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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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妙にソワソワしてる気がする



 エデンさんが去った後、ある程度離れたところで俺とノインさんは立ち止まる。

「あっ、そういえば……エデンさんの力で俺達はここに来ましたけど、リリアさん達に戦いが終わったことを伝えないと……」
「ああ、それなら大丈夫っすよ」

 ふと思いついた俺の呟き答えたのは、ノインさんではなくアリスだった。

「あちらには分体アリスちゃん44号・幻王バージョンが居ますので、そちらから伝えておきます」
「そ、そうか、ありがとう」
「はいはい、ではまた御用があればなんなりと~」

 リリアさん達への情報伝達は大丈夫と告げ、アリスは再び姿を消す。
 なんだかんだで状況を理解して動いてくれているので、本当にアリスは頼りになる。

 そしてアリスが消えると、ノインさんがキョロキョロと周囲を見渡し始める。
 それからノインさんは、流れるような動きで地面に膝と三つ指をつき……土下座をした。

「……カイトさん、このたびはご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした!」
「へ? あ、えと……」
「己の弱さを棚に上げて、カイトさんには多大なご迷惑をおかけしました。このお詫びは必ず!」
「い、いえ!? お詫びなんて結構ですから、頭を上げてください!」
「し、しかし……」

 どうやらノインさんは俺と敵対したことを非常に気にしているらしく、それはもう地面に擦りつけるように頭を下げ続けている。
 俺としてはそのことはまったく気にしていないので、なんとかノインさんに頭を上げてもらおうとして話しかけるが、ノインさんはなかなか頭を上げてくれない。

 このまま土下座され続けるのは、なんというか気まずいし……お詫びなんてしてもらうつもりもないのだが……。

「と、とにかく俺は気にしてませんので!」
「……はい」

 何度か言葉を重ねると、ノインさんはしぶしぶ頭を上げるが、まだ気にしているのか浮かない表情のまま。
 う、う~ん。空気が重い……な、なにかいい話題はないのか? この空気を変えられるような……。

「……そ、そういえば!」
「はい?」
「ここが勇者の丘ってことは、近くに『友好都市』があるんですよね! せ、折角近くに来てるんですし……時間つぶしで、一緒に遊びに行ったりとか……」
「なぁっ!?」

 苦し紛れに提案した気晴らしだったが……ノインさんの反応は、俺の予想とは大きく違っていた。
 ノインさんは俺の言葉を聞いた瞬間、世界が終わったとでもいうほど絶望的な表情を浮かべ、大量の汗を流しながら震える声で呟いた。

「……か、カイトさん……そ、そこまで怒って……」
「……へ?」
「ほ、本当に申し訳ありません! な、なんでもします! だから、それだけは……」
「え? えぇ!?」

 何故か再び、先程より凄まじい勢いで頭を下げるノインさん。え? なんで? 俺、なにか変なこと言った?
 そんな戸惑う俺に、どこからともなくアリスの声が聞こえてくる。

「……流石カイトさん、ヒカリさんが『この世で一番訪れたくない場所』に連れて行こうとするとは、羞恥心に絶大なダメージを与える罰ですね」
「う、うん? ど、どういうこと?」
「え? いや、だって、友好都市ヒカリには、ヒカリさんの像とか山ほどありますし……」
「……」

 あぁぁぁ!? しまった!? そ、そうか……友好都市って、要するに街全体で初代勇者を称えているような場所ってことか……。
 言ってみれば、初代勇者を崇める教団の総本山みたいなところなわけで、ノインさんとしては絶対に近付きたくない場所というわけだ。

 そして、俺はそんなことをまったく知らず、責任を感じているノインさんを誘ってしまった。
 それはつまり、ノインさんにとって先程の俺の言葉は……『罰として最大級の羞恥を味合わせてやる。拒否権なんて無いぞ』……とか、そんな風に聞こえてたんだろう。

「ち、違います! ノインさん、俺は決してそんなつもりで言ったんじゃ……か、顔を上げてください! 大丈夫ですから!」
「で、でも、カイトさんは私に怒って……」
「怒ってないです! ホントですから!?」
「でしたら、やはり、なにかお詫びを……」
「話繋がって無くないですか!?」
「や、やはり怒って……」
「いやいや、ですから怒ってないです!」
「では、お詫びを……」
「なにこの無限ループ!?」

 ……駄目だ。一度マイナス方向に思考が傾くと、この人とことん頑固だ。俺がうっかり迂闊なことを言ってしまったのも原因だけど、どうやらノインさんの中では……俺がお詫びを断る=怒っているという図式が完成してしまったらしい。
 こうなるともう、なにかお詫びしてもらうまで延々と続きそうな気がするし……適当になにかして貰った方がいいんだろうか?

「……え、えっと、じゃあ……」

 とりあえずなにか無難なお詫びをと思い、俺は少し考えてから頭を下げているノインさんに近付き小声でそれを伝える。
 この内容なら、ノインさんにもさほど負担をかけることもないだろうし、俺もありがたいから……割と即興にしてはいいお願いなんではないだろうか?

 しかし、ノインさんの反応は……またも、俺の予想とは違っていた。

「……ふぇ? そ、そそ、それは、もしや……あ、あぁ……き、聞いたことがあります……い、隠語ですね……」
「えっと……ノインさん?」

 ノインさんは何故か真っ赤になった顔を上げ、俺をジッと見つめた後で悩むような表情を浮かべる。え? なにこの反応?
 そしてノインさんは顎に手を当て、顔を俯かせながら小声でブツブツと呟き始める。

「……こ、婚前交際は……し、しかし、私がなんでもすると言ったわけですし……あぁ、でも嫁入り前なのに、そんな……いえ、しかし前言を撤回するわけには……で、でも、恥ずかし……けれども……」
「……ノインさん? ノインさん!」
「ひゃいっ!?」
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、だだ、だいじょうびますです!?」

 ……え? なんだって?

「……え、えと、無理にとは言いませんよ? 嫌なようなら、別のお願いを考えますので……」
「い、いえ! か、構いません! 浅学浅慮の身ではありますが、全身全霊、粉骨砕身、『この身を持って償い』をしますので! そのお詫びで構いません!」

 ……おかしい。やっぱり、なんかおかしい。
 なんでそんな死地に赴くみたいな覚悟を決めてるの?
 俺いま……『今度遊びに行くので、なにか美味しいものでも食べさせてください』って言っただけなんだけど……。
 う、う~ん。ノインさんのことだから、気合い入れて豪華な料理を作ってくれるって意味なのかな? 別にそこまでしてもらう必要は……。

「あ、いや、別にそこまで気負わなくても大丈夫ですよ?」
「い、いえ! とても重要なことですし、しっかりと準備しておきます!」
「そ、そうですか……」
「あ、ふ、風呂も用意しておいた方がいいですかね?」
「え? そこまでしていただかなくてもいいんですが……ノインさんが、構わないのなら」

 なんと食事だけでなくお風呂も用意してくれるとか、そこまで気を使ってくれなくてもいいんだけど……ノインさんの家のお風呂って、もしかして檜風呂的なやつかな? だとしたらはいってみたい気もする。

「……そ、その……カイトさんは……着物と浴衣、ど、どちらがお好きでしょうか?」
「……え、えっと、浴衣ですかね?」

 正直着物と浴衣の違いって、俺にはよく分からないんだけど……というか何故そんなことを聞くのやら?

 拝啓、母さん、父さん――ノインさんに今回の件のお詫びに、手料理をご馳走して貰うことを約束した。けど、気のせいかな? なんだか、ノインさんの反応が――妙にソワソワしてる気がする。



シリアス先輩「くそぅ……『???』め……また私を閉じ込めて……ふふ、でもちゃんと脱出した! さあ、ついに待ちに待ったシリアスが!! ……え? 終わり? え? な、なんで……ほ、本当に終わり? あ、ぁぁ……」
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