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滅茶苦茶睨んでくるし……



 偶然会ったラズさんに連れられ、アハトとエヴァに合流するために歩く。


「……それで、こ~んなおっきなお野菜さんが採れたですよ!」

「へぇ、ラズさんは野菜作りの達人なんですね」

「えっへん! ラズのお野菜さんはと~っても美味しいんですよ!」

「それは、俺も是非一度食べてみたいですよ」

「任せてください! 今度カイトクンさんにもあげますよ~両手にい~っぱいあげるです!」


 ラズさんはもの凄く楽しそうにしており、先程からひっきりなしに話しかけてきていた。明るく、いつも笑顔のラズさんとの会話は楽しく、はしゃいでる姿はとても愛らしい。

 お陰で俺もずっと笑顔……なんというか、日頃の疲れなんかが全部癒されていくように感じる。


 そんな感じで楽しく移動していると、それなりに離れた前方に見覚えのある二つの背中が見えた。間違いなくアハトとエヴァだろう……人間の姿になってるみたいだ。まぁ、アハトは大きいし、祭りを回るには人型の方が都合がいいのかもしれない。

 うん、それはいいとして……なんでふたりとも『地面に座ってる』のだろうか?


「アハトく~ん! エヴァさ~ん! お待たせしました! カイトクンさん、連れてきたですよ~」


 俺がふたりの様子に疑問を抱いていると、ラズさんが明るい声でふたりの名前を呼びながら近付く。すると、アハトが振り返り、なにやら焦った表情で口を開いた。


「ら、ラズ姐!? それに、カイト!? だ、だめだ……逃げるんだ!」

「「え?」」

「アハトの言う通り、ここは危険だ! 早く逃げな!!」


 さらにエヴァまでアハトに同意をして、俺たちに逃げるように告げてきた。もちろん俺とラズさんは首を傾げたが……直後に聞こえてきた声で、俺はふたりの言葉の意味を理解した。


「……私の話の途中で後ろを向くとは、いい度胸ですね。アハト、エヴァ」

「「ひぃっ!?」」


 そう、ツヴァイさんである。地面に正座するアハトとエヴァの前、腕を組んで仁王立ちする姿は離れていても威圧感が伝わってきた。


「……はぁ、嘆かわしいことです。私がしばらく目を光らせて居ないと、ずいぶん気が緩むようですね。これは、家族全員を一通り見て回る必要がありそうですね……まぁ、その前に貴方たちの件ですが……」

「……え、エヴァ……な、なんとかしてくれ……」

「無茶言うんじゃないよ!? ツヴァイの姐御に逆らえるわけないでしょうが!」

「私語は慎みなさい。それとも、黙らせてあげましょうか?」

「「も、申し訳ありません!!」」


 怖い……俺が怒られてるわけじゃないのに、ツヴァイさん……マジで怖い。

 アハトたちは大量の冷や汗を流し、俺もその鋭い空気に気圧されている状況。そんな空気を、鈴が鳴るような可愛らしい声が粉砕した。


「あ~! ツヴァイお姉ちゃんです! こんばんは~」

「……おや? ラズリアですか? ええ、こんばんは、久しぶりですね」

「ツヴァイお姉ちゃん、いつ来たですか? 会えて嬉しいですよ~」

「数時間前ですね。クロム様への挨拶を優先しましたので、会いに来るのが遅くなりましたね。貴女も元気そうで安心しました」

「はいですよ! ラズはいつも元気です!」


 さ、さすがラズさん。あの怖いツヴァイさんにまったく物怖じしてない……ラズさんのコミュ力は化け物レベルかもしれない。


「アハトくんたち、なにかしたですか?」

「少し身だしなみを注意していたところです」

「身だしなみですか~ツヴァイお姉ちゃん、ラズはどうですか?」

「……ふむ、服も綺麗にしていますし、髪も整えられています。素晴らしいことです」

「わ~い、ツヴァイお姉ちゃんに褒められました!」

「ただ、元気がいいのは結構ですが、節度は守らなければなりませんよ?」

「了解です!」


 明るく話すラズさんの言葉に、ツヴァイさんも微笑みを浮かべて答える。

 ラズさんと話していると、ツヴァイさんが普通の妹思いの姉に見えるから不思議だ。いや、あくまで俺は怒っているツヴァイさんしか見たことがないだけで、説教とかをしている時以外は、意外と優しいのかも……。


「……さて、アハト、エヴァ、話の続きをしましょうか?」

「「ひゃい!?」」


 ……うん。やっぱ怖い。先程までラズさんに向けていた微笑みはどこへ消えたのか、冷たく鋭い目でアハトとエヴァを睨みつけている。


「いいですか? そもそも、身だしなみとは……」

「……え?」


 そしてアハト達に説教を行おうとしたツヴァイさんは、その途中で俺に気付き、こちらに視線を向けてきた……って、やっぱり怖っ!? な、なんでそんな睨みつけるような目で!?


「……ミヤマ様ではありませんか、偶然ですね」

「あ、は、はい! ここ、こんばんは!?」

「こんばんは、偶然とはいえ、こうして再会できたこと、嬉しく思います」


 ……嬉しいって感じの顔してないんですけど!? 親の仇を見るような目で見られてるんですけど!? も、もしかして……説教の邪魔したから怒ってるのだろうか?

 い、いや、確かに結果として二度ほど水を差すような形になってしまったけど、狙ってやってるわけでは無いんだけど……。


 拝啓、母さん、父さん――アハトたちと合流したかと思ったら、まさかのツヴァイさん再びである。俺、やっぱりこの人に嫌われているんじゃないかと思う。いや、だって――滅茶苦茶睨んでくるし……。





~ツヴァイお姉ちゃん心の声~


(あわわわ、ま、またもカイト様に……い、一日で二度もお会い出来るなんて、なんたる幸運! やはり、あまりの美貌に目が離せません! す、少し汗をかいていらっしゃるようですが、運動でもしたのでしょうか? ただでさえカッコイイカイト様から雄々しいフェロモンが漂っています……こ、これはいけません! 少しでも目を離せばあちこちからハイエナのように人が群がってくる可能性もあります。コンマ1秒すら目を離してはいけません。いざという時は、私がお守りしなくては……)

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