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アリスの親友だ



 アニマとの食事を終え、ついに辿り着いた五つ目の闘技場。

 いままでの闘技場とそれほど造りは違わないはずだが、いよいよ最後にして最強の戦王五将だと思うと、やけに威圧的に見える。


「……リリアさん達は、中かな?」

「そのようですね。先に挑戦しているのかもしれません」


 ざっと入り口付近を見てみるが、リリアさん達の姿は見当たらなかった。なので先にアグニさんに挑戦しているんだと思い、アニマと一緒に闘技場の中に入る。

 そのまま少し進むと、歓声と戦闘音らしきものが聞こえてきた。


 少し早足で進むと、広い闘技場の入場口近くに皆の姿が見えた。


「おや? カイトさん。お疲れ様です」

「ジークさん! お待たせしました……いまもしかして、挑戦中ですか?」


 ジークさんが俺の姿を見つけて声をかけてくれたので、軽く頭を下げつつ皆に合流する。


「ええ……まもなく、お嬢様を含めて『全員挑戦失敗』になるところです」

「えぇ!?」


 ルナマリアさんの告げた言葉を聞いて、すぐに闘技場の中央付近に視線を動かすと……そこには悠然と佇むアグニさんと、大剣を上段に構え振り下ろそうとしているリリアさんの姿が見えた。


 凄まじいパワーを誇るリリアさんの大上段からの渾身の一撃……それこそ、伯爵級高位魔族の一撃にも匹敵するであろうその攻撃を、アグニさんはその場から動かず『片手で』軽々と受け止める。


「……いい攻撃だ。しかし、まだ魔力にムラがある」

「ぐぅっ……」


 それは、圧倒的な光景だった。

 リリアさんが連撃を放てば、その全てを一歩も動かず片手で受け止め、竜巻のような魔法を放てば、それを片腕を無造作に振るだけで霧散させる。

 リリアさんが俺には知覚できないほどの速度で攻撃を仕掛けても、アグニさんの表情を変えることすら敵わない。

 戦いにおいて素人の俺でさえ理解できるほどの、圧倒的な実力差……これが、戦王五将筆頭の力……。


 結局アグニさんはそのまま一歩も動かないままでリリアさんの攻撃を捌き切り、時間切れでリリアさんは挑戦失敗となった。


「……悪くはなかった。次の機会を期待する」

「は、はい……ありがとう……ございました」


 肩で大きく息をしながら、リリアさんが疲れた表情で戻ってくる。


「リリアさん、大丈夫ですか?」

「カイトさん、ええ、流石戦王五将筆頭のアグニ様……ハンデ有りでも、手も足も出ませんでした」

「というより、ミヤマ様を待つ間他の挑戦者も見ていましたが……『いまだ誰もクリアできていない』みたいです」

「……マジですか……」


 アグニさんどれだけ容赦がないんだ? 誰もクリアできてないって……。

 ルナマリアさんが告げた言葉に戦慄しつつ、俺は隣に居るアニマに話しかける。


「……アニマ、勝つ自信は?」

「口惜しいですが……無いと言うほかありません。アグニ殿は、イプシロン殿と比較しても……次元が違います」

「そっか……」


 アニマですら挑戦前から勝てないと評するほど、アグニさんは強いらしい。間違いなくここまで会ってきた戦王五将の中で最強の存在……正直リリアさんでも勝てないとなると、俺の代理で勝てそうなのはエデンさんかパンドラさんぐらいなんだけど……。


「これは、ミヤマ様。ようこそいらっしゃいました」

「あっ、はい。こんにちは……えと、お邪魔しています」


 するとそのタイミングで、リリアさんの挑戦で壊れた個所の修復を終えたアグニさんが、こちらに近付いてきて、俺に対して深々と頭を下げて挨拶をしてきた。


「丁重な挨拶、痛み入ります。すでに配下より報告は受けていますが、すでに特大スタンプを四つ手に入れたとか……流石はミヤマ様です」

「あ、ありがとうございます」

「しかし、私もメギド様よりこの場を任されております。手を抜くわけにはいきませんので、どうかご了承ください」

「は、はい!」


 アグニさんはなんというか、意外といったら失礼かもしれないけど使うべき場面ではしっかり敬語も使う方みたいだ。

 というか、ほとんどの戦王五将も脳筋ってほどではないか……コングさんは別として……。


 そしてアグニさんは、真っ直ぐに俺の目を見ながら、静かに言葉を続ける。


「ミヤマ様、無礼を承知で申し上げます」

「え? あ、はい。どうぞ……」

「恐れ入りますが、ミヤマ様では最大のハンデを付けたとしても私に勝つことはできません。代理を立てての挑戦を推奨いたします」

「わ、分かりました」


 まぁ、俺もそのつもりではあったが……しかし、どうするか?

 アグニさんに勝てるとなると、本当にエデンさんかパンドラさんしか候補が居ない。しかし、パンドラさんは忙しそうだったし、あまり仕事の邪魔をするのは気が進まない。

 だからと言って、エデンさんは……あの方の場合は、ついうっかりとかで相手を殺してしまいそうなのが怖い。エデンさんはこの世界の住人を、本当に虫けらぐらいにしか思ってないから不安だ。


 しかし、う~ん。結局はどちらかに頼る必要があるなら、すぐに呼べるエデンさんかな? 加減に関しては、俺が重々お願いすればなんとかなるだろうし……。


 っと、そこまで考えたタイミングで、後方から聞き覚えのない声が聞こえてきた。


「……なれば、我が代理として出よう」

「……え?」


 聞こえた声に振り返って、一番初めに思い浮かんだ感想は『誰?』というものだった。

 内側が黒色、外側が灰色の二色のセミショートヘアに、アメジストのような紫色の瞳。身長は140cm前半ぐらいの小柄な感じだが、腕を組んで歩いてくる姿は実に堂々としている。

 スカートタイプの軍服を礼装風に改造したような服の胸部分には、俺の同行者であることを示す黒いバッジが付けられていた。


 ……本当に誰だこの人? 全く見覚えが無いんだけど……。


 謎の女性は、そのままアグニさんの前まで歩いて行き、静かにアグニさんを見つめながら口を開く。


「……この男には、返し切れぬほど大きな恩がある。この程度のことでは一割すら返済は出来ぬだろうが……利子分程度支払っておかねば、我の気が収まらん。故に、我が代理として出させてもらう……異論はあるか?」

「え、えと……ど、どちらさまでしょうか?」

「……むっ!? あの馬鹿め……説明しておらんのか……」


 悠然とした態度で宣言しつつ、俺に確認の言葉を投げかけてきた女性は、俺の質問を聞いて硬直する。

 そして少しして、大きなため息と共に頭に片手を当て、呆れたように呟いてから俺の方に向き直った。


「我の名は、イリス……イリス・イルミナス。まぁ、お前もよく知る『大馬鹿の相棒』というやつだ」

「……え?」


 拝啓、母さん、父さん――アグニさんとの挑戦に、突如として現れた謎の女性。俺とは間違いなく初対面ではあるが……その名前は聞き覚えがあった、というか、俺の記憶が間違いでなければ、この人は、イリスさんは――アリスの親友だ。





???「酷いネタバレを見ました。アリスちゃんファンの皆様なら、タイトル見た時点でピンときますよね。まぁ余裕ですね。この程度はアリスちゃん検定四級レベルの問題ですからね」

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