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没ネタ②「エイプリルフール番外編その2」

スーパー残業タイムで、今日も更新が難しそうなので……前に掲載した没ネタの続きを更新しておきます。

尻切れトンボです。没にしたのはここまで書いてからなので、この続きは現在ありません。


また気が向いたらそのうち続きを書くかもしれませんが……この話だけで14000文字近くあるので、本当にそのうちです。



 この世界で大人気のカードゲームTBC……アリスの特訓でそれなりに強くなった俺は、六王カードを手に入れるためにクロに勝負を挑んだ。

 挑戦権を獲得するための5連戦……多数の装備魔法カードを使用し、モンスターを爆発的に強化する装備ビートデッキの使い手、ノインさん。

 大量にモンスターを展開し、モンスター同士が協力し合うことで様々な効果を発揮する妖精カード使いのラズさん。

 HPを回復する効果を持つカードが多く、凄まじい耐久力で持久戦となったフィーア先生。

 攻撃を行う際に相手のマジック、トラップの発動を封じる効果を持つ魔導人形使いのツヴァイさん。

 メイドと名の付いたカードを多く投入している以外は、攻守ともに隙のないアインさん。


 その五人との戦いに辛勝し、ついに六王であるクロへの挑戦権を獲得したが……クロは、そこまでの五人が赤子に思えるほど強かった。

 魔法カードが大部分を占めるクロのデッキは、俺の攻め手をことごとく封殺し、俺は負けを覚悟した。

 しかしその勝負はまさかの自爆で俺の勝利となり、俺はついに1枚目の六王カードを手に入れることができた。


 だが、いままで無敗だったクロに勝ってしまったことで、俺は世間の注目をこれでもかというほど集め……なし崩しに他の六王にも挑戦することになった。

 そして、現在……俺はTBCを始めて以来、最大級の危機に瀕していた。


「……やだ……やだぁ……」

「あ、あの、アイシスさん……カードでバトルするだけですからね?」

「……カイトと……戦いたく……ない」

「い、いや、でも……」


 クロの次に挑戦することにしたアイシスさん。彼女は俺が居城に訪れた時は心底幸せな表情を浮かべていたが……現在はいまにも泣きそうな表情になっている。

 どうやらアイシスさんは、どんな形であれ『俺と対立する』というのが嫌らしい。相変わらずの天使である。

 もちろんそんなアイシスさんに無理やり勝負を挑めるわけも無く、考えた結果ある妥協点を提示した。


「……じゃ、じゃあ、アイシスさんのカードと俺のカードを……トレードしませんか?」

「……あっ……うん!」


 どうやらお気に召してくれたらしい。俺としてはしっかりバトルに勝利して正規手順でゲットしたかったが……そんなちっぽけなプライドより、アイシスさんの涙の方が遥かに重い。

 まぁ、次の六王にはしっかりと挑戦をして頑張ろう。








『……うむ、お主の言いたいことは分かるが、無理じゃ……そんな小さなカードを持てるわけがない』

「で、ですよね……」

『というわけで、ここではワシの代わりにファフニルと戦ってもらう。無論、勝利すればワシのカードを進呈しよう』


 あまりにも巨大なマグナウェルさんはTBCをプレイすることはできず、代わりにファフニルさんと戦うことになった。

 ファフニルさんは強力な竜族のカードを使用するパワーデッキの使い手だったが、竜族相手にはとっておきの切り札がある。


「俺のターン! 二体のモンスターを生贄にして、手札から白薔薇の戦姫・リリアを召喚!」

「むっ……」


 【白薔薇の戦姫・リリア】レベル8 ATK2000 DEF1500

 効果:このカードは戦闘では破壊されない。このカードのATK・DEFはフィールド上に存在する『竜族』の数×800アップする。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、続けてもう一度攻撃することができる。フィールド上に『ルナマリア』か『ジークリンデ』のカードがある時、このカードはマジック、トラップ、モンスター効果では破壊されない。フィールド上にレベル10以上のモンスターが召喚された時、このカードはエンドフェイズまで守備表示となり、守備力も0となる。


 リリアさんのカードは戦闘破壊への耐性を持ち、竜族の数だけステータスをアップさせることができる。レベル10以上のモンスターが召喚された時のデメリット効果はあるものの、生贄2枚で召喚できるカードでは破格の強さだ。


「現在フィールドに竜族は3枚……よって、ATKは4400! ドレッドドラゴンに攻撃!」

「くぅっ!?」

「さらにリリアさんの効果発動! 戦闘によってモンスターを破壊した時、追加攻撃!」

「ぐはっ……み、見事です」


 リリアさんのカードを使い、俺は無事ファフニルさんに勝利。マグナウェルさんのカードを手に入れた。これで六王は残り半分……次も頑張ろう。









『私のターンです。私は魔法カード豊穣の実を発動。この効果により、フィールドに存在する守護の木は生贄2体分として利用できます。守護の木と大樹の精霊を生贄に……私自身のカードを召喚します』

「……これが、リリウッドさんのカード……」


 【界王・リリウッド】レベル13 ATK3000 DEF5000

 効果:このカードは通常召喚出来ない。このカードの召喚に成功した時、自動的に守備表示になる。フィールド上に存在する植物族モンスター3体を生贄にした場合に限り特殊召喚できる。相手はこのカードの召喚に対してマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードは『このカード以外の』マジック、トラップ、モンスター効果の対象にならず効果も受けない。このカードのDEFは常にコントローラーのHPの半分上昇する。エンドファイズ時、自分フィールド上の植物族1体につき1000ポイントのHPを回復し、相手HPに500ポイントのダメージを与える。この効果ダメージを無効にすることはできない。このカードがフィールドを離れた時、自分フィールド上に植物族モンスターが存在するなら、そのカードを生贄にしてこのカードをフィールドに戻す。


 リリウッドさんのカードは超強力な火力を持つわけではないが、呆れるほどの耐久力を持っていた。リリウッドさんのデッキは高DEFのモンスターで攻撃を封殺し、HPをどんどん上昇させていくデッキ。

 現在のリリウッドさんのHPは12000……つまり、リリウッドさんのカードのDEFは11000にまで上昇している。


『さらに私は手札より、マジックカード世界樹の種を発動。私のフィールド上にリリウッドのカードがある時、可能な限り世界樹トークンを守備表示で生成します。世界樹トークンのDEFはリリウッドのカードと同じ数値になります』

「DEF11000のモンスターが5体……」

『続けて永続魔法、守護神の領域と守護神の審判の二枚を発動……』


 【守護神の領域】永続魔法

 効果:自分フィールド上に5体の守備表示モンスターが存在する時、このカードのコントローラーはHPにダメージを受けない。このカードはフィールド上に守備表示モンスターが存在する限り、破壊されない。


 【守護神の審判】永続魔法

 効果:自分フィールド上に5体の守備表示モンスターが存在する時、1ターンに1度相手フィールド上のカードを1枚破壊する。このカードはフィールド上に守備表示モンスターが存在する限り、破壊されない。


『私は守護神の審判の効果により、カイトさんのモンスターを破壊。ターンエンド……そしてエンドフェイズ時にリリウッドの効果が発動します。私の場に植物族モンスターは5体。よって私のHPを5000回復し、カイトさんに2500ポイントのダメージを与えます』

「くっ……」


 HPに大きなダメージを与えられ、さらにリリウッドさんのHPは回復。それにともない、守備モンスターのDEFも上昇していく。

 HPに直接ダメージを与えようとしても守護神の領域の効果でリリウッドさんのHPにダメージを与えることができない。

 その上、リリウッドさんのカードは場に植物族モンスターが居る限り、ほとんど無敵といっていい耐性を持っている。


 だが、まったく手がないわけではない。俺のデッキにはこの状況を打破できるコンボが存在する。だけど、いまの手札ではそれを行うことはできない。

 このドローに賭ける!


「俺のターン……ドロー! ……俺は手札から魔法カード希望の欠片を発動! 相手フィールド上にのみモンスターが存在する時、デッキからカードを2枚ドローできる」

『手札の増強……ですが……』


 頼む、来てくれ……よし!


「俺は手札からマジックカード、勇者召喚を発動! デッキからATK1000以下の人間族カードを特殊召喚! 俺が呼び出すのは……俺自身のカード!」

『カイトさんの、カード……いったいどんな効果が……』

「フィールド上に存在するミヤマカイトのカードを手札に戻すことで、手札のモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚! 俺が呼び出すのは……竜王・マグナウェル!」

『なっ……マグナウェルのカード……まさかっ!?』


 俺の意図を察したのか、リリウッドさんが驚愕した表情を浮かべる。そう、マグナウェルさんのカードは、リリウッドさんにとってはある意味天敵といえるカードだ。


 【竜王・マグナウェル】レベル13 ATK3000 DEF4000

 効果:このカードは通常召喚出来ない。フィールド上に存在する竜族モンスター3体を生贄にした場合に限り特殊召喚できる。相手はこのカードの召喚に対してマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードは『このカード以外の』マジック、トラップ、モンスター効果の対象にならず効果も受けない。このカードは相手フィールド上の全てのモンスターに攻撃することができる。このカードが攻撃を行う時、相手フィールド上のモンスターを任意の表示形式に変更する。このカードの攻撃に対して、相手プレイヤーはマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。ただし相手プレイヤーに直接攻撃をした場合、モンスターには攻撃できない。


 マグナウェルさんのカードは制圧力に優れたカードであり、相手の全モンスターに攻撃を与えることができる。しかし、それ以上に強力なのが相手フィールド上のモンスターの表示形式を自由に変更できるという能力だ。

 リリウッドさんの世界樹トークンはATK0……リリウッドさん本体にはモンスター効果は効かないが、トークンは別だ。


『……ですが、私のHPは17000……守護神の領域は効果を失うとはいえ、戦闘してもダメージは12000……』

「さらに俺は、フィールド魔法……崩壊する砦を発動!」


 【崩壊する砦】フィールド魔法

 効果:互いのプレイヤーは戦闘によって自分のモンスターが破壊された時、そのDEF分のダメージを受ける。


『崩壊する砦!? ま、まさか、カイトさん……貴方は、私のデッキを読んでいたのですが……』

「……リリウッドさんが植物族デッキの使い手だというのは予想していました。リリウッドさんに辿り着くまでの5連戦で見た植物族の特徴として……高いDEFとHP回復効果を持つカードが多い。だからキーカードになるんじゃないかと思って、バトル直前にデッキに加えておいたんですよ」

『なるほど……見事です。私の負けです』


 世界樹トークンのDEFはリリウッドさんのカードと同じ数値になる。それは即ちリリウッドさんのHPの半分+5000ポイント……リリウッドさんにはマグナウェルさんのカードによる攻撃を防ぐ術はない。

 しかし、危なかった……俺の残りライフは2000だったので、次のターンには負けていた。ドローに救われた感じだ。

 さて、残る六王はメギドさんとアリス……アリスには一度雑貨屋で勝ってるが、おそらくあのデッキは彼女の本気ではない。俺の指導のために手加減していたのだろう。

 ……どちらも強敵な予感がする。










「ははは! いいぞ、カイト!! 強ぇじゃねぇか!!」

「メギドさんこそ、もの凄いパワーデッキ……強い」


 メギドさんのデッキは予想通りというべきか、強力なモンスターカードによるガン攻めデッキ。戦闘時に効果を発揮するカードが多く、一撃でも攻撃を通せばそのまま瞬殺されてしまう。

 だからこそ俺は、攻撃を無効化したり戦闘ダメージを0にしたりというカードを多用し、守りのデッキで戦っていた。


「……というか、メギドさんはその姿なんですね?」

「あぁ、まぁ普段の姿じゃカードが持てねぇしな」

「……いいんですか?」

「あぁ、別にお前にならこの姿を見せてもかまわねぇ……というか、なんで目を逸らしてんだ?」

「い、いえ、目のやり場に困るというか……」

「うん? まぁ、いい、俺のターンだ!」


 メギドさんは普段の姿とも人化した姿とも違う……本当の姿になって俺とバトルをしていた。メギドさんはその姿を嫌っており、他者に見せることは殆ど無いそうだが……俺に対しては別にいいらしい。


「俺はフィールドの炎族モンスター三体を生贄に奉げ、俺自身のカードを召喚する!」

「……ついに、出てきますか……」


 【戦王・メギド】レベル13 ATK4000 DEF3000

 効果:このカードは通常召喚出来ない。フィールド上に存在する炎族モンスター3体を生贄にした場合に限り特殊召喚できる。相手はこのカードの召喚に対してマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードは『このカード以外の』マジック、トラップ、モンスター効果の対象にならず効果も受けない。このカードは相手モンスターと戦闘を行うたびATK・DEFを500ポイント上昇させる。このカードは相手フィールド上にモンスターが存在しない場合攻撃できない。このカードが戦闘破壊されたターンのエンドフェイズ時、このカードを墓地から召喚する。


 やはり強力なモンスターだが、他の六王カードに比べれば一歩劣る気がする。だが、俺の勘が告げている。コレで終わりではないと……。


「さらに俺は、フィールド上のメギドをゲームから除外して……エクストラデッキから、本来の俺のカードを特殊召喚する!」

「なっ!? そ、そのカードは……」

「喜べカイト、コレが俺のデッキの最強カード……そして、いままで一度も召喚したことがねぇカードだ! ふふ、お前は特別ってことだな」


 【真の戦王・メギド】レベル13 ATK6000 DEF6000

 効果:フィールド上に存在する『元々の名前が』戦王・メギドのカードを除外した場合に限りエクストラデッキから特殊召喚できる。相手はこのカードの召喚に対してマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードは『このカード以外の』あらゆる効果の対象にならず効果も受けない。このカードは戦闘破壊およびこのカードの効果以外の方法ではフィールドを離れない。このカードが攻撃を行う際、相手はマジック、トラップ、モンスター効果を発動できない。このカードはバトルするモンスターの『耐性を無視して』効果を無効にする。このカードが相手モンスターを破壊した時、このカードのATK分のダメージを相手HPに与える。このカードは元々の名前がクロムエイナ或いはミヤマカイトのカードと戦闘を行った場合、ダメージ計算を行わずにゲームから除外される。


 け、桁外れの強さ……こ、これが、メギドさんの真の切り札。戦闘破壊以外では排除できない強力な耐性に、戦闘時のカード発動を防ぐ能力、さらには相手の耐性を無視してモンスター効果を無効化させる能力。その上戦闘破壊すれば相手のプレイヤーに6000ポイントのダメージ。インチキ効果もいい加減にしろ!?

 唯一の弱点は、俺かクロのカードと戦闘すれば無条件に排除されるところだろうか? 俺のデッキには対抗できるカードは実質2種類しかない。

 ATK上昇効果こそないものの、防御特化のリリウッドさんのカードですら防げない。


「じゃあ、行くぜ! カイト!!」

「トラップ発動! 強制休戦命令! この効果により、メギドさんのバトルフェイズを終了させる!」

「ほぅ、やるじゃねぇか……俺が攻撃宣言をする前に、バトルフェイズを終了させる。たしかにそれなら有効だ」


 メギドさんに攻撃宣言をされてしまえば、その瞬間に6000ダメージが確定する。ここは凌いで、俺かクロのカードで排除しなければ……。


「それじゃ、俺はフィールド魔法、強者の闘技場を発動。このカードがある限りレベル8以下のモンスターは攻撃を行うことができない。ターンエンドだ!」

「ぐっ……」


 なんて厄介なカード……これで俺自身のカードで特攻するという手段が封じられた。となると残るはクロのカードだが……現在の手札にはない。俺の手札は現在1枚……俺自身のカードだけ、引けるか?


「ドロー!」


 クロのカードじゃない……けど、そうか! いける!


「俺は手札から俺自身のカードを召喚して、効果発動! このカードを手札に戻すことで、手札からモンスターを無条件に召喚する。俺が召喚するのは……雑貨屋店主・アリス! 効果により2枚ドロー!」

「……いい目だ、なにか企んでやがるな……いいぜ、こい!!」

「そして俺は、墓地から輪転する運命を除外して効果発動!」

「なにっ!? 墓地からマジックカードを発動だと……」

「輪転する運命の効果により、このターンに召喚されたレベル4以下のモンスターを自分フィールドに再召喚!」


 カード効果により、俺の場には再び俺自身のカードが召喚される。これで、条件は全て整った。


「俺は、フィール上のアリスとカイトのカードをゲームから除外し、エクストラデッキから絆の巨心・アリスを特殊召喚!」

「んだとっ……なんだ、そのカードは……この俺が、一度も見たことがないカードだと!?」


 【絆の巨心・アリス】レベル13 ATK5000 DEF5000

 効果:フィールド上に存在する『同じターンに召喚された』元々の名前がアリス、ミヤマカイトの二枚のカードを除外した場合に限りエクストラデッキから特殊召喚できる。相手はこのカードの召喚に対してマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードは『このカード以外の』あらゆる効果の対象にならず効果も受けない。このカードは戦闘破壊以外の方法でフィールドを離れない。このカードはデッキからモンスターカードを墓地に送ることで、そのカードの名前と効果を得る。この効果の発動は、モンスターカードの耐性を無視して発動できる。この効果によって変更された名前は『元々の名前』として扱う。この効果は1ターンに何度でも発動できる。このカードの効果を使用して上昇したATK・DEFは永続的に上昇する。このカードが戦闘破壊された次のターンの開始時、召喚に使用したアリスとミヤマカイトのカードをフィールドに再召喚する。


 このカードはアリスと一緒に作ったカード……白紙のカードをふたりで一回ずつ撫でたらどうなるんだろうと……アリスはなにも起らないだろうと言っていたが、やってみるとこのカードが出現した。

 現在の俺のデッキにおいて、最強の一枚といっていい。


「俺はデッキからクロムエイナのカードを墓地に送り、その元々の名前と効果を得る! そして、戦闘!」

「ぐっ、俺のカードはダメージ計算を行わずに除外される……だが、まだだ、まだ負けてねぇ!」

「いえ、これで終わりです! アリスの効果は1ターンに何度でも使用できる! 俺はデッキからジークリンデのカードを墓地に送り、攻撃力を半分にすることで二度目の攻撃を行える能力をアリスに付与。メギドさんにダイレクトアタック!」

「ぐぉぉぉぉ!?」


 クロのカード効果を得たことで上昇したATKを半分にしての追加攻撃。この攻撃にはメギドさんも耐えることができず俺の勝利となった。

 そしてある意味皮肉なことではあるが、メギドさんを退ける切り札となったアリスが……次の相手だ。アリスは俺のTBCの師匠でもあり、俺の戦略は知り尽くしている。厳しい戦いになりそうだ。

 きっと幻王カードの効果を生かした大量展開のデッキのはず……制圧力が鍵になりそうだ。









「おっと、カイトさんのドローに合わせて、トラップ発動、ドローカードを墓地に送ります」

「くっ……」

「ふふふ、いくらカイトさんが鬼のような引きをしているとしても……手札がなきゃどうにもならないんすよ」


 ハンデスデッキじゃねぇかコイツ!? 手札を捨てさせる効果やドローカードを捨てる効果を多用してきており、思うように展開できない。

 非常にストレスのたまるウザい戦法ではあるが、実際かなり効果的だ。


「……俺は墓地から希望の欠片効果を……」

「トラップ発動、鎮魂の儀式、墓地から発動する効果を無効にします」

「ぐっ、くそ……」

「ねぇねぇ、カイトさん? いまどんな気分? 逆転のカードを封殺されるってどんな気分?」

「てめぇ……」


 気のせいかアリスのウザさもいつも以上のような気がする。


「ターンエンドっすか? ターンエンドしちゃいます? 私勝ってしまいますよ?」

「……それは、どうかな?」

「ありゃ?」

「リバースカード発動、逆転への下準備!」

「うげっ!? そんなの伏せてたんすか!?」


 【逆転への下準備】魔法カード

 効果:相手プレイヤーとのHP差が3000ポイント以上ある時に発動可能。HPが低いプレイヤーはHP差1000ポイントにつき1枚のカードをドローすることができる。


 俺の現在のHPは1500、アリスのHPは5000……差は3500ポイント。アリスが妨害カードを使いきるまで温存していたカードだ。


「俺は3枚のカードをドロー! 虚像の希望を発動! デッキからカードを2枚ドローし、エンドフェイズに手札全てを捨てる。さらに蘇る古代魔法を発動。手札を1枚捨てて、墓地にある魔法カード……逆転への下準備を手札に加えて発動! さらに3枚のカードをドロー!」

「え? ちょっ……」

「弱者の意地を発動! レベル4以下、ATK1000以下のモンスターを墓地から特殊召喚できる。ワイバーンを特殊召喚! ワイバーンの効果により、特殊召喚に成功した時同名カードをデッキから1枚召喚! さらに特殊召喚されたワイバーンの効果により、もう1枚のワイバーンを召喚!」

「ワイバーンが3体……まさか、あのカードを!?」


 ワイバーンはとても弱いモンスターだ。レベル4にも拘らずATKは500。しかも、竜族ではなく爬虫類族という、悲壮感漂う一文まである。

 しかしこのカードは3枚揃った時、真価を発揮して、翼竜族の王を呼ぶ!


「マジックカード、融合変態を発動! ワイバーン3体を融合し……エクストラデッキより天竜・ニーズヘッグを召喚する!」


 【天竜・ニーズヘッグ】レベル10 ATK2500 DEF2500

 効果:このカードはワイバーン3体を融合した場合にのみエクストラデッキから融合召喚できる。このカードの召喚に成功した時、相手フィールド上のマジック、トラップを全て破壊する。


「ニーズへック……ワイバーンの特殊個体で、竜族に名を連ねることを許された存在。流石にワイバーンとは一線を隔しますね。ですが、2500程度のATKでは……」

「さらにマジックカード、連なる巨獣を発動!?」

「えぇぇぇぇ!? ちょっと、カイトさん!? どういうインチキドローしてるんですか!?」


 【連なる巨獣】速攻魔法カード

 効果:レベル10以上の融合モンスターを『正規手順で召喚』した場合に発動可能。エクストラデッキから、別名、同レベル、同ステータスの融合モンスターを召喚条件を無視して融合召喚する。


「このカードの効果により、俺はエクストラデッキから地獣・ベヒモスを融合召喚!」

「うぇぇぇぇ……」


 【地獣・ベヒモス】レベル10 ATK2500 DEF2500

 効果:このカードは地属性モンスター3体を融合した場合にのみエクストラデッキから融合召喚できる。このカードの召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターカードを全て破壊する。


「そして、ベヒモスとニーズヘッグでアリスへダイレクトアタック!」

「うにゃぁぁぁ!?」


 アリスの残HPは5000……2500のダイレクトアタック二回でピッタリ撃破することができた。

 勝った……これで、すべての六王カードを手に入れることができた。いや、まぁ、それはとても嬉しいんだけど……。


「というか……幻王のカード使わないのかよ!?」

「……え? だって私のデッキには入れて無いですし」

「入れて無い!?」


 さ、流石アリス……どこまでも予想の斜め上を行く。てっきり幻王カードを生かした大量展開デッキかと思ったら、ハンデスコントロールだし……なんだ、この釈然としない気持ちは……。


「まぁ、ともあれ、おめでとうございます。これでカイトさんは六王を全員倒したわけです」

「あ、あぁ……長かったけど、なんとかやり遂げ……」

「次は神界の最高神ですね!」

「……え?」

「気を付けてくださいね。最高神に挑む時は、5連戦ではなく特殊な『制限バトル』で配下を倒さなければならないので、デッキをしっかりと調整してください」

「…………え?」

「ああ、大丈夫です! アリスちゃんがバッチリ『世界中に伝えています』! 六王を破ったカイトさんが、いまだ誰も挑戦したことがない創造神に挑むため、神界に乗り込むと!」

「………………え?」


 こうして、俺の戦いは……まだ全然終わらなかった!?








「運命神様への挑戦権を得るための制限バトルは、私と恋愛神コンビとのタッグバトルだ! さあ、カイト、お前もパートナーを探してこい」

「……あの、シアさん? 挑戦権を得るもなにも……俺まだ神界に乗り込んですら居ないんですけど? ここ『俺の家』なんですけど……なんで、ふたりが待機してるんですか?」

「……言うな、運命神様が……『カイちゃんと早く遊びたい!』といって、私達に命令を……」

「……苦労、してるんですね」

「……お前もな」


 朝食を食べたあとで家の外に出ると、何故かシアさんとハートさんが待ち構えていた。どうやら、フェイトさんに言われて来たらしい。

 うん、分かってた。分かってたけど……俺が神界に挑戦することは、もう確定なのか……。


 まぁ、それは置いておこう。シアさんたちに言っても仕方ないことだ。とりあえず、タッグバトルか……う~ん初めてだから、ちょっと不安だ。

 出来れば強い人と組みたいものだが……。


「……カイトの……邪魔をするやつは……私が……倒す」

「え? アイシスさん!?」

「……おはよう……カイト……助けに来た……」

「あ、ありがとうございます」


 ……来るの早すぎない? い、いや、嬉しいのは嬉しんだけど……。

 アイシスさんの実力は正直言って未知数だ。俺は彼女とバトルはしていないので、どんなデッキを使用するかも分からない。

 しかしこれだけやる気に満ち溢れているアイシスさんの申し出は、素直にありがたい。


「じゃあ、アイシスさん。よろしくお願いします」

「……うん……頑張る」


 こうしてアイシスさんと俺のコンビと、シアさんとハートさんのコンビでのタッグバトルが幕を上げた。


 このタッグバトルはふたりのプレイヤーがフィールドとHPを共有するタイプらしく、HPは二人合わせて8000ポイントとなる。

 コンビ同士が伏せたカードを共有できるので、連携が鍵になりそうだ。


 ターン順は俺、シアさん、アイシスさん、ハートさんの順で、1ターン目の俺は攻撃を行うことができない。シアさんたちのデッキも未知数だが、間違いなくタッグバトル用に調整されたものだろう。

 不利であることは否めないが、とりあえず俺はモンスターを3体ほど展開して壁を厚くしておいた。


 そしてシアさんのターン。


「私のターン……私は手札から絶望の総力戦を発動、私のデッキから相手の場に存在するモンスターと同じ数だけ、レベル4のモンスターを召喚。この時、召喚されたモンスターのATKは半分になり、召喚されたモンスターは生贄、融合、儀式の素材としては扱えず、必ず相手モンスターと戦闘を行わなければならない」


 強力な展開カードではあるが、デメリットも大きい。レベル4モンスターのATKは多くても2000ぐらいだし、それが半分になるのは厳しい。実際シアさんの場に召喚されたモンスターは、どれもATK1000以下になってしまっている。

 しかも、生贄とうには利用できず必ず戦闘を行わなければならない……普通に考えれば、全滅するだけだ。けど、モンスター数によって効果の変わるカードとかと組み合わせれば……。


「モンスターを裏側守備表示で召喚し、バトルフェイズ! 私は3体のモンスターで攻撃! その瞬間手札から速攻魔法を発動!」

「速攻魔法!?」

「メリーバットエンド!」


 【メリーバットエンド】速攻魔法カード

 効果:自分と相手のフィールド上にそれぞれ3体以上のモンスターが居る場合、バトルフェイズにのみ発動可能。1000ポイントのHPを払い、互いのフィールド上に存在する全てのカードを破壊する。


「なっ、カードが全滅……」

「まだですよ! ここで私も手札から速攻魔法、奇跡のハッピーエンドを発動!」

「ハートさん!?」


 【奇跡のハッピーエンド】速攻魔法カード

 効果:カード効果により自分フィールド上のモンスターが3体以上破壊された場合、バトルフェイズにのみ発動可能。1000ポイントのHPを払い、破壊された自分フィールドのモンスターを墓地から復活させる。このカードの効果が発動したターンは、バトルフェイズ終了後に強制的にターンエンドとなる。


 やられた!? そうか、タッグバトルだから……フィールドは互いに共有する。つまり、シアさんのモンスターもハートさんのモンスターとして扱う。

 メリーバットエンドの効果で俺のフィールドのモンスターは全滅し、奇跡のハッピーエンドの効果でシアさんの場には4体のモンスターが蘇る。

 しかも、このモンスターたちはまだ攻撃を行うことが……。


「4体のモンスターでダイレクトアタック!」

「ぐっぅぅぅ……」


 合計ダメージは7500……そんな、1ターンでほぼ崖っぷちに追い込まれた!?


「……アイシスさん、ごめんなさい」

「……ううん……大丈夫」

「奇跡のハッピーエンドを使用した場合、バトルフェイズ終了後に私のターンは強制終了する。さあ、死王、お前のターンだ。滅多にバトルしないという、お前の実力を見せてもらおう」


 次はアイシスさんのターン。いきなり追い込まれた状態で初ターンとなるアイシスさんだが、その表情は静かな怒りに満ちていた。


「……よくも……カイトをいじめたな……許さない」


 そう呟いたあと、アイシスさんは流れるような動きでカードをドローする。


「……ドロー……私は手札から氷獣魔像を発動……相手フィールドのモンスターと同じ数……氷像トークンを生成……3体の氷像トークンを生贄にして……私のカードを……召喚」

「す、すごい……いきなり……」


 【死王・アイシス】レベル13 ATK3000 DEF3000

 効果:このカードは通常召喚出来ない。フィールド上に存在する氷族モンスター3体を生贄にした場合に限り特殊召喚できる。相手はこのカードの召喚に対してマジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。このカードはマジック、トラップ、モンスター効果の対象にならず効果も受けない。このカードが召喚に成功した時、デッキ、墓地から『見果てぬ夢・ゼピア』『コキュートス・ゼロ』『コキュートス・インフィニティ』のカードを手札に加える。このカードがフィールド上に存在する限り、相手プレイヤーはマジックカードの発動に対して、マジック、トラップ、モンスター効果を発動することはできない。


 アイシスさんのカードは俺も持っているが、手札に加えることができる3枚のカードを持っていなかったので、いままでデッキには加えていなかった。

 いったい、あの3枚のカードはどんな効果があるんだろうか?


「……私はアイシスの効果で……3枚のカードを手札に加える……そして……見果てぬ夢・ゼピアを発動……デッキから2枚ドローして……手札1枚を……デッキの一番下に置く」


 一枚目、見果てぬ夢・ゼピアの効果はドロー補助かな? 手札から1枚デッキに戻すので実質1:1交換ってところだろうか?


「……そして……私は……コキュートス・ゼロを発動……」


 【コキュートス・ゼロ】魔法カード

 効果:このカードの発動後、コキュートス・インフィニティのカードが出るまで、デッキからカードを引いて墓地に送る。


「……私のデッキに……コキュートス・インフィニティは1枚……それはさっきデッキの一番下に戻した……よって……41枚のカードを……墓地に捨てる」

「な、なんのつもりだ……」


 どうやらシアさんもアイシスさんのカードは見たことがないみたいで、怪訝そうな表情を浮かべていた。しかし、その表情は直後に驚愕一色に染まることとなる。


「……そして……コキュートス・インフィニティの効果……発動」


 【コキュートス・インフィニティ】魔法カード

 効果:このカードはコキュートス・ゼロのカード効果によってドローした場合にのみ発動できる。このカードを引くまでに墓地に送ったデッキの枚数×100ポイントのダメージを相手プレイヤーに与える。この効果ダメージは無効化および回復に変換することはできない。


「……4100ダメージを……与える」

「なにっ!? ぐぁっ!?」


 す、すごい。一気に4100ダメージを……い、いや、でもまだシアさんたちのHPは残っている。


「とてつもなく強力なバーンカード……だが、私達のHPはまだ残っている! しかも、お前のデッキはゼロ……次のお前のターンまで凌げば、ドロー出来ずに敗北だ!」

「……なに……勘違い……してるの?」

「……へ?」

「……私の次のターン? ……お前たちに……次のターンなんて……ない」

「は?」


 アイシスさんは冷たく告げたあと、ターンを続行する。


「……手札から……魔法カード……亡者の夢・ディストピアを発動……」


 【亡者の夢・ディストピア】魔法カード

 効果:自分の墓地に30枚以上のカードがある時、発動可能。墓地の全てのカードをデッキに戻し、シャッフルする。このターンのエンドフェイズ、デッキのカードを全て墓地に送る。


「……さらに……手札から……勇者召喚……発動……カイトのカードを……特殊召喚」

「ま、まさか……そんな……」

「……カイトのカードを……手札に戻して……私は……もう1枚……私のカードを……召喚」

「あ、あぁぁぁ……」

「……デッキから……見果てぬ夢・ゼピア……コキュートス・ゼロ……コキュートス・インフィニティ……を手札に加える」

「う、うわぁぁぁぁ!?」


 そして再び防御不可のバーンダメージ……あ、アイシスさん、つぇぇぇ……そ、そうか、アイシスさんはバーンデッキの使い手なのか……。

 ワンターンキルとか、本当に凄まじい。俺、戦ってたら負けてたかもしれない。


「……カイト……勝ったよ」

「あ、は、はい! ありがとうございます!」

「……うん!」


 明るい笑顔で勝利を報告してくるアイシスさんに癒されつつ、シアさんたちの方に視線を向けると……。


「あの、先輩……私にターン回ってきてないんですけど? なに瞬殺されてるんですか? 馬鹿なんですか? ドヤ顔したあげく瞬殺とか……それで神界の№5? うわっ、後輩として恥ずかしいです」

「う、う、うわぁぁぁぁぁぁん!」


 ……シアさんは逃げていってしまった。うん、哀れすぎる。






没理由……大分はしょっても、終わりが行方不明。


ワイバーン先輩「……時代が……追いついた!」

シリアス先輩zero「おい、トカゲ、なに調子乗ってんだてめぇ……ステーキにするぞ!」

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― 新着の感想 ―
このシリーズの続編観たい
アイシスさん、例えカードといえど快斗のカードを墓地送りに出来るのかな?
[一言] アインさん、メイドと名のついたカードとか、それ完全にドラゴンメイドじゃないですかー… やはりメイドたるもの割とちゃんとしたガチデッキ使ってて少し安心しました。
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