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お手柔らかにお願いします



 なにやら妙な展開になりつつも、勝負が中止になることはなく、俺はマイク型魔法具を手に歌い始めた。

 小さな物語……クロの歌であると言うことは知らなかったが、イルネスさんが歌っているのは聞いたことがある。

 歌詞が印象的だったのと、イルネスさんの歌が上手かったおかげもあり、歌詞を間違えることはなく、それなりに上手く歌えた……と思う。


 どうだろう? 自分の耳に聞こえる声と、人に聞こえる声というのは違うものだが、最低限音程は合ってたと思う。

 個人的にはそこそこ上手く歌えたと思うんだけど……み、皆の反応は?


『……ほぇ~カイちゃん結構歌うまいじゃん。それに、なんかちょっとカッコよかった――って、シャルたん? なにしてるの? なんで『赤の旗』上げてるの? シャルたん、審査員じゃないよね』

『え、えぇ、その、カイトさんは結構耳がいいみたいなんで、音程は上手く合わせていましたね。声量なんかは少し物足りない感じですが、素人にしては上出来な部類でしょう』

『う、うん……旗、下ろさないの?』


 戸惑ったようなフェイトさんの声。その反応は当然だろう。俺が歌を歌い終わったかと思うと、なぜか対戦相手であるアリスが赤の旗を上げていた。なにしてるんだ、アイツ?


『ま、まぁ、総合的に言って歌は、一般人よりそこそこ上手いくらいのレベルでした。ですが、その……惚れた弱みって言うんですかね? ちょっとフィルターかかっちゃって……』

『うん? 結局、なにが言いたいの?』

『くっそっカッコよかったんですけど!? 正直、キュンキュンきちゃいました! 無理ですこれ! もう完全にアリスちゃんの乙女ハートが、敗北を受け入れちゃってるんすよ!?』

『……そ、そうなんだ』


 顔を赤くしながら、やけくそ気味に叫ぶアリス。な、なんだろう……いや、俺としてもカッコいいとか言われて、悪い気はしないけど……妙に恥ずかしい。


『……フェイトさん、これもう、私たちの負けでよくないですか?』

『……うん。というか、私は一回戦から負ける気満々だったんだけど……シャルたんに説得されて三回戦分は真面目に歌うっての了承して、四回戦目がシャローヴァナル様で、そこで勝っちゃったから手を抜けなかっただけ。私は最初っから棄権したかった』

『なるほど……では、優勝は! カイトさんです!!』

『わ~カイちゃ~ん! 私だ! 養ってくれ!!』


 まさかの棄権!? 開始前から敗北してても諦めなかったアリスが、まさかの棄権である。いや、というか……審査員! 特にさっきまで旗上げなかった人たち!? 完全に無駄足じゃねぇか!

 お、怒ってなければいいんだけど……。


『ではここで、審査員の方々に、特別試合の感想を聞いていきたいと思います』


 ……なにしてんのあの馬鹿? なに平然とこんなグダグダの試合の感想聞きに行ってるの?


『では、まずシンフォニア国王、ライズさんに感想をお伺いします』

『い、いや、感想もなにも……結局戦ってな……』

『シンフォニア国王は性癖歪んだド変態って世界中に広めますよ?』

『……特別試合にふさわしい戦いだったと思います。特にミヤマくんの歌は、粗削りだがキラリと光るものを感じました』

『はい、ありがとうございました』


 流れるように脅迫しやがったアイツ!? ライズさんの反応は至極真っ当なものだからね!?


『では次に、アルクレシア皇帝、クリスさんです』

『両雄譲らぬ、素晴らしい戦いでしたね。一票を競い合う接戦に、私もつい手に汗を握りました』

『なるほど、ありがとうございます』


 クリスさんはクリスさんで、当たり前のように『試合が真っ当に行われたもの』として回答してるし……なんだこの茶番は?

 アリスはそのまま順々に感想を聞いていき、全員に感想を聞き終えると壇上に戻ってきた。


『それでは、優勝したカイトさんには優勝賞品として……こちら! 『オリハルコンの巨大マイク』を差し上げます!』

「オリハルコンにする意味なくないか!? それに、でかっ!? そして、重っ!?」


 アリスが優勝賞品だといって手渡してきたのは、1メートルはあろうかという巨大なオリハルコン製のマイクだった。

 いや、もうこれ、完全に鈍器だよ……伝説の鈍器だよ。


『さて、それではここでクロさんにマイクを返したいと思います』

『カイトくんはカッコよかったね……さて、皆! 盛り上がってきたところで、そろそろ今日のメインイベントを始めたいと思うよ!』


 メインイベント? なんだろう? いまのカラオケ大会も、メンバーが豪華すぎるせいでとんでもないイベントだったけど……それ以上のなにかがあるの?


『……カイトくんへの誕生日プレゼントを渡そう!!』


 あれ? おかしいな? 誕生日プレゼント……心から嬉しいはずなのに、この言いようのない不安はなんだ?

 なんか、これから、とてつもない品々が俺の前に大量に積み上げられそうな、そんな恐ろしい光景が頭を過ったんだけど……。


 拝啓、母さん、父さん――い、いやいや、準備期間は1日しかなかったわけだし、そ、そんな、手の凝ったものじゃないよね? め、メッセージカードとかじゃないかな? 俺、メッセージカードのひとつでももらえれば、滅茶苦茶喜ぶよ? だから、その――お手柔らかにお願いします。





~おまけ・アリスとフェイトのやりとり~


アリス「いいですか、フェイトさん。クロノアさんとライフさんがあの醜態、それ以外の神族もパッとしません。これで、フェイトさんが棄権なんてことになったら、神界の評判はダダ落ち……シャローヴァナル様の顔にも泥を塗っちゃいますよ」

フェイト「え? マジで? そうなっちゃう?」

アリス「なります。確実です」

フェイト「う、う~ん……じゃあ、これで(一曲だけ本気で歌うから、それでいいでしょ?)」

アリス「(駄目です。五曲ぐらい歌ってください)」

フェイト「(うえぇぇぇ、めんどいよぉ……二曲で)」

アリス「(……妥協して四曲)」


めーおー「って感じのやり取りだったみたいだよ。まぁ、たしかにクロノアちゃんとライフちゃんはアレだったけど……シロの歌は圧倒的だったし、シロの評判に傷がつくことはないんだけどね。シャルティアの作戦勝ちかな?」



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― 新着の感想 ―
[一言] 乙女なアリスたん可愛い(*´꒳`*)
[一言] シロさんの評判には傷はつかないだろうけど、フェイトさんが真面目に歌わないと「神族は歌が下手」って言い伝えは出てくると思う
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