えてる気がするんだけど……」

「正しくは、向かって右がリリアさんの屋敷、渡り廊下で繋がっている左がカイトさんの家です」

「……うん。まぁ、突っ込みどころは多々あるけど……こんなことしていいの?」

「大丈夫です。リリアさんの許可は取ってますから」

「え? そうなの!?」


 リリアさんの家に渡り廊下を追加したりと、勝手に改造していることに関して……リリアさんの胃を心配しながら聞いてみると、アリスはどこからともなく書類のようなものを取り出した。


「要約すると屋敷を自由に改造して構わないって感じの内容の書類です。ここにリリアさんの直筆のサインと、印も貰ってます」

「……そ、そうなんだ……まぁ、リリアさんが許可してるなら……いいかな?」


 無論驚きや戸惑いはある。しかし、うん……よくよく考えてみると、これはこれで悪くないかとも思う。

 リリアさんの屋敷には、リリアさんを始め仲のいい人も多いし、離れて暮らすことに寂しさを感じていないと言えば嘘になるので、本当に気軽に尋ねられるどころか自由に行き来できる環境はちょっと嬉しいとすら感じる。

 ふたつの屋敷は門こそ別々だが、庭も繋がっているみたいなので、ベルも動き回れる範囲が増えているので喜びそうだ。


「……うん。初めは驚いたけど、悪くないな」

「でしょ?」

「ちなみに、中とかも一緒なの?」

「……いえ、結構違いますよ。まぁ、その辺はこれから案内して説明しますよ」


 外観は本当にリリアさんの屋敷をコピーペーストでもしたみたいにそっくりだけど、中は違うらしい。


「あっ、ちなみに見た目は同じですけど素材は違います。まぁ、別に耐久力がクロさんパンチだったりするわけじゃないですけどね。普通にこの世界で手に入る素材を使ってます」

「さも当たり前のように、クロを耐久力の基準として扱うなよ……いや、まぁ、それはさておき、ちょっと意外といえば意外だな」


 てっきりいつかの天空城みたいに、世の常識から外れた強度の家を作ったのかと思ったら、ごく普通の素材を使って建てたらしい。

 まぁ、その素材も多分すごい奴ではあるんだろうけど……少し意外ではある。


「いや、だって必要ねぇですし、別に隕石が降ろうが、雷が落ちようが私が防ぎますし……そもそも過去も未来も見通せる世界創造の神が見てるんですから、問題なんて起きるわけがないです」

「な、なるほど……」

「さて、それでは気を取り直して、家の中に行きましょう!」

「あ、あぁ……そういえば、全然話は変わるけど、アリスが空飛んでるのって結構レアな光景だな」

「そういえばそうっすね。まぁ、別に飛んで移動することに利点なんてねぇっすしね。短距離の移動なら普通に走った方が早いですし、長距離なら転移しますし」

「言われてみれば、たしかに……広範囲を見渡したいときとかは?」

「う~ん。私いちおう、『世界中の建造物は一通り記憶してます』し、構造的死角とかも一通り把握してるので、遠視の魔法でこと足りますね。まぁ、いざ必要な時は軽くジャンプすればいいだけですね」

「……お前って、本当にわけわからないぐらい頭良いよな。あんなに馬鹿っぽいのに……」

「なんでしょう、褒められているのか貶されているのか、判断に迷うところですね。何度も言いますけど、アリスちゃんは愛情で育つんです! もっと甘やかしてくれていいんすよ!」

「甘やかしたら甘やかしたで照れるくせに……いつもありがとう、アリス。愛してる」

「……ぁぅ」


 そんな他愛のない雑談をしながら、真新しい家の中へと向かっていった。





???「さすがアリスちゃん! リリアさんやルナマリアさん、ジークさんやイルネスとの快人の絡みが減ってしまうんじゃないかと危惧していた読者も安心の建設! そこに痺れるし、憧れます! ……え? シリアス先輩? あ、いや、ちょっと……活動報告で『言ってはいけない順位』を口にしたせいで、連行されていきました。ご冥福をお祈りします」

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[一言] アリスたんきゃわわ( ⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷ωᵒ̴̶̷⸝⸝⸝)
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