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カッコよく歳をとりたいものだ



 アグニさんとパンドラさんの一触即発の事態は、オズマさんの登場により収束した。

 パンドラさんはアリスの分体に連行され、アグニさんはオズマさんに説得されて帰っていった。

 アグニさんを帰したオズマさんは、苦笑を浮かべつつ頭をかきながら俺に軽く頭を下げた。


「いや、悪かったね、ミヤマくん。アグニちゃんはいい子なんだけど、ちょっと熱くなりやすいところがあってね……怪我とかはしてないかな?」

「大丈夫です」

「それはよかった。アグニちゃんにはおじさんの方からもしっかり言っておくから、これからも仲良くしてあげてくれると嬉しいよ」

「はい!」


 う~ん、この落ち着いた対応……やっぱり、オズマさんは大人の男性って感じでカッコいい。

 雰囲気としては、本当に親戚のおじさんみたいな気安さと温かさがあるし、同じ男として結構憧れる。俺もこんな風に落ち着いた大人になりたいものだ。


「そういえば、オズマさんはどうしてここに?」

「あぁ、実はミヤマくんに用があって中央塔の一階で待ってたんだけどね……アグニちゃんとパンドラちゃんの魔力を感じたから、もしかしてと思ってね」

「俺に用、ですか?」

「うん、まぁ、正確に言うとミヤマくんにというよりは、幻王様にって感じかな?」

「アリスに?」


 どうやらオズマさんはアリスに用があって訪ねて来たらしい。わざわざ俺を経由して頼むってことは、厄介事なのかな?

 オズマさんと出会ったのは六王祭初日だからまだ日は浅いけど、アドバイスをもらったりフォローしていただいたりとお世話になっているので、できるだけ協力したいとは思う。


「……実はおじさんの知り合いの子が六王祭に参加したいみたいでね。出来れば招待状を用意してあげたいと思ってるんだけど、招待客の途中追加って形になっちゃうから許可をもらいに来たんだよ」

「ふむ……それって、オズマさんの同行者としては参加できないんですか?」

「あ~えっと、そういえば言って無かったね。おじさんは参加者と言うよりは運営側だから、招待状は持ってないんだよ」

「なるほど……アリス」


 申し訳なさそうな表情で告げるオズマさんだが、特に無理難題と言うわけでもなさそうだ。いや、もちろん参加者を管理しているであろうアリスの仕事は増えるかもしれないが、最悪俺の同行者という扱いにしてもいいわけだし、頼んでみることにした。

 俺が声をかけると、アリスはすぐに姿を現し、どこからともなくアイアンランクの招待状を取り出した。


「はいはい、了解ですよ」

「手間をかけて申し訳ない、幻王様。えっと、その子の名前が……」

「『アルクレシア帝国在住のドワーフ族、フラメアさん』ですね。はい、どうぞ、招待状です」

「……ははは、いや、さすが幻王様。助かります」


 アリスはオズマさんが相手の名前を告げるよりも早く招待状を用意している。相変わらず反則じみた情報能力……本当にさすがである。


「お礼ならカイトさんへどうぞ、ぶっちゃけ、カイトさんを通さずきてたら、面倒なんで断ってましたしね」

「ですよね……ミヤマくん、本当に助かったよ。ありがとう」

「い、いえ」

「お礼には足りないかもしれないけど、よかったらコレ、貰ってくれないかな?」

「……これは?」


 優しい表情で俺にお礼の言葉を告げたあと、オズマさんはどこからともなく少し大きめの紙袋を取り出し、俺に差し出してきた。

 俺が首を傾げながら紙袋を受け取ると、オズマさんは咥えていた煙草に火をつけながら告げた。


「……それは、おじさんが好きなコーヒーだよ。お湯を入れるだけで飲めるようになってるよ。少し多めに用意しておいたから、友達と一緒にでも飲むといいよ」

「ありがとうございます! なんか、気を使わせたみたいで、すみません」

「いやいや、おじさんの方こそ急なお願いをしちゃったからね。本当に助かったよ……ミヤマくんさえよければ、今度一緒にお酒でも飲みに行こう。もちろん、おじさんの奢りでね」

「あっ、はい! 是非」


 う~ん、いやみなくお礼の言葉をサラッと口に出来るオズマさんは、真のイケメンだと思う。頼りがいのある大人って感じだからかもしれないが、誘い方もカッコいい。

 たぶんコーヒーを先に出さなかったのは、交換条件みたいになっちゃうのが嫌だったからかな? 


「それじゃあ、ミヤマくん。いろいろ付き合いも広くて大変だろうけど、残る六王祭も楽しんでね」

「はい!」

「うん、それじゃまたね」


 優しい笑顔を浮かべたオズマさんは、軽く俺の頭を撫でてから片手を振って去っていった。去り際もすごく絵になっているというか、風になびくトレンチコートの後姿が超カッコいい。

 ……俺も、そのうちトレンチコートとか着てみようかな?


「……いや、カイトさんにトレンチコートは、あんまり似合わないと思いますよ」

「……自分でもなんとなく、そんな気はしてた」


 拝啓、父さん、母さん――単純な顔の良さとかではなく、言葉や仕草がカッコいいオズマさんは本当に憧れる。正直自分がそうなれる未来はまったくと言っていいほど見えないけど、叶うのならいつの日か、ああいう――カッコよく歳をとりたいものだ。





ベビーカステラ先輩「オズマか……中々ハードボイルドな奴だ。だが、トレンチコートが似合う男№1の座は譲れんな」

シリアス先輩「……いや、お前、カステラじゃん……トレンチコート以前に性別すらないからね!?」

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快斗くん不老なのに?w
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