シーソーの件での説教は止めにしよう
綺麗な階段を上り、豪華な装飾が施された両開きの扉の前に立つ。う、う~ん、この先がパーティー会場……なんか緊張してきた。
というか、この扉……訳わからないぐらいでかいんだけど、どうやって開けるんだろう? ノックすれば開くのかな?
少なくとも俺の非力な腕力では空きそうにない巨大な扉に圧倒されていると、アリスがスタスタと俺の前まで歩き、扉を開いた。それはもう軽々と……。
そして開かれた扉の中は……あれ? 暗い?
「ささ、カイトさん、入ってください」
「あ、うん」
これはアレかな? よくある誕生日的な演出……にしても暗すぎじゃなかろうか? 薄暗いというよりは、一寸先も見えない暗闇なんだけど……。
明らかに自然の現象ではなく、魔法的ななにかで暗くしている部屋の中に入ると、アリスが素早く扉を閉めた。
「せ~のっ!」
「「「「「カイトくん(さん)、誕生日おめでと~!!」」」」」
クロの声が暗闇に響いたかと思うと、急に部屋が明るくなり、あちこちからクラッカーの音と共に祝福の言葉が響く。
綺麗に飾り付けられた会場、あちこちに並ぶ豪華な料理、集まっている多くの人たち……なんだろう、分かっていても驚いたというか、ちょっといまの心境を言葉で表すのは難しい。
アリスが語った通り、会場に集まっているのは俺と顔見知りの人ばかり……それでも、結構な数だ。
これだけの人たちが俺の誕生日を祝うために急遽集まってくれたと考えると、なんというかこう……もちろん嬉しいのだが、それ以上にくすぐったいような変な気分だ。
「では、カイトさん……壇上へどうぞ」
「……壇上?」
「あそこです」
「……えぇぇ……」
アリスの言葉に従って視線を動かすと、会場の上座……一段高くなっているところが見えた。
え? あそこ、俺の立ち位置? いやいや、そんな馬鹿な……アレ、王様とかが配置される場所だよ? え? 行くの? アソコに?
いやいや、ソレはやっちゃ駄目なやつだろ。だって、人界の王様たちや、六王、果てはシロさんまで壇上じゃなく普通の場所に立ってるのに……俺だけ壇上とか、完全に変な絵面になるじゃん。不敬とかいうレベルじゃねぇぞ……。
「い、いや、できれば俺は普通の場所で……」
「そういうと思っていました! ですが『却下』です!」
「あっ、ちょっ!? アリス!?」
抵抗空しく、アリスは俺を担ぎ一瞬で壇上に移動させたあと、自分だけ壇上から降りた。
なんだろう、この状況……このそうそうたる面々を見下ろしている状況は心臓に……あっ、いや、壇上に立ってもメギドさんとかは見下ろせてないや。
いや、そうじゃなくて! え? これ、このあとどうするの? みんなの視線がこっちに集まってるんだけど、俺、なにすればいいの!?
『皆! 今日は、集まってくれてありがとう! 今日はカイトくんの誕生日だからね。盛大に祝って、騒いで、楽しもう!』
背中に冷たい汗が流れるのを感じていると、マイクのような魔法具を持ったクロが壇上に上がり、明るい笑顔で話し始めた。
な、なんだ、クロがちゃんと進行してくれるのか……よかった。本当によかった。
『それじゃあ、ここで今日の主役、カイトくんから『一言と乾杯の音頭』をもらうね~』
「ッ!?」
最悪の振りきたぁぁぁぁ!? 一言に乾杯の音頭!? いやいやいや、元ボッチの俺には、あまりにもハードルが高すぎる要求だから!?
ここ立ってるだけで、どうしようもなくいたたまれない気持ちになるのに……あっ、もうクロがマイク差し出してきてる。皆も静かに待ってるし……コレ、やらなきゃ駄目なやつだ。
震える手でクロからマイクを受け取り、俺は居並ぶ各界のトップたちを壇上から見る。みんな真剣な表情で俺を……ってこら、ルナさん。なに心底楽しそうな顔してるんだよ、完全に笑いをこらえてるじゃねぇか!? あの人は本当に……。
『……えっと、正直なにを言っていいかよくわかりませんが……急な話だったにもかかわらず集まってくださって、本当にありがとうございます』
もう、なるようになれ……出たとこ勝負だ。あっ、でも、駄目だ。この先がまったく浮かばない。嬉しいですとか、ありがとうございますとか、それしか出てこない。
というか、もう正直、言いたいことは言い切った気も……いや、でも、ここから話の繋げ方がわからない……ど、どど、どうすれば……。
『よくよく考えてみれば、俺がこの世界にきてからまだ半年しかたってないんですよね。短い時間、そう言えるかもしれません』
しかし、天は俺を見捨ててはいなかった。先ほどまでとは違い、俺は戸惑うことなく真っ直ぐと前を見つめ、詰まることなく言葉を紡いでいく。
『ですが、その短い時間の中でこれだけ多くの人に出会えたこと、たくさんの絆を積み重ねられたこと、心から幸せだと感じています』
なぜ、ほんの少し前までテンパっていた俺が、こうして冷静に挨拶をできているのかというと……アリスが、会場の一番後ろで、他の人に見えないように『巨大なカンペ』を広げてくれていたからだった。
あ、アリスゥゥゥ!? ナイスフォローだ! 俺は、お前はやるときはやってくれるやつだと信じてた!!
アリスはそのままある程度話を膨らます内容のカンペを出したあと、パチンとウインクをした。締めは俺自身の言葉でってことかな……うん、ここまで助けてもらったらあとはなんとか……。
『……できればこれから先もこうして、皆さんと笑い合い、楽しく、そして幸せに過ごしていきたいと思います。簡単ですが、皆さんへの心からの感謝を伝えることで、挨拶とさせていただきます』
アリスの超絶ファインプレーのおかげで、俺はなんとか挨拶を終えることができた。
すると、突如俺の片手にグラスが出現する……どう考えてもパーフェクトメイドの御業である。
『……改めて、今日は本当にありがとうございます! 乾杯!』
出現したグラスを掲げて告げると、皆もいつのまにか持っていたグラスを掲げ『乾杯』と告げる。そうして、俺の誕生日パーティーが始まった。
拝啓、母さん、父さん――まぁ、いろいろと言いたいこともあるけど、今回はアリスが本当にいい仕事をしてくれた。素晴らしいファインプレーである。うん――シーソーの件での説教は止めにしよう。
~アリスちゃんのここが素敵~
①超絶美少女
②明るく一緒に居て楽しい
③家事も鍛冶もできる万能
④ちょっと照れ屋なところも可愛い
⑤ブレないカイト最優先
⑥時々混ぜるおちゃめな悪戯
⑦でも、なんだかんだで一番助けてくれるのはアリスちゃん
⑧どこにどんなタイミングでも出せるという、作者にとっても超便利なキャラ
⑨イチャラブはもちろんシリアスだってできちゃうアリスちゃんは、実際凄い
⑩アリスちゃんマジ可愛いし、良妻すぎる、これはもうアリスちゃんをメインヒロインにするべき
シリアス先輩「おい???、自演やめろ……自画自賛ってレベルじゃねぇぞ……」
???「……100まであったんですけど……」
シリアス先輩「……私のバージョンは?」
???「シリアス先輩のここが素敵! ①実は全然シリアスじゃないアホの子! 以上!!」
シリアス先輩「……いや、私めっちゃシリアスだし、シリアス過ぎてやばいぐらいシリアスだし……シリアスったら、シリアスだから!!」




