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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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現在の魔界の原型を作った存在らしい



 ある程度主だった場所を回り終え、時刻は夕方に近付いてきた。
 リリウッドさんの案内が分かりやすいお陰で、植物にあまり詳しくない俺も十分にこのお祭りを楽しむことが出来た。本当にありがたい話である。

 そして現在俺は、リリウッドさんに連れられて……この二日目の祭りでもメインと言える場所にやってきていた。
 そこは会場となる都市の中央塔より北部分全てを使った、巨大な花畑。色とりどりの花々がまるで模様を描くようにズラリと並び、紛うこと無き絶景となっていた。

 リリウッドさん曰く「自信作」ということだが、実際本当に素晴らしいと一言だ。ある場所から見れば、巨大な虹のように見え、別の場所から見れば、複雑な色のリングにも見える。
 小高い丘のような場所も用意されていて、そこから見るとまた違った美しさを見つけることが出来る。見る度に新たな発見がある花畑は、まるで宝石箱のようにも感じられた。

 気付けば、花畑を見下ろせる丘でリリウッドさんと並んで座り、時間を忘れて花畑を眺めていた。

 空が茜色に染まり始め、先程までとはまた違った哀愁漂う美しさが現れ始めた辺りで、俺は隣に座るリリウッドさんに話しかけた。

「そういえば、リリウッドさん。前々から、聞いてみたいとは思ってたんですけど……せっかくなので、いま聞いてもよろしいですか?」
『え? ええ、構いませんよ』

 リリウッドさんがこの場に居ることで他の参加者が遠慮しているのか、この丘には現在人影は見えない。二人っきりで話すには丁度いいタイミングとも言えた。
 だからこそ、俺は前々から気になっていたこと……リリウッドさんに関する、ある疑念を尋ねてみることにした。

「その、勘違いだったらすみません。リリウッドさんって……もしかして、アリス……幻王と仲が悪かったりしますか?」
『……なぜ、そう思うのですか?』
「……以前、宝樹祭でリリウッドさんから忠告を受けた時、なんとなく……リリウッドさんが、アリスを『怖がっている』ような気がしたから……ですかね?」
『……』

 いつか聞きたいとは思っていた。しかし、内容が内容だけに、いままで聞く機会が無かった。
 宝樹祭でアリス……幻王について語るリリウッドさんの表情には、どこか未知の存在……いや、理解できない相手を語っているような雰囲気があった。
 俺にとってアリスは親友でもあり、同時にかけがえのない恋人……だからこそ、聞いておきたかった。

 俺の言葉を聞いたリリウッドさんは、しばらく沈黙した後で軽く溜息を吐いた。

『……カイトさんには、敵いませんね』
「……じゃあ?」
『ええ、貴方の言う通りです。『前までは』という前提は着きますが、確かに私は彼女を……シャルティアを恐れていました。いえ、恐れていたというのは少し適切ではないかもしれません……『不気味だと思っていた』というのが正しいでしょうね』
「……不気味、ですか?」

 リリウッドさんは夕暮れに染まる花畑を見つめながら、ポツポツと昔のことを語り始めた。

『彼女は、ある日突然私達の前に現れました。強大な力を有した存在として、忽然と……それ自体は問題ではありません。クロムエイナが連れてきた存在なら、私達にとっては家族として受け入れることに迷いはなかった』
「……」
『明るく元気なシャルティアは、すぐに皆と打ち解けましたが……おどけて笑いながらも、どこか一線引いているような……笑顔の奥に暗い炎が宿っているような……そんな違和感がありました』

 なるほど、リリウッドさんはアリスが抱えていたものにおぼろげながら気付いていたんだ。ただ、ハッキリとは分からなかった。だからこそ、アリスを不気味に感じていたのかもしれない。

『……どこか、私達とは違うナニカを見ているような……そんな思いがハッキリとしたのは、シャルティアがこの世界に来て千年ほどが経過したあたりでした』
「アリスが、なにかをしたんですか?」
『……その頃の魔界というのは、酷く無秩序でした。力有る者……いまで言う伯爵級の魔族が多く存在し、それぞれが好き勝手に暴れていました。魔界において最強の存在であるクロムエイナは、魔界を統べる力はあっても個々の自由を尊重していましたので、結果としていまよりずいぶん荒れていた時代だと言えます』
「……」
『しかし、無秩序だった魔界は……たった一人の存在によって変えられました』
「……まさか、それが、アリスですか?」

 思わず聞き返した俺の言葉に、リリウッドさんは静かに首を縦に振った。

『シャルティアは力有る魔族の中で、彼女が世界に不要と認識した存在を秘密裏に消していきました。あまりにも冷徹に、私達が気付かないほど巧妙に……気付いた時には、それらの力有る魔族の『七割以上』が彼女ひとりに始末されていました』
「……」
『それだけではありません。同時に彼女は、己の手足となる配下を増やし、たった千年で広大な魔界の裏側に根を張り巡らせました。そしてその情報操作力を用いて、魔界に秩序を……『六王』と『爵位級』という階級を作り上げてしまいました』
「え? ちょ、ちょっと、待ってください。それじゃあ、六王とか爵位級高位魔族って呼称を作ったのは……」
『ええ、シャルティアです。力によって魔族を区分したのは、情報の管理をしやすくするため……引いては己のためだと、彼女は語っていましたね』
「……なんて自分勝手なやつっすか、シャルティア最低ですね。自己中にもほどがありま――ふぎゃっ!?」

 なんか真面目な話に割り込んできた馬鹿が居たので、反射的にゲンコツを叩き込んでおいた。

 拝啓、母さん、父さん――リリウッドさんの話は、結構衝撃的なものだった。もちろん俺はアリスの事情を知っているから、アリスがそれを行ったのは……イリスさんとの約束を果たすため、多くの情報を必要としたからだろうけど……それでも、驚いた。つまり、アリスは、六王や爵位級という言葉を生み出し――現在の魔界の原型を作った存在らしい。




???「はぁ~自分の恋愛相手探すために、世界を掌握してやろうなんて、発想が馬鹿ですよ馬鹿! 呆れ果ててものも言えませんね。自己中の極みですよ。まったく、アリスちゃんのように清く可愛く愛くるしい超絶プリティな大天使とくらべて、シャルティアってやつは最低ですね! 全く酷いはな――みぎゃっ!?」
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