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日常茶飯事みたいだ



 しばらくアイシスさんの膝枕を堪能しながら食休みをして、再び祭りを回ろうと立ち上がる。

 そして、マグナウェルさんの額から移動しようとしたタイミングで……遠方に『巨大な爆発』が見えた。


「……え?」


 幸い会場である都市からはかなり離れているみたいだが、何事だろう? もしかして、テロとか……い、いや、流石に六王主催の祭りでそんなことをするわけが……。


『……なにをやっておるんじゃ、あやつらは?』

「……いつもの……喧嘩?」

「え? アイシスさんとマグナウェルさんは、なにが起ってるか見えるんですか?」


 ここは爆発の起きた場所からは、巨大な都市を挟んで真逆に位置しており、俺の視力では巨大な爆煙しか見ることはできない。

 しかし、流石六王の二人はこの距離でも状況を掴めているらしく、どこか呆れた様子で話していた。


「……うん……『シャルティアとメギドが喧嘩』……してる」

「なんで!?」

『あやつらは昔からよく喧嘩しておる。ほれ、シャルティアは相手を煽るような喋り方をするじゃろ? 喧嘩っ早いメギドとは相性が悪いんじゃよ……まぁ、流石にどちらもこの島が壊れんように加減はしておるみたいじゃ……』


 知り合いの仕業だった!? アリス……俺がアイシスさんやクロと二人っきりの時は、気をきかせて席を外してくれるのはありがたいけど……なんでその短時間でメギドさんとバトル展開になってるの!?


「……カイト……『行こう』……止めないと……祭りに……影響が出る」

「……え? ちょっ、どこへ? まさか、あそこ……」

「……大丈夫……私が……守る」

「い、いや、そういう問題じゃ……」


 時折上がる爆煙を眺めていると、アイシスさんが当り前のように呟き、俺の脚元に魔法陣が浮かぶ。

 いやいや、確かに止めるべきなのは分かるけど……あの戦いに俺が入っていっても、なにも……。

 








 辿り着いたその場は、まさに戦場……炎と閃光がぶつかり合い、轟音と共に地面をえぐり取っていく。その戦いの中心には、原因となった二人の姿があった。

 いくら都市に直接被害が行かないように加減しているとはいえ、これじゃあ都市に居る人達が怯えてしまうと思う。


「ああ、もうっ!? 洒落の通じないゴリラですね! 頭の中まで全部筋肉なんじゃねぇっすか?」

「んだと!? だったらテメェは、カイトに尻振る『発情期の雌猫』だろうが!」

「い、いまさら『褒めたって』遅いっすからね!」

「なんでいまのが褒め言葉に聞こえるんだよ! 馬鹿かテメェは!?」

「おい、こら、ゴリラ……私を罵っていいのはカイトさんだけですよ? マジぶっ殺しますよ……」

「……おもしれぇ、やってみろ」


 うん、なんだろう。なにが発端かよく分からないが……くだらないことで争ってるのは、いまの会話で理解できた。

 しかし、罵り合う内容は馬鹿丸出しでも、どちらも実力は世界最高クラス。非常に性質が悪い。


「あ、アイシスさん? これ、アイシスさん一人でどうにか出来るんですか?」

「……う~ん……難しい……けど……『来る必要無かった』」

「……え?」


 流石に六王二人相手にアイシスさん一人で止めるのは厳しいのではと考えて尋ねると、アイシスさんは俺の考えを肯定した上で、来る必要はなかったと呟いた。

 そして、その言葉とほぼ同時に、戦っていた二人の動きが止まり……地の底から響くような声が聞こえてきた。


「……なに、やってんの?」

「……く、くく、クロさん!?」

「く、クロムエイナ……いや、こ、これは……」


 体から黒い霧を漏れさせながら、怒り心頭といった表情で歩いてくるクロを見て、アリスとメギドさんは分かりやすいほど顔を真っ青にして、自主的に正座した。

 そんな二人の前に立ったクロは、腕を組んで仁王立ちする……怖い。一昨日説教されたこと思い出した。


「……シャルティア?」

「は、はは、はい!」

「……メギド?」

「お、おう……いや、はい」

「ボク、言ったよね……六王祭の最中に喧嘩するなって……ちゃんと言っておいたよね?」

「「……ハイ」」


 正座したままでガタガタと震える二人は、死刑執行を待つ囚人のように見えた。

 そんな緊迫した空気の中、アイシスさんが静かに口を開く。


「……クロムエイナ……判決は?」

「……デコピン(強)」

「「ッ!?」」


 なんだ、デコピンで済むのか……まぁ、怒っているとは言っても、クロは優しいし、特に家族には甘くなるのかもしれない。

 (強)っていうのが少し気になったけど、まぁ穏便に済ませるみたいだ。


 っと、俺がそんなことを考えていると……何故か、アリスとメギドさんは青かった顔を真っ白に変えた。


「ま、待ってください!? クロさん、私が、私が悪かったです!! そ、それだけは……」

「く、クロムエイナ!? すまねぇ、もう二度とこんなことはしねぇ……だ、だから、慈悲を……」


 あれ? なにこの慌てよう? デコピンだよね? そりゃクロの力でするデコピンなんだから、すごい威力だとは思うけど……六王である二人なら大丈夫なんじゃ。


「……カイト……私の後ろに……」

「え? あ、はい」


 アイシスさんの言葉に従って移動すると、クロはゆっくりとデコピンの形にした手を二人に向ける。メギドさんに関しては、サイズがサイズなので、額ではなくお腹辺りだけど……。

 そして、次の瞬間……クロの指先が一瞬光ったかと思うと、轟音と共に『前方の景色が消えた』。


「……え?」


 そして後に残ったのは、『熱で融解した地面』と『割れた海』だった。え、えぇぇぇぇ!?


「……あ、あわわわ……」

「……クロムエイナの……デコピン(強)……あれは……すごく……痛い」


 いやいや、痛いじゃ済まないでしょ!? こ、これ……二人とも……し、死んだんじゃ……。


「ふぎゅぅぅぅ……く、首取れるほど痛かったです」

「げふっ……腹に穴が開いた……痛ぇ」

「……二人とも、もうしちゃ駄目だからね?」

「「ハイ!」」


 ……全然普通に生きてた。あの出鱈目なデコピン喰らって、この程度……やっぱりこの二人も十分化け物である。

 メギドさんにいたってはお腹に穴開いて……あっ、治った。というか、いつの間にか割れていた海も元に戻ってるし、津波とかの気配もない。


「じゃあ、二人が壊したこの付近は、仲良く直しておくように……」

「……え? いや、私達というか……ほとんどクロさんのデコピン……」

「なに?」

「なんでもありません! ただちに修復作業を開始します!!」


 な、なんというか……一件落着……なのか? いや、まぁ、クロの力加減が完璧なのか都市の方にはまったく影響はないみたいだけど……うん、考えるだけ無駄だ。


 拝啓、母さん、父さん――些細な原因? から始まったアリスとメギドさんの喧嘩も、なんとか終結した。というか、信じられないことだけど……アイシスさんとマグナウェルさんの反応を見る限り、このぐらいの喧嘩は――日常茶飯事みたいだ。





~デコピンの威力~


↑弱

↓強


クロムエイナ


デコピン(弱):凄く痛い。コンクリート塊を粉砕できるぐらい。

デコピン(中):やばい。城壁を消し飛ばせるぐらい。

デコピン(強):戦艦主砲100発分ぐらいの威力。


シャローヴァナル


デコピン(さび抜き):相手は死ぬ。

デコピン(中辛):相手は死ぬ。

デコピン(特盛りネギだく):相手は死ぬ。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり地球神の死んだ後蘇生が一番マシだったか……
[一言] シロさん…それ分類してる意味無いですの…
[良い点] シロさん慈悲ないなあ
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