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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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特許権保持者らしい

 宝樹祭まであと2日。現地へは前日に向かう予定という事で、明日エルフの森に向けて出発する事になる。
 エルフの森は非常に緑豊かな場所らしく、シンフォニア王都の外へ出るのは初めてという事もあって、とても楽しみだ。
 そして以前より考えていた自衛の手段、クロに新たな魔法を教えてもらう事もでき、いざという時自分の身位は守れるように……なったかな?

「うん。形にはなって来たと思うけど……カイトくん、この魔法あんまり使っちゃ駄目だよ。体への負担も大きいからね。まぁ、今、実感してると思うけど……」
「……全身痛い」
「ほら、回復魔法かけてあげるからじっとしてて」

 新たな魔法を覚え、その結果として……全身筋肉痛の様な痛みと共に倒れ伏していた俺に、クロは苦笑しながら回復魔法をかけてくれる。
 じんわりと暖かい光に包まれ、痺れる様に痛かった全身の痛みが和らいでいく。

 クロに教えてもらった感応魔法を生かした戦闘用の魔法は、反動があるタイプであり、更に魔力量の少ない俺では長く使用する事も出来ず、本当に緊急用の魔法と言った感じだ。
 ただ俺が考えた要望をしっかり押さえてくれた魔法であり、中々面白い性能に仕上がっている……まぁ、使わないに越した事は無いのだけど……

「そういえば、クロに聞きたい事があったんだ」
「うん?」
「この世界には、俺の世界にあった電卓って機械に似た魔法具ってあるのかな?」
「デンタク? それって、どんなキカイセイヒンなの?」

 どうやら電卓は他の勇者役から伝わっていないらしく、俺はクロに電卓について説明をしていく。
 なんでマヨネーズとかも伝わってるのに、電卓が伝わっていないのかとも一瞬考えたが、よくよく考えてみれば俺もリリアさんが計算に苦労している様子を見るまでは全く思い浮かばなかった。
 と言うのも、この世界に来てすぐ機械製品を預けた事で、心のどこかに機械製品は駄目だと言う先入観が出来てしまっていて、それを魔法具で再現出来るかもと言うのも、魔法具が個人作成できると言うのを知らなければ考えなかったからだ。

 過去の勇者役に関しても、恐らくは同様に先入観があった事。そして何より今の俺とは違い勇者役は割と忙しと聞く。
 なにせ一年で世界中を回りスピーチ等を行う訳で、身近なものである食べ物や衣類、移動中の娯楽である本等に比べ、経理関係に関わる事はほぼ無いんじゃないかと思う。

 そんな事を考えながら、クロに電卓の事を伝え、似た物があるのか? 無ければ再現することが可能かと尋ねてみる。

「……それ、カイトくんが考えたの?」
「え? いや、俺の居た世界では一般的な道具だっただけだよ」
「……」

 俺の話を聞き終えたクロは、最初かなり驚いた様な表情を浮かべ、その後顎に手を当ててしばらく沈黙する。

「……再現は、出来るね。けど、考えなかった。確かに計算式を術式として記録しておけば、一瞬で計算が出来るけど……」
「けど?」
「全然そんな事考えなかったよ。魔法と数学は別物で、計算を魔法でサポートしようなんて発想自体が無かった。言われてみれば、何で今まで思いつかなかったんだろうって思っちゃうけどね」

 言われてみれば成程と納得出来る。
 俺達の世界にあった機械……科学とは、ある意味最初の方から数学と結び付いた存在だ。
 だけどこの世界にある魔法は科学とは別の存在であり、数学と結び付けるという考え自体が無かったみたいだ。
 そう言う意味で言えば、最初に電卓やパソコンを作った人間と言うのは、本当に天才だったんだろうなぁ……

 クロは再びしばらく沈黙した後、紙とペンを取り出し何かを書き込んでいく。
 そしてそれが終わると黒いコートがカーテンの様に広がり、そこに向かって声をかける。

「ゼクス、居る?」
「どうかしましたかな? おや? これは、ミヤマ殿。ご無沙汰しております」
「お久しぶりです。ゼクスさん」

 そこから現れたのは、どこかの民族が儀式で使いそうな仮面を付けたゼクスさんで、以前会っているとは言え、骨だけの手が現れた時はついつい驚いてしまった。
 確か以前会った時に聞いた話では、他のリッチと区別が付きやすいようにと普段は儀式用仮面を被っているらしい。
 確かに分かりやすいが、これじゃまるでカーニバルにでも参加するみたいな格好に見えてしまう。まぁ、その辺は個人の趣味なので口を挟まないようにしておこう。

 現れたゼクスさんと軽く挨拶を交わすと、クロが先程何かを書き込んでいた紙をゼクスさんに渡す。

「これ、カイトくんが考えた魔法具を、ボクが術式作ってみたんだけど……」
「……これはっ……なんと、このような発想が!?」

 いや、別に俺が考えた訳ではなく、元の世界にあった道具の詳細を伝えただけなんだけど……

「どう思う?」
「……革命が起きますな」
「量産できそう?」
「ええ、さすがクロム様。この術式であれば、かなり安価で作る事が出来ますな」

 えっと、なんだろう? 何か話がどんどん大きくなってきてる気がする。
 俺としては、クロに電卓っぽい魔法具を作ってもらって、それをリリアさんにプレゼント出来たら良いなぁ~程度に考えてたんだけど、なんかクロとゼクスさんの様子が尋常ではない。

「カイトくん。これさ、ボクの所の商会で作って売っても良いかな?」
「え? あ、うん。それは全然構わないけど……と言うか別に俺が発明した訳でもないし」

 クロがどこか真剣な表情で尋ねてきたので、俺はそれは勿論構わないと返答する。
 するとクロは一度頷いた後で、ゼクスさんの方を向く。

「ありがとう。じゃあ、ゼクス」
「ええ、ではミヤマ殿の権利ですが……この魔法具による『純利益の半分』でいかがですかな?」
「……へ?」

 あれ? なんか奇妙な話の流れになって来た。純利益の半分? それ、お金が貰えるって事?

「基本は月単位でのお支払いになるでしょう」
「え、いや、ちょっと、待ってください! それ別に俺が発明したものじゃなくて、元の世界にあった物を……」
「ううん。この世界ではカイトくんが発明者だよ」
「へ?」

 ど、どうする? 要するにそれって俺が特許権を持っているって事になるんだよね……コレ本当に大金が転がり込んでくる流れなんじゃないだろうか?
 いや、別に俺もお金がもらえて嫌という訳ではないのだが……俺がこの世界に居るのは1年間だけだし、今でさえリリアさんに貰ったお金を使いきるかどうかも怪しいのに……リリアさん? あ、そうだ。

「例えばそれって、リリアさん……アルベルト公爵家に権利を譲るとかでもいいのかな?」
「ええ、それは勿論構いませんぞ。その権利をどうするかはミヤマ殿の自由。ただ、そうする場合でしたら、一度アルベルト公爵殿も交えて話をする方が宜しいでしょうな」
「そうだね。あ、そうだ。ゼクス今度リリアちゃんのとこ行くんでしょ? その時にカイトくんも交えて話しあったら?」
「ふむ、そうですな……ではそれまでに、この魔法具を制作して実際に見て頂く事にしましょう」
「あ、それは助かります」

 どうやら電卓(仮)を作ってもらえる事は確定みたいで、これでリリアさんの仕事も楽になるだろう。
 俺は正直この世界を楽しめる程度のお金があれば良いし、権利とかそういうのはリリアさんが構わないなら全部譲ってしまっても大丈夫だ。

 拝啓、母さん、父さん――クロに電卓を作ってもらう話をしたら、なんか権利とか色々話が大きくなった。要するに、このままこの世界に電卓が出来たら、俺が――特許権保持者らしい。

















 静かな執務室の中で響いていたペンの音が止まり、リリアは書類に向けていた顔を上げる。

「……なんでしょう? 今、物凄い悪寒が……」

 微かに顔を青くして呟いたリリア……その予感が現実のものとなるのは、ほんの数日後……















経済面でも攻め始めた主人公……公爵様の明日はどっちだ!

次回から宝樹祭編です。
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