待っているのだと思う
活動報告にて書籍版二巻発売記念キャンペーンを開催しました!
特別設置のモンスターレース場は、アリスを説教したあとで十分に楽しんだ。流石にチャンピオンレースというだけあって、出場する魔物たちはどれも歴戦の勇士といった風格だった。
レース内容自体も白熱したもので、手に汗握る走り合いもあれば激しい直接戦闘も発生した。
俺は今回特にチケットを買って賭けたりはしなかったが、モンスターレースは見た目が派手なので賭けをしていなくても十分面白い。
フィーア先生とノインさんも楽しんでおり、全然懲りずに時折ちゃちゃを入れてくるアリスの相手をしつつ、時間を忘れて楽しめた。
ある程度レースを見終えた時には、空は茜色に染まり始めていた。
「ん~楽しかったね! 熱いレースだったよ!」
「ええ、私はモンスターレースは初めてでしたが、手に汗握る素晴らしい戦いでした」
「ですね……っと、もう夕方ですね。どうします? もうあまりたくさん回る時間はなさそうですけど……」
モンスターレース場から外に出て、フィーア先生とノインさんと話しながら歩く。
一応祭りは夜も10時くらいまで開催しているみたいだが、俺はベルとリンをリリアさんの屋敷に戻さないといけないので、それほど遅くまでは居られない。
「あっ、じゃあさ、最後に行きたいアトラクションがあるんだけど……そこに行ってもいいかな?」
「ええ、俺は大丈夫ですよ。ノインさんも、いいですか?」
「はい」
フィーア先生が行きたいアトラクションがあるということで、俺とノインさんはフィーア先生に連れられて移動を始める。
「……ちなみに、どんなアトラクションですか?」
「昨日アインお姉ちゃんに教えてもらったんだけど……飛竜のゴンドラってのがあるみたいなんだよね」
「飛竜のゴンドラ……ですか?」
「うん。飛竜便みたいな感じだけど、景色が見えやすいように調整されてるらしいね。この広い島をぐるっと一周してくれるらしいよ」
なるほど、それは面白そうだ。空を飛んで景色を眺めるのは楽しいし、時間的にも丁度夕暮れが綺麗だ。
「いいですね。俺も何度か空から景色を見たことがありますが、本当にいいものですしね」
「うんうん、私は自分でも飛べるけど……そういうのとはまた違った良さがあるからね」
「私は、空は飛べませんし、楽しみです。快人さんは何度か空から景色を見たことがあるということですが……飛竜便によく乗るのですか?」
「飛竜便にも三回ぐらい乗りましたね。あとはクロに連れて飛んでもらったのと……『空に放り投げられて魔界の中央から南部まで移動したのが』一回ですね」
「……おかしいよね? どういう状況になったら、そんな奇妙な経験するのか……分からないよ」
「……馬鹿のせいです」
あんな経験は二度とごめんではある。ああ、後は一応シロさんの神域に遊びに行ったのも……空からの景色を見たってことになるのかな?
まぁ、ともかく、わりと空からの景色ってのは経験してる気がする。
しばらく雑談をしながら移動すると、フィーア先生の言う飛竜のゴンドラの場所へ辿り着いた。
なんというか、考えることは皆同じというか……飛竜のゴンドラという看板の前には、非常に長い行列があり、最後尾で『ただいま3時間待ち』と書かれた札を持った人が居た。
あまりの列に唖然としていると、フィーア先生は最後尾の看板を持った係の人に近付いていく。
「……こちら、ブラックランクのミヤマカイトくん!」
「はっ! 畏まりました! 念のために招待状の確認を……はい、結構です。どうぞ、こちらへ」
「……ありがとうございます」
流石元魔王、使えるものはなんでも使う……実に効率的である。そのおかげで俺たちは長い行列に並ぶことは無く、飛竜のゴンドラに乗ることができた。
……ハッキリ言って、とてつもない絶景だった。
この飛竜は相当の高度を飛んでいるのか、マグナウェルさんを見降ろすという空を飛ばなければありえない光景が目の前に広がっていた。
というか、いまさらだけど……マグナウェルさんでか過ぎる。高さだけで5000メートル級ということは、地竜という形状を考えると……全長はその何倍も長い。数万メートルは余裕でありそうだ。
「うわ~夕日が綺麗だね~」
「ええ、とても素晴らしい景色です」
ついついマグナウェルさんの巨大さに目を奪われてしまったが、フィーア先生とノインさんの声を聞いて視線を動かした。
すると、そこには、茜色に染まる都市、夕日を受けて輝く海……言葉を失ってしまうほどの絶景があった。
特にこの四日目は大型の施設も多いため、こうして上空からでも見ごたえがあってとてもいい。う~ん、これはフィーア先生とアインさんに感謝かな? たぶん俺ひとりで回っていたら、このゴンドラには気付かなかっただろうし……。
「……なんというか……分からない、ものですね」
「え? ノインさん?」
そのまま額縁に入れて飾りたいとすら思える景色を見詰めていると、ポツリと呟くノインさんの声が聞こえた。
フィーア先生と共にノインさんの方を振り向くと……ノインさんは穏やかに微笑みながら口を開く。
「……いえ、未来なんて分からないものだと、そんな当たり前のことを考えてました」
「ニホンって国のことを、思い出してたのかな?」
「そんな感じです。私は小さな剣術道場の娘でした。将来は親の決めた……家の利益になる相手と婚儀を結び、家庭を預かって生きていくのだと……なんの疑問の無くそう思ってました」
きっとノインさんが生きていた時代は、いま以上に政略結婚とかが多かったんだろう。少なくともノインさんは、親の決めた相手と結婚して、女は家事と子育てをするのが当り前だと思っていたらしい。
「……それが、なんの因果か異世界に召喚され、魔王を倒す旅をすることになりました。そのころは、魔王を倒してしまえば全部終わって、私は元居た世界に帰るのだと疑っていませんでした」
「……」
「本当に、分からないものです。私は結局元の世界を捨てて、クロム様の手を取ることを選びました。人の身を捨てて、魔族になることを自分の意思で選択しました……そして、いまは、敵だったはずの魔王、それに私と同じ世界、私とは違う時間を生きた快人さんと一緒にこうして美しい景色を眺めています」
「たしかに、ノインの人生は波乱万丈って感じだよね」
「ええ」
フィーア先生の言葉に笑顔で頷いたあと、視線を夕焼けに向けながら言葉を続ける。
「……いまのこの光景は……かつての私が描いていた未来とは、大きく違うものです。そして、私が漠然と思い描いていたより……ずっとずっと『幸せな現在』だと……そんなことを考えていました。ふふふ、フィーアと快人さんには感謝ですね」
「それは、私も同じかな? 未来ってさ、思い通りにはいかないものだよね……けど、それがまたいいんだよね」
「ですね……俺も、いまの自分はちょっと予想できて無かったと思います」
それぞれ一言ずつ告げたあと、俺たちはなにも言わずに夕焼けを見詰める。
言葉にしなくとも、なんとなく……いまの俺たちが考えていることは同じだと思った。これからも先も、こんな分に幸せな経験が出来たらいいな……と、たぶん、そんな感じだ。
拝啓、母さん、父さん――辛いことや苦しいこと、楽しいことや嬉しいこと……振り返ってみて初めて気づくものも確かに存在する。積み重ねた過去には思い出が、語り合う現在には幸せが、そして、未来には希望が――待っているのだと思う。
六王祭四日目はもうちょっとだけ続きます
・ジークとのいちゃいちゃ
・天使ラズたん
・シアぱいせん
【EVOLUTION】
シリアス先輩zero「シリアス!」
ワイバーン先輩「ワイバーン!」
W先輩「「ジョ○レス進化!!」」
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シリアス先輩Y装備「……こ、これがジョ○レス進化……ふむ、Y装備というのがワイバーン部分かな。あれ? でも、外見的には変化無いような……ていうか、この肉の山はなに?」
【シリアス先輩Y(焼肉)装備】
シリアス先輩Y装備「ワイバァァァァァン!? おぃぃぃ、進化どころか加工されてるじゃないか!? え? Y装備ってそういう……いやいや、それでいいのか! ワイバーン!!」
???「七輪持ってきました!」
シリアス先輩Y装備「おい、馬鹿、やめろぉぉぉぉ!?」




