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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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白米なんだから……

【祝】500話!


 特設のモンスターレース場に向かって、のんびりと歩きながら言葉を交わす。

「リンちゃんは、また寝ちゃったのかな?」
「……不貞寝みたいですね」

 フィーア先生とノインさんの言葉通り、ファフニルさんとの会話のあとでリンは再び俺の服に潜り込み、拗ねたような感じで寝てしまった。
 う~ん、事情がイマイチ分からないのでなんとも言えないが、リンは引きずるタイプではないので寝て起きたら元気になっているだろう。

「そういえば、話は変わるけどさ……たしかベルちゃんもモンスターレースのチャンピオンなんだっけ?」
「ええ、と言っても一レースだけですが……」
「ガゥ!」

 えっへんと言いたげに頷くベルが可愛いので、とりあえず頭を撫でておく。

「へぇ~ファフニルが飛び込み参加もOKだって言ってたし、ベルちゃんも出てみたら?」
「ガゥッ!」
「汚れるので、駄目です」
「グルァ!? ク、クゥ~」
「駄目!」
「クゥ……」

 先程あれだけ走ったというのにやる気満々なベルに注意しておく。ベルはとにかく走るのが好きなので、参加したいのだろうとは思う。
 だけど、モンスターレースなんてほぼなんでもありのレースに参加したら、ベルの毛が汚れるのは不可避である。それは駄目だ。そうなったら俺は、祭りを回るのを中断して、ベルの全身を洗い始めてしまう。

「み、ミヤマくん? で、でも、ほら、ベルちゃんは出たがってるよ?」
「駄目なものは駄目です。それに、ベルがモンスターレースに出場したら圧勝してしまうので、他の魔物に悪いですよ。弱い者いじめになってしまいます」
「……そ、そうだね」

 そりゃ俺だってベルの雄姿を見たいとも思うが、結果は分かり切っているのでわざわざ出場する必要はないだろう。
 フィーア先生とノインさんは、何故か俺の言葉を聞いて引きつった笑みを浮かべていたが、俺はそれよりも先にベルの誤解を解くことにする。

「……あと、ベル。言っておくけど、モンスターレースで俺を背中には乗せれないよ?」
「グルァッ!?」

 そう、ベルが好きなのは『俺を背中に乗せて走ること』である。ベルは俺の言葉を聞いてショックを受けたような表情に変わったあと、のんびりとした足取りで俺の後方に移動した。
 どうやらモンスターレースに対する興味を失ったらしい。六王祭に参加して数日の間は散歩してあげれてないからなぁ……あとでもう一度、さっきの牧場へ連れていってあげよう。

「……ミヤマくんは、本当にベルちゃんとリンちゃんを大切にしてるよね。そういえば、収納式のペットハウスも買ったんだっけ?」
「……え? なんで、フィーア先生がそれを知ってるんですか?」

 フィーア先生が言っているのは、アイシスさんと回った日にオークションで落札したペットハウスのことだ。その時はフィーア先生はいなかったはずだけど……アリスかな? アリスだろうな。

「シャルティア様に教えてもらった」
「ですよね」
「あっ! それで思い出した! たしかミヤマくん、ノインの書いた日記を落札したんだっけ?」
「はぁっ!?」

 フィーア先生が告げた言葉に、ノインさんがもの凄い勢いで反応する。そういえば、そうだった。
 あのあとでルーチェさんと会ったことで混乱して、ノインさんに渡そうと思ってた日記を完全に忘れていた。

「ちょっ、ちょっと……快人さん!? ど、どういうことですか? なんで、快人さんが私の日記を……」
「実は偶然落札してしまって、あとでノインさんに渡そうと思ってたんですが……すっかり忘れていました。中は見て無いので、大丈夫ですよ」
「そ、そうですか……よ、よかった」
「……えっと、あっ、コレですね。はい、どう――「ミヤマくん、待った!」――え?」
「フィーア?」

 遅くはなったが予定通り日記をノインさんに返そうとすると、何故か途中でフィーア先生に止められた。

「……ミヤマくん。たしかそれ、白金貨1枚で落札したんだよね?」
「白金貨っ!?」
「え、ええ、そうですけど……」
「ふむふむ……ねぇ、ノイン。まさかとは思うけど、その日記を受け取ってはい終了ってことはないよね? 言ってみればその日記は、ミヤマくんの財産でもあるわけだしね」

 うわ~普段からは想像もできないぐらい悪い顔してる。そういえば、フィーア先生ってノインさん相手にだけは結構からかったりもしてたよなぁ……。
 ノインさんも嫌な予感がしているのか、表情を青くしながらフィーア先生の方を向く。

「……な、なにを言いたいんですか?」
「いやね、ミヤマくんはその日記を読む資格があるんじゃないかぁ~って思ってね。ついでに私もちょっと読んでみたいなぁ~って」
「なっ!? だ、駄目です! というか、後半が本音でしょう!」
「まぁまぁ、いいじゃん。旅の途中の日記なら、別に変なこと書いてるわけじゃないでしょ?」
「そ、それは……たしかにそうですが……」

 そのまましばらくフィーア先生とノインさんは言い合いを続けるが、なんとなくフィーア先生が勝つ気がする。
 果してその予想は現実のものとなり、フィーア先生に言いくるめられたノインさんは、俺とフィーア先生が日記を読むことをしぶしぶ了承した。

 魔王を倒すための旅の途中に書いた日記……俺も興味がないと言えば嘘になる。フィーア先生も自分を倒す旅の途中にノインさんがなにを考えていたのか知りたいんだろう。

「……じゃあ、見るよ」
「うぅ、分かりました……けど、いつの日記でしょう?」
「えっと……地の月って書いてますね」

 現在の光の月が昔は地の月と呼ばれていたらしい。友好条約を結んだノインさんの功績を称えて、光の月に変わったとのことだ。

「あ~じゃあ、ちょうど今頃の日記だね……ってアレ? 異世界の文字だ。私読めないや……ミヤマくん、読んでくれる?」
「わ、分かりました」

 忘れがちになるが、俺は勇者召喚魔法陣の自動付与でこの世界の文字が読めるようになっているが、フィーア先生にとって日本語はまさに異世界の言語なのだろう。
 ということはこの世界の大半の人にとって、この日記はなにを書いているか分からないものということになる。
 ああ、なるほど……だからノインさんも血眼になって過去の日記を探してはいないのか……。

 そんなことを考えつつ、手元にある紙の束に目を落として読み始めた。






 地の月12日目
 い、いいかげん、我慢の限界です。旅の途中で贅沢は言えないと分かっていますが……それでも、我慢ならないことはあります! 米は、米は無いんですか!! もうパン食は嫌です! 白米と味噌汁とたくあんと焼き魚の朝餉が食べたい……。
 というか、焼き魚はともかくとして、味噌もたくあんもありません……こ、ここが地獄でしたか……。


 地の月16日目
 旅の途中で立ち寄った街の食堂。見た目はいまいちでしたが、味は素晴らしかったですね。少し筑前煮に似ているかもしれません。しっかりと味のしみ込んだ野菜は食べていて幸せな気分になりました。
 最近は野宿続きで干し肉が多かったですし、温かい食事というのはそれだけでご馳走ですね。あぁ、これでパンではなく白米だったら、どれだけ幸せだったか……米、見つからないですねぇ。


 地の月20日目
 今日は素晴らしい日です! 私はキリシタンではなく仏教徒ですが、つい神様に感謝してしまいました! なんと、今日立ち寄った村で……大豆を発見したのです!! いえ、私の居た世界のものとは少し大きさが違いましたが、あの味、あの食感は、間違いなく大豆です!!
 あぁ、希望が見えてきました。大豆さえあれば味噌も醤油も作ることができます! 思考錯誤は必要でしょうが……。
 そ、そうです! 大豆があるということは……どこかに『あずき』もあるのではないでしょうか!? ゆ、夢にまで見たあんみつが食べられるかもしれません! コレはやる気も出るというものです!


 地の月24日目
 ……米が見つかりません。ラグナの話ではハイドラ王国の辺境に似たようなものがあるらしいですが……方角が逆です。魔王城とはまるっきり逆なので、採りに行くことが出来ません。
 ぐ、ぐぬぬ……私はいったいいつになったら白米を食することができるんですか!?
 一刻も早く魔王を倒して米を採りに行かなくては……いま、私の心に確かな使命が宿りました! 魔王を……倒します。そして、米を手に入れて見せます!!
 明日から、いままで以上に頑張りましょう!!







「……ねぇ、ノイン? 私怒っていい? なんか、明らかに私を倒すのついで扱いなんだけど……ていうか、食べ物のことしか書いてないじゃん!? なにしてたの君!?」
「……だって、白米食べたかったんですもん」
「こっち向こうか? これ、日記だけ見たら、食べ歩きしながら故郷の食材探してるようにしか見えないからね!!」
「……だって、あんみつ食べたかったんですもん」

 てっきり自分のことが書かれているのかと思っていたフィーアさんは、立ち寄った街の食レポと日本食への渇望が書かれた日記に、呆れながら怒っていた。

 拝啓、母さん、父さん――いや、しかし、コレは初代勇者を信仰するこの世界の人には見せれない日記だ。なにせ、打倒魔王に向けての一番のモチベーションが――白米なんだから……。



シリアス先輩zero「……私も、300は以上は出てるんじゃないかな? これはもう、この作品の主人公は私だと言っても、過言ではないんじゃないかな?」
???「……はいはい、そういう妄想は本編に出てから言いましょうね~」
シリアス先輩zero「出れるもんなら出たいわ!!」
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