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おかえり快人⑤



 挨拶に訪れたフェイトさんの神殿。鳩尾に多大なダメージは負ったものの、その後は十町にフェイトさんと挨拶を交わして……現在は奇妙な体制に落ち着いていた。


「はぁぁぁ……久しぶりのカイちゃん成分だよ~癒されるぅ」

「……」


 果たして俺の体からどういった成分が分泌されているのかは分からないが、フェイトさんはご機嫌である。ソフトクッションの上に座っている俺の膝の上に座り、俺の両手をガッチリと抱きしめた……言ってみれば、俺がフェイトさんを後ろから抱きしめてる状態で……。


「もぅ、カイちゃんがいない間は寂しくて寂しくて、私は『仕事も手に付かない状態』だったんだよ!」

「……ビックリするぐらい平常運転じゃないですか……」

「……たしかに」


 まぁ、予想されていた結果ではあるが、フェイトさんはこの二年ほぼ仕事はしていないらしい。俺と恋人になってからは時々……本当に時々だけど、ちゃんと仕事をすることもあったので、クロノアさんの苦労がうかがえる。

 ともあれ、いまはそれは置いておいて、せっかくのフェイトさんとの時間を楽しむことにしよう。


 フェイトさんの愛情表現は、実は非常に分かりやすくてシンプルだ。いまのこの姿勢もそうだが、とにかく甘えてくる。

 自分の感情に素直とでもいうのだろうか、とにかく全身全霊でこちらに甘えてくる姿は非常に可愛らしく、同時にどこか微笑ましくもある。


「……うん? どうしたのカイちゃん? あっ、さては久々に会えた愛しい恋人の姿に感動して、言葉も出ないんでしょ?」

「あはは、まぁ、確かにそうかもしれませんね」

「ふふ、じゃあもう少しいちゃいちゃしてよう! カイちゃんにも、私の成分を補充してもらわないといけないしね!」

「……ところでフェイトさん、耳が真っ赤ですけど?」

「……余計なとこに気付かなくていいの……」


 まぁ、もっとも自分からグイグイスキンシップを取っていながら、実は照れまくっているなんて面もある。まず間違いなく、先ほどからこちらを向かないのは顔が真っ赤になっているからだろう。

 そういうところも含めて、本当に可愛らしい方だと思う。


「……ねぇ、カイちゃん」

「はい?」

「……大好き」

「……俺もです」


 そんなフェイトさんと過ごす時間は、本当に暖かく幸せで、ついつい長居をしてしまったのも必然だろう。









 恋人への挨拶が終わったあとは、本当に各世界を転々としながら知り合いに挨拶をしていった。皆心から俺の帰還を喜んでくれて、本当に嬉しかった。

 割合的に、俺の知り合いには魔族の人が多いので、二年を言う月日でもあまり変化は感じられなかった。とはいえ、もちろんなにも変わってはいないわけではない。


 たとえば、オーキッドはこの二年で四人目の妻を迎えたらしいし、アマリエさんは正式に王太子……次期国王として、発表され忙しくしていたりした。

 光永君も貴族籍を貰って、いろいろ苦戦しながらも順調に領地を運営しているみたいで、なんだかんだで充実しているように見えた。

 カトレア王女との仲も良好ではあるが、まだ結婚式はあげていないらしい。そのあとでアリスから聞いた話ではあるが、俺が戻ってくるのを待ってくれていたみたいだ。


 他に変わっていたところといえば、ハイドラ国王であるラグナさんだろう。いや、会議を抜け出して仕事をサボったりしているのは相変わらずらしいが……そのサボる目的が、釣り等ではなく自己鍛錬に変化していた。

 ちなみにその原因はリリアさんである。リリアさんはこの二年で本当に強くなったみたいで、かつては敵わないと言っていたラグナさんにも一年前に初勝利を収めたらしい。


 しかし、国王である前に武人であるラグナさんは、負けてはい終わりではなく、訛っていた体を鍛えなおし、一月後にリベンジを果たしたらしい。

 その後もリリアさんとラグナさんは、月に一度模擬戦を行っているらしく、勝率は五分五分だとか……。長らく人界最強と呼ばれて、人族にライバルがいなかったラグナさんは、リリアさんが強くなったことで非常に生き生きとしており、日々精力的に自己鍛錬を行っている。

 もっとも精力的なのは鍛錬にだけであって、国王としての仕事は……以前にもましてサボっているとかなんとか……。


 とまぁ、そんな風に変化している方もいれば依然と変わらない様子の方もいた。その知り合いたちひとりひとりに挨拶を終え、すっかり日が暮れてから俺は最後の目的地である神域へとたどり着いた。

 シロさんがわざわざ最後に尋ねてきてくれというぐらいだから、なにかしら用事があるんだろうけど……なんだろうか?


「……来ましたか」

「はい、遅くなってすみませんシロさん」

「いえ、改めて、おかえりなさい、快人さん。こうしてまたこの世界に帰ってきてくれたこと、私も本当に嬉しく思います」


 そう言って少しだけ口角を上げるシロさんの表情は、以前よりも少しだけ感情が豊かになっているように感じた。

 そして俺は、シロさんとも再会を喜び合い……。


「では、『リベンジマッチ』を始めましょう」

「……はい?」


 ……あれ? ちょっと待って、なに言ってんのこの神様? リベンジマッチ? えっと……ちょっとなに言ってるか分からないんですが……。





シリアス先輩「ガタッ!?」

???「いや、無駄ですから……座っててください」

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