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番外編・Happy Birthday~ラズリア~

3月30日or3月31日はラズリアの誕生日なので、今回は誕生日番外編です。



 木の月30日目。現在俺は転移魔法の魔法具を使い、クロの家……の裏手にある大きな畑へやってきていた。野菜はもちろん果物に米まであるここは、ラズさんが趣味で作っている畑である。

 あまりにも広大で、正直趣味というレベルは完全に超越している気がするが……ラズさんはあくまで好きでやっているだけだと言っていた。


 そして俺が畑にたどり着くと、遠方から小さな羽を動かしてラズさんが飛んでくる。


「カイトクンさ~ん! こんにちはですよ!」

「こんにちは、ラズさん」

「はいです! カイトクンさんに会えて嬉しいですよ~。今日はどうしたですか? お野菜さん食べにきたですか? それとも、お米さんが足りなくなりましたか?」


 ラズさんは農業の達人であり、ラズさんの畑でとれる野菜はもの凄く美味しい。なので、俺も普段からよく野菜や米を分けてもらっている。

一応お金を払って買うとも言ったのだが、「趣味で作っているものなのでお金はいらない」とラズさんは断固としてお金を受け取ってくれなかったので、お菓子などと物々交換する形でもらっている。

 ただ、今回は物々交換が目的ではない。


「いえ、今回は……えっと、ラズさんの誕生日だと聞いていたので……お祝いにきました」

「あや? カイトクンさん、ラズの誕生日、覚えててくれたですか?」

「ええ、もちろん。ラズさん、誕生日おめでとうございます」

「わーい! ありがとうですよ! とっても嬉しいです!」


 俺の祝いの言葉を聞き、ラズさんは心底嬉しそうに両手を上げ、忙しく羽を動かしてくるくると俺の周りを飛ぶ。

 なんというか、年上だけど本当に可愛い人である。


「一応、クロの家である誕生日パーティーにも参加します。先に挨拶をと思いまして」

「嬉しいですよ! カイトクンさんが来てくれて、ラズはとっても、と~っても嬉しいです!」

「あはは、喜んでもらえたならなによりです」

「はいです! ラズもこれで『10652歳』になりました! そろそろ、大人の女性の仲間入りです!」


 大人のハードルが高すぎやしませんか? ……うん、ビックリするぐらい年上なのでどう言えばいいかわからないが、嬉しそうなラズさんに水を差すような発言をする必要もないだろう。


「え、えっと、ラズさんはもう十分大人だと思いますよ」

「そうですか? ラズ、大人の女性ですか?」

「え、えぇ……大人の素敵な女性です」

「そうですか! カイトクンさんが言うならきっとそうなのです! ラズは、大人の女性です! えへへ、カイトクンさん、困ったことがあったら大人なラズにドーンっと頼ってくれていいですよ!」


 ……なんだろうこの可愛い生き物は……小さな胸を精一杯張る姿なんて、愛くるしさが半端ではない。


「あっ、そうだ。先に渡しときますね……これは、俺からの誕生日プレゼントです」

「ありがとうございます! あ、開けてみてもいいですか?」

「ええ、もちろん」

「わーい!」


 誕生日パーティーはクロの家族が集合するし、なんだかんだで騒がしくなりそうなので、先にラズさんへプレゼントを渡しておくことにした。

 ラズさんのサイズに合わせて用意したプレゼントを、ラズさんは満面の笑顔で空ける。


「お、おぉ……マフラーさんです!」


 いろいろ悩みはしたが、ラズさんへにプレゼントは赤い毛糸のマフラーにした。というのも、以前ラズさんは寒いのが苦手だと言っていたから……まぁ、時期的にこれから温かくなるので、どうかとも思ったが、喜んでくれているみたいなのでよかった。

 ラズさんはウキウキとした様子でマフラーを巻き、花が咲くような愛らしい笑顔で口を開く。


「と~っても温かいです! カイトクンさん、ありがとうですよ!」

「えっと、気に入ってもらえたならよかったです。大丈夫だとは思うんですが、うまく編めてないところがあったら申し訳ない」

「はえ? こ、このマフラーさん、カイトクンさんが編んだんですか!?」

「え、ええ……」


 ラズさんにプレゼントしたマフラーは、イルネスさんに教わりながら編んだものだ。俺は完全に素人だったが、イルネスさんの指導が上手だったおかげで、見た目だけならなかなかのものだとは思う。

 俺の言葉を聞いたラズさんは、驚いた表情に変わり、首に巻いたマフラーを何度か触る。


「……す、すごいです! マフラーさんを編めるなんて、か、カイトクンさん……て、天才なのです!?」


 驚くほど低い天才のハードル……。


「……先生がよかっただけですよ」

「そんなことないです! カイトクンさんは凄いです! とっても、と~っても凄いのです!」

「あはは、ありがとうございます」

「ラズの方こそ、ありがとうですよ! カイトクンさんのプレゼント、すっごく嬉しいです!」


 裏表のない純粋な笑顔で称賛とお礼を告げてるラズさんの言葉を聞き、じんわりと胸が温かくなるのを感じた。


「改めて、誕生日おめでとうございます」

「はい! ありがとうございます! カイトクンさん……だ~い好きです!」


 全身で喜びを表現するように飛びついてくるラズさんの可愛らしさに癒されつつ、心から幸せを実感した。


 そして、この日以降ラズさんは……季節に関係なく、いつも赤いマフラーを身に着けるようになった。





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[一言] なんか、偶然かな?それともこの感想で尊いとか言ってたからかな? PRのタイトル?が正に吾輩の気持ちそのものな気が… 推しが尊い…尊…尊すぎて何も… って…推しって訳じゃないけど、尊すぎる…
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