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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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一周年記念番外編「死の魔力への挑戦前編・快人の決意」

本日より一周年記念によって行われた人気投票にて告知した番外編を掲載していきます。

今回は見事第一位に輝いたアイシス・レムナントです。前中後編になる予定です。

以下注意点
・番外編の為、時間軸は本編終了後です
・本編に関するネタバレも含まれる場合がありますので、注意してください。
・二位のアリス、三位のクロムエイナは、それぞれ六王祭でのデートが終わった後に掲載予定。四位以下は六王祭終了後に一挙掲載です。


 始まりは、ほんの些細なことだった。俺にとってとても大切な女性……アイシスさんとのデートの相談をしている時だった。

「アイシスさん、今度のデートはどこに行きましょう?」
「……ピクニックは……どうかな? ……私……お弁当……作る」

 アイシスさんとはいままで何度もデートをしてきた。ピクニックにも行ったし、海水浴、ふたりきりで旅行なんてのもした。
 だけど、アイシスさんはいままで『街でデートしよう』とは、一度も言ったことがない。俺は出来れば、アイシスさんと一緒に演劇を見たり、カフェに行ったりしたいんだけど……。

「それもすごく魅力的ですけど、偶には街でも行ってみませんか? シンフォニア王国の南部にある街に、美味しいケーキ屋さんが出来たらしいですよ」
「……うん……でも……私が行くと……周りの人に……迷惑がかかるから……」
「……」

 これはいままでにも何度かあったやり取り……寂しそうに告げるアイシスさんに、俺は「そんなことはない」とは返答できなかった。
 俺自身には影響が無いので忘れがちになってしまうが、アイシスさんは常に死の魔力を纏っており、それは周囲の生物を威圧する。

 それに関してまったく対策が無いわけではない。アイシスさんの感情によって変化する死の魔力は、アイシスさんが幸せであれば薄くなる。
 しかし……完全に消えるわけではない。ある程度の魔力がある人であれば、その状態のアイシスさんとは会話もできるが、魔力の弱い人には依然としてアイシスさんは恐怖の対象でしかなかった。

 以前に一度試してみた結果としては、目算で約3m……それが一般人対して、アイシスさんが接近できる限界だった。
 アイシスさんはとても優しい人だから、怖がられると分かっている以上、必要でなければ人の居るところへ行こうとはしない。

「……街はまた次の機会にしましょう。そういえばライトツリーが光る時期ですし、見に行くのもいいかもしれませんね」
「……うん」

 それ以上アイシスさんに寂しい表情をさせるつもりはなかったので、無理に誘うことなく話を切り替える。
 笑顔に戻ったアイシスさんとデートの予定を話し合いながら、俺の頭にはある疑問が浮かんでいた。

 ……なんとかできないだろうか?

 俺がこれから先もアイシスさんと一緒に生きていく上で、アイシスさんをいま以上に幸せにしようとするなら、死の魔力は避けて通れない課題の一つだ。
 考えてみれば、なんでもっと早く行動に移していなかったのかとも思うが……たぶん無意識に、それがどうしようもなく難しい課題であると感じていたからだろう。

 だってもし、簡単に死の魔力をどうにかできる方法があるのなら、クロやリリウッドさんがそれを行っているはずだ。
 しかし現実として、いまもアイシスさんは死の魔力に悩まされている。それはつまり『クロやリリウッドさんでもどうにも出来なかった難題』に挑戦するということ……。

 果して人間でしかない俺になにが出来るのかは分からないが、とりあえずこのことはクロに相談してみよう。







 次の日、俺はクロにアイシスさんの死の魔力をどうにかする方法があるか尋ねてみた。
 するとクロは、少しの間考えたあと……指を三つ立てる。

「……思いつく方法は三つだね」
「三つもあるの!?」
「う~ん。というか、三つになったって言うべきかな……まぁ、ひとつずつ説明していくね」
「う、うん」

 てっきり、無理だとか思いつかないとか返ってくるかと思っていたが、クロは死の魔力をどうにかする方法に心当たりがあるらしい。
 ならばなぜいままで試していないのかとか疑問も浮かんだが、とりあえずクロの話を最後まで聞くことにした。

「ひとつ目の方法は、すごくシンプルだよ。アイシスが『死の魔力を完全に制御できる』まで成長すること……アイシスはまだ伸びしろがあるし、将来的に死の魔力を完璧にコントロールできるようになる可能性は高いよ」
「お、おぉ……」
「でも、ボクの見立てでは『最低でも10万年以上』はかかると思う」
「じゅ、じゅうま……」
「まぁ、これは気長に待つ方法だね。ちなみにボクとリリウッドが選んだ手段もこれだね」
「……うん? 残りふたつは?」

 最低でも10万年以上かかる気の遠くなりそうな方法を選んだと告げるクロに、残るふたつはそれ以上に困難なのかと思って尋ねると、クロは苦笑を浮かべながら口を開いた。

「……残りふたつは、ボクやリリウッドには無理……ううん。世界中でも、カイトくんにしか出来ない方法だよ。だから、ボクたちはそもそもそのふたつは選べないんだよ」
「……どういうこと?」
「じゃあ、ふたつ目の方法を教えるね。それは『シロになんとかしてもらう方法』だね」
「シロさんに?」
「うん、シロならアイシスの死の魔力を消すことだって出来ると思う。だけど、シロはアイシスに興味が無いから、ボクが頼んだとしてもまず聞いてくれない。だけど、カイトくんの頼みなら、たぶん協力してくれると思う」

 なるほど、たしかにほぼ全能といっていいシロさんなら、死の魔力をどうにかすることもできるだろう。となれば、これが一番簡単な方法なのかな?
 そんな風に考えていると、クロが真剣な表情に変わる。

「だけど、ボクはこの方法はオススメしない」
「……なんで? もし可能なら、これが一番……」
「うん、だけど、死の魔力を無くすってことは……『アイシスの存在を作り変える』ってことだよ?」
「ッ!?」

 釘をさすように告げられた言葉に、思わず血の気が引いた。
 アイシスさんは死の魔力が集まって生まれた存在であり、死の魔力とはアイシスさん自身でもある。それを無くすということは、たしかにアイシスさんという存在を作り変える行為に他ならない。
 死の魔力が外に漏れないようにしたり、他の人間が死の魔力を恐れないようにするという方法もあるが……前者はやはりアイシスさんを作り変える行為、後者は他者を作り変える行為。
 正直……どちらの手段もとりたくはないし、そんな方法で死の魔力を克服したとしても、アイシスさんは喜ばないと思う。

「……三つ目は?」
「……ボク的には、これが一番オススメだよ。アイシスの死の魔力を『魔力の膜で包み込んで外に漏らさないようにする』って方法だね!」
「おぉ! たしかにそれが一番良さそう……って、そんなことができるなら、なんでクロたちは……」
「うん、そこだね。なんでボクやリリウッドにはそれができないか……理由は単純だよ。カイトくんは誰かに力づくで押さえつけられて、無意識に抵抗とかしない?」
「……あっ」
「特にアイシスは強いからね。無理やり魔力を抑えつけようとすれば、無意識に抵抗しちゃう……仮にボクが無理に押さえつけたとすると、アイシスはものすごいストレスを感じちゃうだろうね。それこそ、体が動かせなくなるぐらいには……」

 抵抗をはねのけて魔力を無理やり押さえつけるということは、アイシスさんにとっては自分より格上の存在に力づくで拘束されているようなもの……たしかにそれだとアイシスさんの負担が大きすぎる。

「……じゃあ、無理ってこと?」
「うん……『ボクやリリウッドには』無理だね」
「……え?」
「たぶん、この世でたったひとりだけ……アイシスにとって、無意識でも抵抗せずに受け入れ、魔力を押さえつけられてもストレスを感じない相手がいる」
「……それって、もしかして……」
「……『カイトくんの魔力』なら、アイシスは無意識でも受け入れる! だからこれは、カイトくんにしか出来ない方法なんだ」

 アイシスさんが俺を、無意識でも受け入れるほどに愛していてくれるからこそ可能な方法。俺の魔力で、アイシスさんの死の魔力を覆い、外へ漏らさないようにする。
 それが出来れば、アイシスさんは一般人とも接することができるように……光明が見えてきた!

「……まぁ、いまのカイトくんじゃ『絶対に無理』だけどね!」
「……え?」
「言っとくけど、六王であるアイシスの魔力を、抵抗されないとはいえ押さえつけるんだよ? 生半可な魔力量じゃ無理。それに感情によって変化する死の魔力を、その変化に合わせて押さえるには……相当精密な魔力コントロールが必要だね」
「……つ、つまり?」
「うん。ぶっちゃけ、爵位級まではいかないまでも……『高位魔族級の魔力量』がないと無理!」
「……」

 俺の魔力量はとても低い、それこそ魔族に比べて魔力が低い人族の中でも、ぶっちぎりに低い。

「仮にアイシスの魔力を押さえるのに必要な最低魔力量を100とすると……」
「すると?」
「カイトくんの現在の魔力量は『0.001』ぐらいだね」
「ひ、ひくっ……」
「つまり、最低でもいまの『10万倍』の魔力量が無いと話にならないわけだね」
「……」

 思った以上に俺の魔力へっぽこだった!? ど、どうすりゃいいんだ……10万倍とか、どんな成長の仕方をすればそこに届くのやら、想像もできない。
 や、やっぱり、簡単にはいかないのか……。

 ガックリと肩を落とす俺を、クロは真剣な表情で見詰めたあと……静かな声で告げる。

「……カイトくん。どうしても、アイシスの死の魔力をなんとかしてあげたい?」
「うん」
「……『地獄を見る覚悟はある?』」
「……ある!」
「……分かった。じゃあ、ボクがカイトくんを鍛えてあげる! カイトくんの魔力量を、高位魔族級まで引っ張り上げる!!」
「……クロ。あ、ありがとう!」

 かつて六王を育て上げたクロが、俺を鍛えてくれるという非常にありがたい言葉。地獄というのは、大変不安ではあるが……言ってみれば、これは俺がアイシスさんに挑戦するようなものであり、生半可な手段で辿り着けるほど彼女は小さな存在ではない。

「ただし、大変だよ? なにせ10万倍に成長しなくちゃいけないんだから……本当に地獄の特訓だからね」
「ああ!」

 こうして、アイシスさんをいま以上に幸せにするために、俺の死の魔力への挑戦が幕を上げた。
 本当に困難な道のりになりそうだが、その先に愛しいアイシスさんの笑顔が待っているというなら……なにがなんでも辿り着いてみせる!



本編中最弱キャラ快人の強化のために、いまクロさんズ・ブートキャンプが始まる。

天然神「……快人さんが頼ってくれません」
カイちゃん「い、いや、だって話の流れ的に……」
天然神「……快人さんが頼ってくれません」
最☆弱「だって、シロさんが全力で動いたら、一話で終わっちゃうし……」
天然神「……快人さんが頼ってくれません」
脆☆弱「……今度なにかお願いします」
+注意+
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