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一周年記念番外編「ひたすら我が子を愛でたい」


 音すらない世界の理から外れた異空間。そこには異世界では地球神と呼ばれている神、エデンの姿があった。

 芸術とすら言える美しく整った容姿に、荘厳な雰囲気を放つ二十枚の翼。まさにひとつの世界の頂点に立つ神らしい威厳を持った姿で、エデンは真剣な表情を浮かべて考えごとをしていた。


(……我が子を愛でたい。ひたすら愛でたい。細胞のひとつまで解けるほど甘やかしたい)


 なお、考えている内容に関しては威厳のいの字すらない。


(しかし、上手くいきません。愛しい我が子も母の愛を待っているはずなのに、なんと口惜しい。それもこれも、あの神の半身のせいです。私と我が子の逢瀬を邪魔するばかり……今年に入って既に『100』を越えています。いい加減『温厚な私』としても、我慢の限界です。しかし、なまじ強いだけに始末に悪い。あの神の半身に手間取っては、我が子を愛でる時間が減ってしまうではありませんか……なにか、上手い手はないものでしょうか。あの邪魔者を排除して、心行くまで我が子に愛を注ぐための方法が……)


 エデンは己の仇敵とも言えるクロムエイナのことを考え、悔しそうに唇を噛む。もっとも、エデンの思考ではクロムエイナは邪魔もの以外の何者でもないが、愛しい我が子……快人にとっては救世主である。


(そもそも、あの神の半身はどうやって私と我が子の逢瀬を把握しているのでしょうか? ああ、そういうことですか、我が子が身に付けているネックレス。あそこに仕掛けをしているのですね。ならば、話は簡単です。あのネックレスの探知を無効化してしまえばいい。そう、そうです! これで、邪魔されることなく我が子を愛でることができます! そうときまればさっそく……)


 よい案を思いついたと言いたげに手を叩き、エデンは異空間から出て異世界へ向かう。快人をその狂気の愛で包み込むために……。







 再び音すらない異空間で、エデンは顎に手を当てて考えごとをしていた。


(『嫌な予感がしたから来てみた』とは……あの神の半身は、野獣かなにかなのでしょうか? もう少し論理的根拠のある行動を取ってほしいものです。つくづく理不尽な……と、ともかく、またしても私の邪魔を……本当に許し難いです)


 ネックレスの探知魔法を無効化させる手段で快人を愛でようとしたエデンは、野生の勘で察知したクロムエイナにいつも通り襲撃され、目的を達成できないままで帰ってきていた。

 唇を強く噛みながら、忌々しげな表情を浮かべるエデンは、必死に頭を動かして次なる作戦を考える。


(……そうです。そもそも、先にあの神の半身を排除してから、我が子の元へ行けばいいのではありませんか。それなら、邪魔が入る心配をすることなく、我が子を愛でることができる。我が子を後回しにするようなのは気が引けますが、これも全て愛しい我がことの親子の時間を作るため……手早く奇襲をかけましょう)


 次なる作戦、クロムエイナが邪魔しに来るのなら、先に邪魔出来ないようにクロムエイナを倒しておく。という作戦を思いついたエデンは、再び異空間から姿を消して異世界に向かった。

 例によって、例の如く快人を愛でるために……。






 三度、異空間。またしても失敗したエデンは、悔しそうな表情を浮かべながら考えごとをしていた。


(迂闊でした……そもそも、負けてしまえば我が子の元へ行けないではありませんか……あの憎たらしい、神の半身め、また強くなってましたね。いいかげん力で排除する方向は止めた方が無難かもしれません。最近は吹っ切れたのか、分体を消滅させるレベルで攻撃してくるようになりましたし……我が子の好みに合う分体を再創造して異世界に送るのも手間が――ッ!?)


 っと、そこまで考えたところでエデンに電流のような閃きがおとずれた。


(そうか、その手があるじゃないですか……あの世界は、あちらの土俵。わざわざそこで対応しなくてもいいじゃありませんか。そう、そうです。我が子をこちらに呼べばいいのです。我が子にとって私の世界は心の故郷のようなもの……里帰りと言うのは、なんら不自然な行為ではありません。いくらあの神の半身が強いとは言え、異世界の壁はやすやすと越えられないでしょう。仮に越えてきたとしても、こちらの世界なら『本体』を動かせます。本体で対応できれば、神の半身程度恐れるに足りません!)


 快人の元へ行くのではなく、快人をこちらに連れてくるという逆転の発想を得たエデンは、勢いよく翼を広げて準備を始める。


(まずは、神の半身に気付かれないように上手く我が子を里帰りさせる。容易いことです。この世界には我が子の親類も住んでいます。ならば、顔見せなりなんなり理由はいくらでも作れます。あぁ、そう、そうです。その時は最高の景色を用意しましょう。我が子が生まれ育った景色を共に眺めつつ、我が子を愛でる……素晴らしい。幼い頃の我が子の映像を用意するのもいいかもしれません。我が子の成長を、我が子とともに眺める。これぞまさしく母の特権! ふふふ、とても、とても楽しみです)


 目の奥にどす黒いハートを浮かべつつ、狂気に染まった笑みを浮かべながらエデンは行動を開始した。







 そして、例によって例の如く異空間。エデンは『半分ほど欠けた姿』で考えごとをしていた。


(……シャローヴァナルと融合してくるのは反則でしょう。ぐぬぬ、シャローヴァナル。貴女も私の敵でしたか……というか、よくも私の本体をあそこまで痛めつけてくれましたね。お陰で、まだ再生が終わらないではありませんか……)


 エデンの作戦は、序盤は上手くいっていた。快人をこちら側の世界に招待することに成功し、上手く異空間に誘導することもできた。

 そして、さあこれから心行くまで愛でようと思った瞬間……シャローヴァナルと融合して、完全体となったクロムエイナが異世界の壁を越えて襲撃してきた。


 もちろんエデンも本体で応戦したが、完全体となったクロムエイナの強さは異常というレベルであり、全能の力を持つエデンの本体も手酷くやられてしまった。

 再生封じやら能力封印をこれでもかというほどかけられ、現在時間をかけて再生中となってしまっている。


(さすがに今回ばかりは消滅の危機を感じました。今後、この手は禁じ手としましょう。まぁ、それはそれとして、我が子を愛でるために次の方法を考えるとしますか……)


 しかし、まぁ、当然というべきかなんというべきか……エデンは欠片も懲りてはおらず、快人を愛でるための次の作戦を考えはじめていた。

 それを向けられる快人にとってはたまったものではないが、この後もエデンは手を変え品を変え、快人を愛でようとなんども挑戦をしてきた。


 そして、最終的に『我が子と恋仲になれば、堂々と我が子を愛でることができる』という結論に達したエデンにより、さらなる困難とクロムエイナの奮闘があるのだが……それはまた別の話。

 最終的に快人が折れ、条件付きながらエデンを受け入れるようになるのは、まだまだ先の話だった。





~エデンママの他者への評価~


快人:愛しいわが子、甘やかしたい

クロムエイナ:仇敵、強いので性質が悪い、最近どんどん容赦が無くなってきた

シャローヴァナル:裏切られた。気分はカエサル

アリス:我が子には及ばないもののの、名前を覚える程度には評価している

葵、陽菜:快人には及ばないが我が子であることに違いはない。「困ったら母を頼るのですよ」

ノイン:微妙……肉体を重視するべきか、魂を重視するべきか悩み中

その他異世界住人:喋る肉の塊

その他地球出身者;基本的に我が子



???「次回から本編再開! 皆さん、話は覚えてますか? そう、次回からは超絶人気、スペシャル美少女とのデート回ですよ! これは皆さんのテンションも爆上げ間違いなしでしょう!!」

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― 新着の感想 ―
エピられ無かっただけいいだろ
[一言] 「ご注文はお決まりですか?」 カエサル「シーザーサラダとキリマンジャロ」 ブルータス「シーザーサラダとブルーマウンテン」 カエサル「ブルータス、お前モカ!」
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