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そっくりなんだ?



 ノアさんはハーフヴァンパイアだからか、非常に力が強い。その為、ルナさんはなかなかノアさんを俺から遠ざけれずにいた。

 しかし、そこでようやくリリアさんが目覚め……軽々とノアさんを引き剥がしてくれた。流石と思うべきか、ハーフヴァンパイアすら圧倒するパワーに驚愕するべきか……。


 俺から引き剥がされたノアさんは、しばらくぼんやりしたあとで眠ってしまった。

 そして俺は、料理長の挨拶を……リリアさんのフォロー頼りでなんとか乗り切った。いやはや、本当にリリアさんが居てくれて助かった。


「……そういえば、お嬢様? 今回はなぜ気絶していたんですか?」

「えっ!? あ、そ、それは……」


 リリアさんたちの宿は店から中央塔に向かう途中にあるので、皆で宿の方にゆっくり歩く。

 眠ってしまったノアさんを背負いながらルナさんが尋ねると、リリアさんは分かりやすいほど慌てていた。


「い、いえ、ちょっと……夜風に当たり過ぎて……」

「いや、お嬢様はそんなヤワな体はしてないでしょう……いえ、まぁ、いいんですけど……」


 リリアさんの誤魔化しに怪訝そうな表情を浮かべつつも、ノアさんを止めてもらった借りがあるからかルナさんはそれ以上追及することはなかった。

 それにより、リリアさんも十分落ち着きを……。


「あっ、リリアちゃん、こんばんは」

「く、くく、クロムエイナ様!? こ、ここ、こんばんは」


 取り戻す間もなく、クロの登場によりまたしても慌て始めた。

 レイさんやフィアさんも慌てて片膝をついて頭を下げようとしたが、クロがそれを止めた。


「アオイちゃんにヒナちゃんも、久しぶりだね。お祭りは楽しんでくれてるかな?」

「はい、とても楽しませてもらっています」

「今日なんてついつい買い物しすぎちゃいましたよ」

「あはは、そっか、それなら良かった」


 屋敷で一度話している葵ちゃんと陽菜ちゃんは、クロに声をかけられても笑顔で対応していた。うん、リリアさんが緊張しすぎな気がするけど、まぁ、らしいと言えばらしいか……。

 ふたりの言葉を聞いて、クロは笑顔で頷いた後、どこからともなく布袋を取り出してふたりに渡す。


「じゃあ、はい。お小遣いあげるから、明日もいっぱい楽しんできてね」

「……え?」

「クロム様? も、もらっていいんですか?」

「もちろん。ふたりにとってはせっかくの異世界なんだから、思いっきり楽しんでよ」

「「あ、ありがとうございます!」」


 ニコニコと笑顔で告げるクロに、ふたりは深く頭を下げる。

 そしてクロはリリアさんの方に向き直り、少し申し訳なさそうな表情で言葉を発した。


「それで、リリアさん。悪いんだけど、カイトくんに用事があるから連れていっていいかな?」

「え? あ、はい。それは、もちろん大丈夫ですよ。食事もつい先程終わったところですし……」

「悪いね。あとで、リリアちゃんたちの宿に美味しいお菓子を届けとくから、皆で食べてね」

「お気遣いありがとうございます」


 クロが美味しいお菓子というと……ベビーカステラ以外が届く予感がしない。


「じゃあ、カイトくん。いこっか?」

「え? ああ……それじゃ、皆さん、おやすみなさい」


 用事というのに心当たりはなかったが、クロに促されて、俺は皆におやすみと伝えてからその場を後にした。








 クロの後を追うように歩いていると、人影がまったく見えない広場に辿り着いた。そしてクロは足を止め、俺の方に振り返って口を開く。


「カイトくん、急にごめんね」

「いや、それは別にいいんだけど……用事って?」

「うん、カイトくんが昼間に遭遇した母親とそっくりの相手についてだね」

「え?」

「アイシスから話は聞いてて、早めに相談に乗ろうと思ってたんだけど……ボクはコレからちょっと、打ち合わせでマグナウェルのところに行くんだ。だから、その前に少しだけ話しておこうと思ってね」


 たしかに俺は母さんにそっくりな相手について、アイシスさんのアドバイスもあってクロに相談しようと思っていた。

 どうやらクロは俺のために早い段階で話せるようにと、こうして訪ねてきてくれたみたいだ。


「まず、結論から言うね。アイシスから話を聞いてシロに聞いてみたけど……シロはカイトくんの母親を生き返らせてはないし、同じ姿の存在を創造してもいないらしい」

「……」

「シロは嘘をつく時は、嘘だって口に出すから、間違いない。念のために地球神にも確認してみたけど、そっちも違うって言ってた」

「じゃあ、やっぱり……」

「うん。他人の空似だね」

「……そっか」


 クロが言うのなら間違いないんだろう。いや、俺だってその可能性が高いとは思っていた。けど、やっぱり聞いてみると、落胆する気持ちは隠せない。


「……カイトくん、大丈夫?」

「うん。最初は戸惑いも大きかったけど、いまはすっかり大丈夫。ちゃんと受け止められたよ」

「……そっか、じゃあボクは打ち合わせに行ってくるね。また後でゆっくり話そうね」

「ああ、ありがとう」


 深くは聞かずに優しく微笑んでくれたクロに感謝の意持ちを伝え、去っていく姿を見送った。


 そしてクロの姿が完全に見えなくなってから、俺は中央塔に返るために歩きだそうとしたが……その足は即座に止まった。


「やっ、昼間ぶり~こんなところで会うなんて凄い偶然だね?」

「ッ!?」


 聞こえてきた声に心臓が飛び出るかと思うほど驚愕した。


「……母……さん……?」


 拝啓、母さん、父さん――俺が昼に見かけた母さんにそっくりな女性は、他人の空似だという結論になった。それは間違いないはずで、俺自身も納得していたのに……なんで? 姿だけじゃなく、声まで――そっくりなんだ?





シリアス先輩Act3「……え?」←(本当にシリアスっぽい引きになってて、動揺を隠せない)

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