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『黒き門番』



 凜々先輩の運転する車が高速道路に入り、ひとまず黒いゾンビの大群を振り切れたことに安堵する。しかし、同時に不安も感じる。

 あの黒いゾンビは足も動きも遅く、車の……ましてや高速道路を走っている俺たちに追いつけるようなスピードはない。

 だが、シロさんが用意したこの試練……このまま車で楽々クリアとはいかないはずだ。


 俺と同様のことを考えているのか、有紗たちも注意深く周囲を警戒しており、すぐに動けるように武器も手に持っている。


「ッ!? 追って来たみたいだよ」


 後部座席から風さんの声が聞こえ、俺たちが一斉に車の後部を見ると……バイクに乗り、こちらに向けて迫ってくる黒いゾンビの集団が見えた。


「ちょっ、こらこら……なにゾンビが文明の利器使ってんすか。いや、厳密にはゾンビがどうかはわかりませんが……ゾンビ映画のなんたるかが、分かってねぇ敵ですね」


 まぁ、たしかにゾンビ映画でゾンビがバイクに乗って追いかけてきたら、なんかアレだが……この仮想世界の仮称黒いゾンビは、文明の利器も使いこなすらしい。

 印象はともかくとして、7人が乗るワンボックスカーで大型バイクから逃げきるのはかなり厳しいものがある。


「迎撃します。凜々、サンルーフを開けてください」

「わかりました」


 追ってくる黒いゾンビたちを迎撃するために、リディ先輩がアーチェリー用の弓と矢をもって立ち上がる。


「リディ先輩、ライフルもありますよ?」

「私は貴女ほど器用ではありませんので、使い慣れているこちらの方がいいんですよ」


 有紗が差し出した大型のライフルを断り、リディ先輩は座席の背もたれの上に立つようにしてサンルーフから体を乗り出し、流れるような動きで矢を放つ。

 不安定な状態だというのに、次々と放たれた矢はバイクに乗る黒いゾンビたちの頭を正確に捉え、次々と撃退していった。


「さすがの腕前っすね。コレなら問題なく片付き……って、なんか様子がおかしいですよ」

「事故? じゃないね」


 リディ先輩に矢の追加を渡しながら有紗がなにかに気付き、絵里奈も怪訝そうな表情を浮かべる。後方を見る俺たちの視線の先では、黒いゾンビの乗ったバイクが奇妙な動きをしていた。

 三台のバイクが示し合わせるようにぶつかり、乗っていた黒いゾンビ三体が混ざり合い……黒い虎のような姿に変わって道路を走りだした。


「合体とかするんすか!? ほんと、なんでもありですね!」

「……う~ん、要するにこの仮想世界はひとつのゲームみたいなものなのかもしれないね。あの黒いゾンビたち一体一体は大した容量リソースは持ってないから弱いけど、合体することで大きな容量リソースに変化出来るって感じかな~?」


 どこかのんびりとした口調で告げながら、フェイさんはノートパソコンをもの凄い速度で操作する。のんびりとした口調とは違い、スコールのような勢いですさまじい速度でタイピングを行っていく。


「凜々たん先輩、最大速度でちょっとだけアイツら引き離して……あと、右車線には寄らないでね」

「風さん? なにをしてるんですか?」

「う~ん? まぁ、ちょっと一度一掃しとこうかなぁってね……よし、『発射』」


 俺の疑問に相変わらず緩い口調で答えた風さん……って、発射? なにを?

 そんな疑問が頭に浮かぶのと同時になにか……そう、高速でなにから飛んでくるような、そんな音が聞こえてきた。


「……あの、風さん? なにを発射したんですか?」

「うん? 『タクティカル・トマホーク』」

「トマホーク!?」


 えっと、アレだよね? この場合のトマホークってのは、斧とかじゃ無くて……ミサイルの!?

 その直後に後方から凄まじい轟音が聞こえ、車が激しく揺れる。その揺れが収まってから恐る恐る後方を見てみると……黒いゾンビの集団はおろか、高速道路の一部も吹き飛んでいた。


「なっ……なな……なんでミサイル!? というか、ミサイルも大学にあったんですか!?」

「用意がいいよね~専用の高性能ノートパソコンまで用意してくれてたしね。どうせこの世界は試練が終わったら消えるんだし、物理的被害を気にする必要はないしね~」


 あまりの出来事に呆然としてしまう。というか、シロさんは本当にどういうつもりなんだ? ミサイルまで用意してるとか……俺に戦争でもさせたいのか?










 ミサイルによる迎撃には驚いたが、その後は非常に順調だった。高速道路の一部を破壊したことで、明らかに追ってくる黒いゾンビは減り、散発的にやってくる黒いゾンビたちも有紗たちが迎撃しながら進む。

 このペースでいけば、あと10分程度で郊外に出れる。そうなれば目的の霊園はすぐだ。

 だけど、なんだろうこのモヤモヤした感じ……あまりにも順調すぎる気がする。


「……なんか、攻め手が緩いような気がしねぇっすか?」

「うん、ボクもそう思った」

「……罠? ……それとも……なにかの……準備?」


 どうやら皆も同じことを考えていたみたいで……さらに最悪なことに、その予感は的中した。


「ッ!? 皆さん、右を見てください!!」


 凜々先輩の叫び声を聞いて、俺たちは一斉に右の窓から見える景色に目を向け……言葉を失った。


 距離で言えばかなり遠方……都市の中心近くにある、一際大きなツインビル。いま、それをのみ込むように黒い巨大な球体が存在しており、その球体はどんどん大きくなっているように見えた。

 それを見て俺たちの脳裏に過ったのは、先ほどの光景……三体の黒いゾンビが合体し、巨大な虎に成長……いや、進化した光景。


「これ、ヤバいよね……」

「えぇ、風さん。最悪です……この仮想世界に存在する人間の数が、元になった地球と同じだとするなら……日本だけで考えても、約1億2000万……もし仮に、世界中からゾンビが集結してるなら70億以上……それが全部集まったら、どれだけ桁違いの容量リソースに――ッ!?」


 焦るような表情で有紗が告げると、直後に巨大なツインビルを飲み込んだ黒い球体が脈動し形を変え始める。

 集まった容量リソースを凝縮して密度を上げているからか、その色は黒いゾンビと比べてもさらに禍々しく濃い。

黒い空の下でも存在感を放つ漆黒の翼、相変わらず目や鼻は無いながら凄まじい威圧感を放つ巨体。


「快人さん、すみません。認識を間違えてました……快人さんはどうやら、ゾンビ映画の主人公じゃなくて……『怪獣映画』の主人公だったみたいっすね」


 そう、それは……優に数百メートルはあろうかという巨大な――漆黒のドラゴンだった。





シリアス先輩「ふむ、第二ステージのボス登場って感じかな? ぶっちゃけ、快人側の面々はどれぐらい強いの?」

???「味方の6人は、記憶や感情がある分黒いゾンビに比べて個々が大きな容量を持ってますけど……70億ドラゴンには歯が立たないでしょうね。わた……アリスちゃん本体があの場に居れば1秒かからずドラゴンステーキですし、それこそマグナウェルさんなら文字通り踏みつぶせますが……強敵です」

シリアス先輩「数百メートルって滅茶苦茶でかいはずなのに……竜王のせいでなんか小さく思えてくる不思議」

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