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やっぱり気絶した



 誕生日プレゼント、なんとも心躍る響きである。子供のころは、自分の誕生日には父さんが帰ってくるのをいつも以上に待ち遠しく感じていたなぁ。

 けど、可笑しいな……そんな誕生日プレゼントがこれから貰えるはずなのに、なんだろうこの言いようのない不安は……。


 いや、もちろん嬉しさも大きい。しかし、それと同じぐらい出てくるものが恐ろしい。

 特にシロさんと、さっきのカラオケバトルには居なかったのに、いつの間にか現れていたエデンさん。あのふたりがまともな、世間一般の常識的なプレゼントを用意するはずがない。ど、どれほど常識外れのものが飛び出してくるのやら……。


 そんなことを考えていると、クロがマイクをアリスに渡し、なぜかアリスが進行を引き継いだ。


『……失礼。クロさんはちょっと忙しいみたいなので、私が進行をしていきますね! それでは、主役のカイトさんは壇上にどうぞ!』


 ここで受け取るんじゃだめなのかな? また、壇上……この注目を集める恥ずかしさは、何度経験しても慣れる気がしない。

 まぁ、だからと言ってゴネるほど嫌というわけでもないので、素直に従って壇上にのぼった。


『さて、集まった数が数ですので、皆さんが好き勝手にプレゼントを渡すと、カイトさんがプレゼントに押しつぶされる……なんて事態もあり得ます。というわけで、順番を決めてひとりずつ渡していく形式になります。そして、順番に関しては、私が独断と偏見で決めます』


 えっと、つまり、いまからアリスが呼んだ順に壇上に上がってきて、ひとりずつ手渡しで渡してくれるって感じかな?

 たしかに、その方が俺もひとりひとりにお礼を言いやすいし、助かるが……なんでアリスが順番を決めるんだろうか?


『なぜ私が順番を決めるのか、くじとかじゃないのか、独断と偏見ってなんだ……まぁ、皆さんがそういうこと考えているのは分かります。なぜ私が決めるのか? そりゃ、さっきから『因果律操作しようとしてクロさんに阻止されてる連中が居る』からに決まってるでしょうが!』

「……え?」

『というか、最終的には全員渡すんですから、順番はいいでしょうが! って、こら、そこの腐れ天使! 多重次元から同時干渉しようとするんじゃねぇっすよ!? 会場が消し飛ぶでしょうが! 叩き出しますよ!』


 なんか俺の知らないところで、わけのわからない超バトルが展開されてた!? エデンさんか……エデンさんだろうな。

 でも、あれ? 連中ってことは、他にもいる? ……シロさんか。なるほど、だからクロはアリスに進行役を変わったのか。


 いや、まぁ、アリスの言う通り全員のを受け取るんだから、順番は関係ないような気もするけど……。


『あっ、ちなみに私のプレゼントは大トリに渡すのがいいタイミングなので、一番最後……あ、いや、そのひとつ前にしましょう』


 ……う~ん、この……好きな順番に渡そうと因果律に干渉してるシロさんとエデンさんも困ったものだが、しれっと己を望む順番に割り当ててるアリスもアリスである。

 というか、なんで最後ではなく、そのひとつ前にしたんだ? まぁ、深く考えないでおこう。


『では最初は……まぁ、この人がいいでしょうね。はい、リリアさん、壇上にどうぞ』

「私ですか!? え? こ、この、顔ぶれの中で……わ、私が最初?」

『ちなみに、さっきからシャローヴァナル様と凶悪天使が狙ってるのは、この順番です』

「なぜそんな情報を付け足したのでしょうか!? 幻王様!!」


 リリアさんは、アレかな? 苦労を引き寄せる星のもとに生まれてきたのかな? 可哀そうすぎる。人界、魔界、神界のトップがそろいぶみと言っていい中で、まさかのトップバッター。

 いや、確かに俺がこの世界に来て一番初めに言葉を交わしたのはリリアさんだし、そういう意味ではふさわしいのかもしれないが……遠目に見てわかるぐらい震えてるんだけど、リリアさん。

 これ、また気絶しちゃうんじゃないか……大丈夫かな?


 青ざめながらキョロキョロと周囲を見渡してから、リリアさんは諦めたように溜息を吐いて俺のもとまでやってくる。

 そして、俺の前で一度目を閉じて深呼吸をしたあと、体の震えを止めて目を開き、優し気な笑顔を浮かべて口を開いた。


「……カイトさん、誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「その、すみません、急な話だったのであまりしっかりとしたものは用意できませんでしたが……こちらを」

「これは……ナイフですか?」

「ええ、手紙の封を切る際に使うペーパーナイフです。カイトさんは手紙を度々書いているみたいなので」

「綺麗なデザインですね。ありがとうございます! 大切にします」


 リリアさんがプレゼントしてくれたのは、美しい薔薇が描かれているペーパーナイフ。小さいながら細部までしっかりと作り込まれているみたいで、結構な高級品に見える。

 準備する時間なんてほとんど無かったはずなのに……なんというか、ただただありがたい。


「……リリアさん、本当にありが……」

「きゅぅ~」

「リリアさんっ!?」

『……えっと、治癒魔法が使える方……いっぱい居ますね。フィーアさん、任せます』


 いっぱいいっぱいだった!? 無理して体の震えは止めてたけど、各界のトップ差し置いての一番手は、相当な緊張だったみたいだ。


 拝啓、母さん、父さん――神々による見えない攻防は置いておいて、トップバッターを務めたリリアさんからのプレゼントは、本当に嬉しかった。でも、リリアさんは――やっぱり気絶した。





シリアス先輩「……なんで、最後じゃなくてひとつ前?」

???「……いや、プレゼント渡したら、もう用は無いとばかりに帰りそうなのが一人いるんで……」

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