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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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楽しまなければ損だ



 ……またも、嫌な事件だった。

「パンドラさん! もうやめてぇ!? 放送禁止みたいな状態になってるから!」
「……私が育てました」
「ドヤ顔すんな! 頼むから、パンドラさんを止めてくれ!」
「……は~い。パンドラ、その辺にしておきなさい。カイトさんにグロシーン見せるんじゃないっすよ」
「はっ! 御心のままに」

 アリスの言葉を聞いて、ようやく動きを止めるパンドラさんの前には、虚空から出現した大量の鎖に縛られ、ぐったりとしているコングさんが居る。
 パンドラさん、怖い。マジ怖い……というか、コングさんいたぶってる間、やたら生き生きしてて……エデンさんより怖いかもしれない。

 ともあれ、アリスの制止によりパンドラさんは止まり、すぐにコングさんもアリスの魔法で回復する。
 精神面を心配したが「次は負けねぇ」と、元気に発言しており問題はなさそうだった。
 そんなコングさんから、二つ目のスタンプをもらい、胃が痛むのを感じつつ闘技場の外へ出る。

「……ぱ、パンドラさん。ありがとうございました」
「いえ、お安いご用です。申し訳ありませんが、仕事に戻ります。もしまた代理が必要でしたら、いつでも呼んでください」

 ……もう結構です。本当に結構です。俺の胃が持ちません。

 パンドラさんと別れた後、俺は闘技場から少し離れた出店に向かう。
 リリアさん達を待つ以上、動きまわるのは下策であると理解していたが、いまはこう、なんか癒しが欲しかった。

 なにせ、二回連続で非常にヤバい方が救援に現れたわけだし……この次も、なんかヤバい人が現れるんじゃないかと、非常に不安になっていた。
 頼むから、誰か、まともなの……来てくれ……。

「ご主人様!」
「……へ?」

 聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、少し離れた場所から小走りでこちらに向かってくるアニマの姿が見えた。
 六王祭のために用意した。黒地に星空のような模様が入った上着と、同色のズボンを身に纏ったアニマは、俺の前まで駆け寄ると柔らかな笑顔を浮かべた。

「遅くなりました。合流出来て良かっ――ふぇっ!?」
「アニマ!」
「ご、ごしゅ、ご主人様!? な、なな、なにを……」

 特に意識したわけではなかったが、アニマの顔を見てつい反射的に抱きしめてしまった。
 分かりやすいほど顔を赤くしながらも、抵抗せずに俺の腕に収まるアニマは、非常に可愛らしくすさんだ心が癒されていく。

 逃げろと言っても聞いてくれない戦闘狂に、それを消し飛ばそうとする地球の神。会話がドッチボールのゴリラに、悪魔も真っ青な残虐戦闘を疲労する幻王配下……。
 それに疲れ切った状態のところへやってきてくれたアニマは、清涼剤のようだ。








「……えっと、アニマ。その、ごめん。つい、気持ちが高ぶって……」
「い、いえ!? ご主人様も、お疲れだったのですし、仕方ありません。じ、自分のことはお気になさらず」

 しばらく無我夢中で抱きしめていたせいか、茹でダコのように赤くなり、口をパクパクと動かしていたアニマに改めて謝罪をした。
 アニマは俺の言葉を聞いて、即座に首を左右にもの凄いスピードで振ったが、顔は赤いままだった。

「……え、えと……そういえば、リリアさんたちも来てるのかな?」
「……いえ、ここへは自分ひとりで来ました」
「そうなの?」
「はい。リリア殿たちは、現在まだスタンプを十個集めている最中です」

 ふむ、どうやらリリアさんたちはまだスタンプを集め終えていないらしい。

「ご主人様のハミングバードを見て、すぐにこちらに向かおうとしていましたが……リリア殿たちは、戦王五将に挑んでみたそうに見えたので、自分だけ先に向かうことを提案しました」
「ふむ……って、あれ? アニマはよかったの?」
「はい。自分は興味ありません。ご主人様の力になるためにスタンプが十個必要かと思っていましたが、ご主人様のハミングバードを見て、代理であればスタンプは必要ないと判断してこちらに来ました」

 なんだ、こんなところにも天使が居たのか……アニマの気持ちが、本当に嬉しい。

「そっか、ありがとう」
「い、いえ、ご主人様の従者として当然のことです! ああ、それと、イータとシータもこちらに向かおうとしていたんですが……彼女達はバッカス殿の元部下。話したいこともあるだろうと思い、自分の判断で残るように命じましたが……」
「うん。俺もそれでいいと思うよ」

 なんというか、まぁ、すっかり従士長ってポジションが板についてるみたいで、なんだか微笑ましい。
 手を伸ばしてアニマの手触りのいい髪を撫でると、アニマは心地よさそうに目を細める。

 そのまま少しの間アニマを撫でてから手を戻すと、アニマは一度頷いてから改めて口を開く。

「……それで、これからどうしますか? リリア殿たちが来るまでは、まだ時間がかかると思います。先に二つ目の闘技場へ挑戦しますか?」
「あ、いや、実はもうそれはクリアになったんだ」
「そ、そうなのですか!? こ、こんな短時間で伯爵級を二体も……流石、ご主人様!」
「い、いや、俺がやったわけじゃないんだけどね……」

 キラキラと純粋な尊敬の眼差しを向けてくるアニマにいたたまれなくなり、俺はかいつまんでここまでの出来事を説明した。
 そして、これからどうするかという話題に戻る。

「……う~ん。リリアさんたちを急かせるのも嫌だし、せっかくアニマが来てくれたんだから、先に次の闘技場に向かってみようか?」
「はい! 大丈夫です! 自分が、ご主人様の代理としてしかと勝利を掴みとってみせます!」
「う、うん。期待してる。まぁ、折角だし道中に出店でも眺めながら行こう」

 ビシッと敬礼をしながら告げるアニマの愛らしさに再び癒されつつ、ガイドブックで次の闘技場の位置を確認して移動する。
 リリアさん達には、アニマと一緒に順に闘技場を回っている旨をハミングバードで送っておいたので、そちらも問題無いだろう。

 というか、ぶっちゃけ俺は出店を見たい。せっかくのお祭りなので、ずっとバイオレンスな光景ばかりだったから、ちょっと次の闘技場までの道中はのんびりしよう。

「……そういえば、アニマ。リリアさんたちがスタンプを集めているのって、やっぱり戦闘とかだったの?」
「いえ、いろいろ種類はありましたが……スポーツが多かったように思えます。自分はあまり詳しくありませんが、『スカッシュ』なる球技や『ボウリング』というものがありました」
「……なにそれ、凄く楽しそう……」

 おかしいな? 俺がここまで体験したのとは打って変わって爽やかな感じなんだけど、俺もそっちが良かった!?
 い、いや、まだ慌てる必要はない。まだ六王祭は始まったばかりだし……これから回ればいいんだ。

「アニマ」
「はっ!」
「ここから、次の闘技場まで……俺とデートしよう」
「はっ! ……はぇ?」
「よし、じゃあ行こう!」
「ご、ごご、ご主人様!? な、なにを、でで、デートって……あわわ、ま、待ってください!?」

 次の闘技場までは結構距離もあるし、その間の出店やスタンプの手に入る施設で遊んでいこう。
 せっかくここにこんなに可愛いアニマが居るんだし、ただ歩いて闘技場に向かうだけだともったいない。

 ここまでの反動か、俺は若干テンションが高くなっているのを実感しながら、慌てふためいているアニマの手を引いて並ぶ出店に向かって歩きだした。

 拝啓、母さん、父さん――バイオレンスな展開が連続した中に、現れた清涼剤……もといアニマ。お陰で気が凄く楽になった俺は、アニマと一緒にデートに繰り出すことにした。うん、戦王五将に挑むのはもう確定事項として諦めるけど、せっかくの祭りなんだし――楽しまなければ損だ。



私は言いましたね。六王祭は七連続デートだと……という訳で、初日のデート相手はアニマです。

登場当初はヤンデレ風?だったはずなのに、いつの間にか忠犬(熊)キャラが板についてきてます。
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