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考えすぎなのだろうか?

【お知らせ】 

『勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした』書籍版第三巻が3月22日に発売されます。

それを記念して、二巻の時と同じように簡単なキャンペーンを行っています。詳しくは活動報告をご覧ください。



 パーティーが始まって1時間ほど経ち、ある程度の知り合いには挨拶を終えた。クロたちの周囲も、最初に比べれば落ち着いてきているので、そろそろ挨拶に行こうとそう考えたタイミングで、会場内に威厳ある声が響いた。


「皆、そのまま聞け。この声は、『六王祭の会場全体』に届くよう調節している。これより、時空神である我が代理として、シャローヴァナル様のお言葉を伝える」


 声の聞こえたほうに視線を動かしてみると、シロさんが座っている椅子の斜め前にクロノアさんが立っているのが見えた。

 かなり離れた壇上に居るはずなのに、目の前で喋っているかのようなクロノアさんの声。それに俺が動かしかけていた足を止めると、ほぼ同時にパーティー会場からも音が消えた。


 六王祭の会場全体ということは、このパーティーに参加していない人たちにもこの声は聞こえているということだろう。

 それにしても、シロさんはいったいなにを言うつもりなんだろうか? クロたちも首をかしげているので、事前に予定されていたものでは無いと思うが……。


「では、シャローヴァナル様のお言葉をそのまま伝える。『神界、魔界、人界、三界が協力し、作り上げたといってもいい六王祭……なかなか素晴らしい催しでした。私も満足しています。よって、有意義な時間を過ごせた礼として、この会場に居る者全員に……簡単ですが褒美を与えたいと思います』……以上だ。褒美の内容については、これから伝える」


 えっと、つまり六王祭の参加者及び運営スタッフ全員に対し、シロさんが褒美を与えるってことだろうか? なんか凄そうだけど、いったいなにを与えるつもりなんだろうか?

 そんなことを考えていると、クロノアさんが続けて言葉を発した。


「褒美の内容だが……この会場に居る全員に、新年までの限定かつ略式ではあるが『生命神の祝福』を与える」


 クロノアさんが告げた内容に、一気に会場がざわつき始めた。それもそうだろう。上級神の祝福すら一国の王レベルでなければ受けられないのに、略式とはいえ最高神の祝福が与えられる。それはもう、凄まじいサプライズだ。


「……静粛に。さて、生命神の祝福の効果に関してだが……生命神の祝福は、略式であれば『その対象の肉体を、その対象が思い描く全盛期にする』というものだ。なに、難しく考える必要はない。単純に『任意の年齢まで若返れる』と、そう認識すればいい」


 好きな年齢までの若返り……流石最高神の祝福というべきか、略式でもすごい効果である。


「若いころの肉体が良いと思えば、若い体に……いまの体が良いと思えば、見た目は変わらぬまま『あらゆる病魔や疲労が取り除かれ、最高のパフォーマンスを発揮できる状態になる』……とまぁ、そういうものだ。若返った体は、祝福の効果が切れてもそのままだ。なお、略式故、身体を変化出来るのは最初の一度のみ……故に、いまから数分時間を与えるので、それぞれ己の最盛期を頭に思い浮かべよ。あぁ、それと祝福の効果である半年の間は、病魔には侵されず、大抵の疲労は眠れば全快する」


 これは、特に寿命のある種族にとっては嬉しいだろうし、まさに神の御業といえる行為だ。けど、なんだろう? この妙な違和感は……。


「……では、5分後に祝福を行う。無論、拒否も可能だ。祝福を望まぬ場合は、己には必要ないと頭に思い浮かべよ」


 う~ん……やっぱり変だ。内容ではなく、褒美を与えるという行為そのものが……。

 シロさんはほとんどのものに対し、極端な平等主義者である。そのシロさんが『六王祭に参加した者だけに』なにかを与えるというのに、妙な違和感を感じた。


 拝啓、母さん、父さん――壇上にいるシロさんの表情からは、特になにも読み取ることはできなかった。だけど、なんだろうこの感じは? この祝福になにか『別の意図』があると、そう思うのは――考えすぎなのだろうか?








 前代未聞の温情とでもいうべき褒美の内容を聞き、六王祭の会場に居る者のほとんどは頭に最高の自分を思い描くために目を閉じて思考に没頭していた。

 だが、無論……快人と同じように、この褒美の裏を感じている者もいた。


 ……アリスは、首をかしげる快人の後方から、静かに壇上のシャローヴァナルへと視線を向ける。


(……どうやら、私が思ってる以上に本気みたいですね。この会場には、私を含め六王配下の幹部がほとんど揃ってます。となると、この褒美は言ってみれば……『最高のパフォーマンスを発揮できるようにしてやる。死力を振り絞ってかかってこい』ってことですかね)


 そう、いずれシャローヴァナルと敵対することを予想している者たちにとって、この褒美はまさにラスボスであるシャローヴァナルから贈られた塩。

 ボス戦前に全回復させてやろうと、そんな意味も含まれている。


(けど、これでハッキリしましたね。シャローヴァナル様は……たぶん『迷っている』んでしょうね。己が決めかねているからこそ、その最後の選択を第三者に委ねようとしている。少しだけ、勝算が出てきましたね)


 シャローヴァナルの迷い。己の心をそう簡単に割り切れないという感情は、アリス自身覚えのあるもの。だからこそ、その迷いを見抜くことができた。

 シャローヴァナルは必ず、アリスたちにも勝ち筋のある勝負を挑んでくる。それは光明ともいえるが……。


(でも裏を返せば、第三者に最後の選択を委ねるからこそ……己に出来る下準備はなりふり構わず、全力で行ってくるでしょうね。これは本当に、いままでで一番キツイ戦いになりそうな気がしますね)





~生命神の祝福~

仮祝福:一回だけ若返れる。病気無効、疲労回復速度上昇

本祝福:何度でも若返れる。蘇生魔法習得可能、病気無効、疲労回復速度極大(15分寝れば全回復、快人が疲れてても一日寝れば元気になるのはこれのおかげ)


シリアス先輩「はぁ、最近シリアス多くて忙しいなぁ~かぁ~辛いわ~出番多すぎて、忙しくてつらいわぁ~!」

???「くっそ暇そうじゃねぇっすか……ココア飲んでいますし……てか、なぜに甘い飲み物?」

シリアス先輩「ここには、ココアとベビーカステラしか置いてないから仕方なく飲んでんだよ!!」

???「なるほど……じゃ、私は持参したブラックコーヒーでも飲みますかね」

シリアス先輩「……ちょうだい?」

???「だが断る」

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