嫌ではないって感じられてきたよ
岡山がなかなかに大変で更新が遅くなりました。現在はひと段落付きました。
関係が恋人に変化したこともあって、デート開始直後以上に互いを意識してしまい、緊張しまくってしまっている俺とフェイトさん。
そして混乱のままに、せっかく恋人になったのだから恋人らしい行動をと提案してきたフェイトさんに対し、同じように混乱していた俺は「腕を組んで歩く」という行為を提案した。
あくまでこの提案自体は無難で、現在テンパりまくりの俺達でも十分に実行可能ではあった。だが、しかし、俺はいくつも重要な要素を見落としていた。
「じゃ、じゃあ、カイちゃん。う、腕を組むね」
「あ、は、はい!」
俺のひとつ目の誤算は、フェイトさんの『身長差』を考えていなかったこと。フェイトさんはかなり小柄であり俺との身長差もかなりある。
そうなるともちろん、互いに同じような高さで腕を組むのが難しくなり、必然的にフェイトさんは腕を組むというよりは、俺の腕を抱きかかえるような姿勢になってしまう。
そして、そうなるとふたつ目の誤算……フェイトさんの持つ、その身長からは考えられないほど『豊満な胸』が猛威を振るうことになり、同時に俺は理解する。三つ目の……『最大の誤算』を……。
「ッ!?」
フェイトさんが顔を赤くしながら俺の右手を抱えるように抱いた瞬間……まるで落雷を受けたかのような衝撃が俺の理性を襲ってきた。
……え? あれ? 俺の腕……『沈んだ』?
まるで巨大なマシュマロにのみ込まれたような感覚と共に、俺の腕には言いようのない柔らかさと温かさが伝わってくる。
俺はどちらかといえばスレンダーな体系が好みだと思っていたが、そんな嗜好すら塗り替えられそうな暴力的とすら言える感触。
いままで、俺の恋人の中で平均より大きな胸を持つのはリリアさんだけであり、リリアさんは極度な恥ずかしがり屋なのでここまで密着することはなかった。
だからこの感触はほとんど初体験……こ、これが、巨乳……。
いや、待て、それより重要な問題がある。なんで、こんなにもハッキリと柔らかさを感じることができるのだろうか?
たしかにフェイトさんは神であり、その肉体は最上のものと言っていいのかもしれない。だがしかし『布二枚越し』で、こんなにもハッキリと柔らかさや体温を感じるものだろうか?
……ま、まさか……フェイトさん……『ブラジャー付けてない』……のか?
それを意識した瞬間、俺の顔に一気に熱が集まってくる。その上、まるで全神経が右腕に集中したんじゃないかと思うほど鮮明に、フェイトさんの胸の感触が伝わってくる。
あわわわわ、こ、これ、ヤバい。ちょっと、本気でヤバイ。というか、フェイトさんって巨乳かつノーブラでも胸が垂れたりしてなくて、服の上からでもわかるほど形も整っている。
そのうえ弾力と柔らかさを兼ね備えた感触……美巨乳ってやつだろうか? まさに神の肉体。す、すご……いや、待て、落ち着け。胸のことばかり考え過ぎだ。逸らせ! 思考を逸らせ、俺……。
「フェ、フェイトさん」
「う、うん?」
「そ、その、普段、肌着とかは……」
ちょっと待て! なに聞いてるんだ俺!? 混乱するにもほどがあるだろうが! す、すぐに訂正を……。
「肌着? 下着ってこと? 私は普段は基本的に、シャローヴァナル様から下賜された『神衣一枚』しか着ないよ? ま、まぁ、今日はせっかくので、で、デートだから……『服は』変えてきたけど……」
答えるんかい!? というかちょっと待って……その言い方だと、『下も履いてない』って聞こえるんだけど!?
衝撃的な発言に絶句していると、フェイトさんは頬を真っ赤にしながら小さな声で続けた。
「ほら、私の能力的に見えちゃうことはないし……ま、まぁ、その、カ、カイちゃんが、見たいっていうなら……駄目とかは、言わないけど……」
「ッ!?!?」
俺の理性を根こそぎ抉り取るかのような強烈な一撃。相手は選んでいるとはいえ、恐ろしいほどのガードの緩さ……落ち着け、落ち着け、落ち着け……俺はやればできる子だ。踏みとどまれ理性……。
「で、デートを再開しましょうか!」
「うん……なんだかさ、こういうの初めてだけど……なんか、いいね。こうやって、腕を組んでると……カイちゃんと一緒にいるんだって実感できて、その、恥ずかしいけど……幸せだよ」
「……そ、その、俺もえっと……し、幸せです」
「そ、そそ、そっか……一緒、だね。嬉しい」
ちょっと、今日のフェイトさん可愛すぎるない? 滅茶苦茶ドキドキする!?
そのまま俺たちは、ゆっくりと海辺を歩きはじめる。互いに口数は多くない。ただ、互いに強く相手を意識していることは伝わってくる。
腕を組んだ状態でつないだ手からは、フェイトさんの緊張と好意が感じられ、それが不思議と心地よい。
「……ねぇ、カイちゃん?」
「はい?」
「ちょっとだけ、ワガママ……言ってもいい?」
「へ? え、ええ、もちろん」
こちらを向かずに呟くフェイトさんの言葉に、俺も前を向いたままで答える。
「カイちゃんと一緒に見たい景色があるんだ。だから、そこに行ってもいい?」
「はい」
「ありがとう、じゃあ転移するね」
拝啓、母さん、父さん――本当に今日のフェイトさんは、あまりにも可愛らしくて、理性的な面で辛いものがある。ただ、なんだろう? 不思議なもので、少しだけ緊張が解けてくると、この上手くいかない感じも――嫌ではないって感じられてきたよ。




