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フェイトさん元気だよね?



 火の二月20日目。六王祭でもらった世界樹の苗に水をやりながら、俺は少し頭を悩ませていた。というのも、ここ最近……フェイトさんが遊びに来ていない。

 フェイトさんは、クロのように毎日とまではいかないまでも3日に一度ぐらいのペースで、1時間程度は遊び……もとい仕事から脱走してくるのだが、もう20日近くは遊びに来ていない。


 どうしたんだろうか? フェイトさんに限って『仕事が忙しくて来れない』なんてことはあり得ない。かといって、最高神であるフェイトさんが病気にかかって寝込んでいるわけもない。

 もしかして、なにか俺がフェイトさんを怒らせるようなことをしてしまったのだろうか? いや、でも、誕生日パーティーではいつも通りだったし……。


「……なぁ、アリス」

「なんすか?」

「お前は、フェイトさんのことなんか知らない? 最近姿を見ないんだけど……」


 とりあえずフェイトさんと仲の良いアリスに聞いてみると、アリスはなぜか微妙な表情を浮かべた。


「……えっと、フェイトさんは……最近その、し、仕事をしてて、時間が無い、みたいですよ」

「……つくならもう少しましな嘘をつけ」

「いや、正直私も自分で言ってて、あまりに現実味がないのでビックリしてますが、あながち間違いでもないというか……」

「え? じゃあ、フェイトさんは本当に仕事してるの? 自主的に?」

「え、えぇ、まぁ……」


 そんな馬鹿な、あのフェイトさんが自ら進んで仕事をしている? ……どう考えても異常事態である。


「も、もしかして、フェイトさん……どこか調子が悪いんじゃ?」

「……ま、まぁ、そうですね。病気といえば病気かもしれませんね」

「病気!? いやいや、そんな状態で仕事してちゃ駄目だろ……というか、最高神のフェイトさんが病気にかかったの!?」

「……まぁ、なんというか、その病気の詳細に関しては私の口からは……あぁ、でも、感染したりする病気ではないので……」


 どうやらフェイトさんは本当に調子が悪いみたいだ。いや、でも、失礼な話かもしれないが納得がいく。なるほど、病気にかかってたから最近は遊びに来ずに、普段はしない仕事をしていたのか……。

 よっぽど凶悪な病気なんだろう。でなければ、あのフェイトさんが仕事をするなんて考えられない。


「……心配だし、ちょっとお見舞いに行ってみようかな」

「……」

「アリス?」

「……あぁ、いや、まぁ、確かにショック療法的なのもアリですね。賛成です」

「う、うん?」


 よく分からないが、まぁ、ともかくお見舞いだ。なにかフルーツでも買って持っていこう。


「……というか、私のことはぶん殴ったくせに、いざ自分の番になったらウジウジしてるとか……」

「お~い、アリス?」

「あぁ、いえ! 私もフェイトさんのことが心配なので、一緒に行きますよ! ささ、そうと決まれば善は急げ、出発です!」


 顎に手を当てブツブツとなにかを呟いていたアリスに声をかけると、アリスは明るい笑顔を浮かべてお見舞い行こうと俺の手を引いた。

 なんか、ちょっと気になるというか……悪だくみしてそうな気がするけど……。








 以前にも一度訪れた神界の上層。そこにあるフェイトさんの神殿の中にアリスと一緒に入る。フェイトさんは大丈夫だろうか? 一応仕事をしてるってことは、肉体的には元気ってことかもしれない。まぁ、精神的にはものすごく心配だけど……。


 そんなことを考えつつ、フェイトさんの部屋に繋がる大きな扉をノックする。少しして扉が少し開き、不機嫌そうなフェイトさんが顔を出した。


「もう、なにさ……私はいま仕事で忙しいんだから、邪魔しな……い……で……え?」

「あ、えっと、こんにちは」

「……カイちゃん?」

「はい、えっと、お見舞いに……」


 不機嫌オーラ全開のフェイトさんに恐る恐る声をかけると、フェイトさんは俺の顔を見て硬直し、少しして大量の汗を流し始めた。


「……え? な、なんでここに……そ、その、まだ心の準備が……えっと、とりあえずいったん帰って……」

「フェイトさん!」

「え? シャルたん? ど、どうしたの?」

「カイトさんのことも気になるでしょうが、先に私の用事を済ませちゃいますね」

「……用事?」


 そう告げたアリスは、ニコニコと明るい笑顔のままフェイトさんの手を掴んで扉の前に引っ張り出した。


「以前フェイトさんに頂いた借りを、きっちりお返ししますね!」

「……借り? ちょっと、シャルたん? いったいなにを――」

「アリスちゃんキック!!」

「――ふぎゃっ!?」


 いったいなにが起きたのか、俺の動体視力ではわからなかった。アリスの足が一瞬光ったかと思うと、巨大な扉が粉々になり、遥か遠方の壁にフェイトさんが突き刺さっていた。

 セリフから察するに……蹴ったんだろう。というか、なにしてんのコイツ!?


「……ちょ、ちょっとシャルたん! いきなりなにすんのさ! 痛いじゃん!!


 普通、痛いでは済まない一撃だった気がするけど……まぁ、そこは超スペックのフェイトさん、ちょっと顔が赤くなっている程度のダメージだった。


「いや、ほら、以前ぶん殴られましたし……そのお返しですね!」

「私はパンチだったのにキック!? しかも、躊躇なく顔面蹴ったよね!?」

「というわけで、フェイトさん! ウジウジ悩むなんて貴女らしくないですよ! ドカンと行動してみてください! では、私はこれで!」

「ちょっとぉぉぉ!? いろいろ言いたいことはあるけど……私にも蹴らせろぉぉぉぉ!!」


 やりたいことをやって、言いたいことだけ言ったアリスは姿を消し、神殿内にはフェイトさんの絶叫が響き渡った。


 拝啓、母さん、父さん――えっと、俺はフェイトさんが病気だって聞いたからお見舞いに来たわけなんだけど……なんか、いろいろおかしいよね? いや、というか、よく分からないけど――フェイトさん元気だよね?





???「ちなみに、フェイトさんの病名は恋の病、ですね!」

シリアス先輩「……ツライ」

???「あぁ、そういえば、明日から四巻のキャララフ公開を始めますので、楽しみにしておいてください」

シリアス先輩「……ついに来たか! 私のキャラデザ!」

???「……いや、無いですけど? というか、カバー裏に挿絵なんて入りませんよ」

シリアス先輩「ちくしょうめぇぇぇ!?」

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