挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

46/524

クロとのデートが始まった

 火の月15日目、大変だった時の女神との対談が終わった翌日。俺は王都にある噴水の前に立っていた。
 昨日突然クロから一緒に遊びに行こうと誘われ、あれよあれよと言う間に今日一日クロと王都の街を巡る事になっていた。
 クロはやはりデートに関しても変な知識を持っているらしく「待ち合わせからじゃないと駄目」と駄々をこねたので、こうしてクロと初めて出会った噴水の前で待ち合わせをしている。

 日が昇りきり、懐中時計で時間を確認してみると、後1時間も経てばお昼時と言える時刻……集合時間まであと10分程かな?
 そもそもいつも突発的に現れる相手と待ち合わせと言うのも奇妙なものだし、こうして俺の方がクロを待っている状況と言うのも新鮮と言えば新鮮だ。
 どうもクロは「ごめん、待った?」「いいや、今来たところ」と言う定番のやり取りをしたいらしく、昨日入念な打ち合わせ? の結果、俺が先に到着して待つ事になった。
 そのまましばらく街行く人達を眺めていると、これもまた定番ではあるが後方から聞き慣れた声が聞こえて来る。

「カイトくん、ごめん、待った?」
「……いいや、今来たとこ――ろ?」
「うん?」

 打ち合わせ通りクロが希望した言葉を返しながら振り返ったが、俺の思考はその直後に固まってしまう。
 現れたクロの姿は、彼女がいつも着ているローブと見間違うほどにだぼだぼのロングコートでは無かった。
 白く上品な印象を受ける半袖のレースの上着、白磁器の様に綺麗な素足が除く茶色のショートパンツ。普段の黒いロングコートは袖の無いジャケットの様な形状になっており、膝下辺りまである裾が白い上着とよく合っており、軽装ながらどこか上品さも感じる出で立ちだった。
 ……どうしよう、滅茶苦茶可愛い。それはもう、ロリコンでも良いんじゃないかと、思考が傾いてしまいそうな程に……

「カイトくん?」
「あ、いや……何か普段と違う恰好だったから、少し驚いて」
「あ~成程。どう? 似合う?」
「あ、うん。良く似合ってる」
「えへへ、ありがと!」

 そこではにかむ様な笑顔は反則だと思う。あ、やばい。何か凄く緊張してきた。
 21にもなって情けない話だとは思わなくもないが、俺は女性と二人きりで出かけた経験等片手で数えるほどしかない。しかもその片手で数える程の中には、ルナマリアさんやジークさんと出かけた件も含まれているので、実質元の世界ではゼロに等しい。
 ましてやデートなんてものは人生初であり、いくらクロにしてみれば一緒に遊びに行く程度の認識だとしても、緊張しない方が可笑しい。
 しかもクロは、贔屓目無しで見てもとんでもない美少女。いくら話慣れている相手とはいえ、愛らしい笑みを向けられると思わず顔に熱が集まってしまう。

「そ、そういえば、クロって有名なのに、街中歩いたりしても大丈夫なの?」

 とりあえず別の話題に逃げてみる事にする。別に服を褒めた流れのまま出発するとロクに話せそうに無いとか、そう言うヘタレな理由からではない。
 クロは魔界の頂点の一角である冥王。過去の勇者祭で顔も知られているし、非常に有名な存在……元の世界の感覚で言えば、総理大臣だとか天皇陛下だとかが街中に現れている様なもので、それこそ大騒ぎになりそうなものだけど……今の所別に周囲がざわついたりしてる感じはない。何でだろう?

「ふふふ、抜かりはないよ! ちゃんと認識阻害と情報隠蔽の魔法をかけてるから、直接話したりすればボクだって分かるだろうけど、そうじゃない限りは分からないようになってるからね!」

 小さな胸を反りながらえっへんと言いたげに告げるクロ……ドヤ顔が腹立つぐらい可愛い。

「う~ん、いまいちその魔法に関しては分からない所が多いんだけど、要は通行してる人とかにクロが冥王だってばれないって事?」
「うん。と言うよりはボクを見ても違和感を感じないって言うか……まぁごく自然に街の子が歩いてるみたいに認識されるって感じかな」
「分かる様な、分からない様な……」
「あはは、まぁそれは置いといて、そろそろ出発しよう!」

 クロの説明を聞く限り認識阻害魔法と言うのは、要するに不自然な事……冥王が街中を歩いているって言う普段とは違う状況を見ても、それを自然な――日常と何も変わらない光景だって認識させる魔法って事かな? それに情報隠蔽の魔法が合わさって、直接会話をしたりしなければクロが冥王だとは気付かれないと言う事らしい。
 まぁ、細かく考えた所で理論的な理解は難しいだろうし、魔法って何か凄いな程度の認識で良いだろう。

「そう言えば、今日はどこに行くんだ?」

 ちなみに今回のデート? はクロがエスコートしてくれる事になっている。
 本来であれば男の俺がエスコートするのが自然な流れかもしれないが、俺はまだこの世界に来て二週間足らずであり、街を出歩いた事も数えるほどと言う事もあってそれは難しい。
 なので、シンフォニア王国にもよく遊びに来てるクロが色々と案内してくれる事になっている。

「この辺りは色々なお店がある場所だし、ここらを周っても良いんだけど、もうすぐお昼の時間だし、少し歩いた所に屋台とかが集まってる場所があるから、先にそこに行ってみようよ」
「おぉ、この世界の屋台か……それは楽しそうだ」
「うんうん。シンフォニア王国は食文化が進んでるから、美味しい物いっぱいあるよ~」

 ニコニコと楽しげに笑うクロの顔を見て、俺も思わず笑みを溢しながら頷く。
 ともすれば無邪気ともとれる明るいクロの性格は、俺の性格と相性がいいのか、一緒にいると自然と笑顔になれるので楽しい。
 昨日は色々とあって疲れたし、今日はクロが用意してくれた羽休めの機会を楽しむ事にしよう。

「さ、しゅっぱ~つ!」
「え? ちょ、クロ!?」
「うん? どうしたの?」

 元気良く宣言した後、クロは自然な動作で俺の手を握ってくる。

「い、いや、手……」
「デートって、手を繋いで歩くのが普通じゃないの?」
「た、確かにそうと言えるかもしれないけど……」
「じゃ、大丈夫だね! さ、行こう!」
「……あ、あぁ……」

 ごく当たり前の様に告げた後、クロはぐいぐいと俺の手を引っ張りながら歩を進めていく。
 ちょっと、ガードが緩すぎるんじゃないですかねクロさん!! てか、手ちっちゃいし、柔らかいし……あぁ、折角落ち着いてきたのにまた緊張してきた……これは、今日も気苦労は絶えないかも……

 拝啓、母さん、父さん――ある意味テンプレとも言えるコテコテの展開かもしれないけど、ともあれ、こうして――クロとのデートが始まった。
















+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ