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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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『友の願い、勇者の目覚め』



 戦いの場に現れた人界最強と呼ばれるラグナ陛下。彼女は先程「荒っぽい」と口にしていたが、それとは裏腹にひどく優しい声でノインさんに話しかける。

「……なぁ、ヒカリよ。ワシもそうじゃが……お前も、歳をとったのぅ。見た目ではなく、心がじゃ……」
「どういう、ことですか?」
「いや、なに『お前らしくない』と、そう思っておるだけじゃ」
「私らしくない? それは、いったい……」

 まるで母が子に語りかけるような、どこか温かくすらある声で、ラグナ陛下はノインさんを諭し始める。
 この会話はたぶん、かつて一緒に旅をして、苦楽を共にしてきたラグナ陛下だからこそ、いまのノインさんにもしっかり声が届いているんだと思う。
 だからノインさんも、まだ動揺は消えていないが真剣な表情でラグナ陛下の言葉に耳を傾けている。

 ゼスクさん達もこの会話を邪魔するつもりはないのか、口を挟んだりはしなかった。

「……先程、その若者が言った言葉……ワシはなぁ、以前それと同じ言葉を聞いたことがある。お前は、忘れてしもうたのか?」
「え? ……あっ」
「そう、かつて魔王を打倒した後……『世界の溝は大きい、いつか時間が解決してくれるのを待とう』と止めるワシらの制止を振り切り、ただ一人世界を変えようとした者がいた」
「……」
「『時間が経てば経つほど、変え辛くなるでしょう。いま、挑まなければ……きっといつかなんて、ずっとこない。だから、頑張ってみます』……そう告げて歩んでゆく背中に、ワシは憧れすら抱いた。未来への希望を見た……そう、お前のことじゃ、ヒカリ」

 そこまで告げた後、ラグナ陛下はグッと手を握りしめ、少し沈黙した後でノインさんの顔を強い目で見つめる。

「……いつまで……燻っておるんじゃ、お前は、そうではないじゃろう……戻ってこい!」
「……ラグナ」
「世にどれほどの英傑が生まれようと、どれだけ時代が変わろうと……ワシにとって『勇者』とは、未来永劫ただ一人! だから、目を覚ませクジョウ・ヒカリ!」
「……」

 強い願いの籠ったラグナ陛下の叫び、それを聞いたノインさんはゆっくりと目を閉じた。
 そのまま数秒……一切の音が消えた静寂の中で目を閉じていたノインさんは、ゆっくりとその瞳を開き、ラグナさんではなく俺の方に顔を向ける。

「……騙されないでください! カイトさん!」
「へ? だ、騙される? なにに?」
「ゼクス様の結界は確かに強力です。ですが……『シャローヴァナル様の祝福』を受けている貴方を止めることはできません!」
「ノイン殿!?」
「ゼクス様がこの場所に姿を現していること自体がミスリード……本当は、初めから一点突破……貴方が結界の壁に到達すれば、この結界を破ることができるんです!」

 ……そうか、言われてみればその通りだ。
 この結界がゼクスさんを倒さないと破れないのなら、ゼクスさんは身を隠して他の面々に任せた方が有利のはず。しかし、ゼクスさんは倒される危険があるにもかかわらず、俺やシアさんの前に現れた。

 それは、ノインさんの言う通り『自分を倒さなければ突破できない』とそう思わせるためのミスリード……ゼクスさんが本当の意味で警戒していたのは、俺が一直線に結界の外を目指すことだったんだ。
 その証拠にノインさんの発言に、ゼクスさんは珍しく慌てた声を出した。

 なんでそれを俺に教えてくれたのか、なんて問う必要はない。ノインさんはその発言の後ですぐ、俺達の方に駆け寄ってきて身を翻した。
 そして体を纏っていた漆黒の甲冑を消しながら、強い決意の籠った声で呟く。

「……ありがとうございました。カイトさん、ラグナ……お陰で、ようやく、目が覚めました」
「……ノインさん」

 黒い霧がノインさんの体を包むと、ノインさんは袴と着物……大正時代の女性みたいな格好に変わる。
 そして長く美しい黒髪を首の後ろで纏めて握り、一切の迷いなく手に持った日本刀で長い髪を切り落とした。

「ふふふ、なんとも懐かしい姿じゃのぅ……ほれ」
「ありがとうございます」

 髪が短くなったノインさんを見て、ラグナ陛下は笑いながら白く細長い布を差し出す。
 それを受け取ったノインさんは……その布を鉢巻きにして額にくくる。

「……カイトさん、いままでの非礼を詫びます。そしてどうか、私も連れて行ってください。私はもう一度、フィーアと対峙しないといけない。私も彼女を助けたい!」
「はい。むしろこちらからお願いします」

 フィーア先生を救いたい。それは間違いなくノインさんの根底にあった願いで、ずっと彼女の心で燻り続けていたものなんだろう。
 ラグナ陛下のお陰でノインさんの迷いは晴れ、こうして味方になってくれた。

 それで後は、フィーア先生と対峙するだけ……となれば、よかったんだけど……。

「う~む。成程……ノイン殿はそちらにつきますか、いえ、仕方の無いことですな」
「……ゼクス様、申し訳ありません。ですが、まだ続けるつもりですか?」
「ええ、まぁ……そうですなぁ、折角ですし……もうしばし、足掻かせてもらいましょう」

 そう、まだゼクスさんは戦いを継続するつもりのようで、スッと五体の伯爵級高位魔族の前に出てくる。
 先程までは後方に居たが、どうやら俺達の一点突破を食い止めるため……ここからはゼクスさんも直接戦いに参加するみたいだ。

 ノインさんとラグナ陛下が加わり、圧倒的にこちらが有利ではある。だが、気は抜けない。少なくともゼクスさんの闘志はまったく衰えてはいない。

「……ノインさん、これを、世界樹の実の……」
「あぁ、大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「え? でも、ノインさんあちこちに怪我を……」

 一先ずリリアさんと戦って疲弊しているノインさんを回復しようと、リリアさんに渡したのと同じドリンクを取り出すが、ノインさんは首を横に振って必要ないと告げる。

「……ええ、確かに私は疲労しています。ダメージもあちこちに負っています……もしかしたら、満身創痍なのかもしれません。ですが……私の心は、いま、活力に満ちています! そう、かつてのように……」
「え、えと……なぁっ!?」

 根性論のような台詞に戸惑っていると、ノインさんの体からいままでの数倍近い魔力が溢れだした。
 な、なんだこれ!? なんか、ノインさん……弱るどころか強そうになってるんだけど!?

「……ヒカリは昔から、不屈の化け物みたいなやつじゃ、むしろ劣勢になった方が強くなる。心配するだけ無意味じゃ」
「酷い言い方ですね……私は少し、人より『諦めが悪い』だけです」
「『根性で魔力量まで跳ね上がる』怪物が、なにを言っておるのか……」

 と、ともかくノインさんは大丈夫らしい。

 リリアさん達もスッと俺達の横に立ち、ゼクスさんの軍勢と睨み合う。
 目標は一点突破……小細工なしのぶつかり合い。自然と俺の体にも力が籠る中……ゼクスさんが急に周囲を見渡し始める。

「……なんと……まさか、このタイミングで? いやはや、やはり……貴方は恐ろしい」

 動揺を隠すこともなく、心底驚愕した様子で俺を見るゼクスさん……その理由は、直後に俺も理解することができた。
 感応魔法がその接近を知らせると共に、俺の前には三つの影が現れる。

「遅くなりました! ご主人様!」
「アニマ! イータ! シータ!」

 それだけではない、さらに二つの影がリリアさんの元に……。

「多少の遅刻は多めに見てくださいね、お嬢様。これでもかなり急いできたのですから……」
「ルナ、ジーク……ええ、文句などありません。よく来てくれました」

 アニマ、イータ、シータ、ルナマリアさん、ジークさん……屋敷から駆け付けてくれた心強い援軍も加わり、戦闘の準備は完全に整った。
 そしてシアさんが皆の前に一歩進んで出て、力強い声でそれを宣言する。

「……伯爵級は私が抑える! 他は全員で道を開き、カイトを結界の壁に到達させろ! いくぞ!!」

 その言葉を合図にして、俺達とゼクスさん達の最終決戦が幕を開けた。









「……タイミングはバッチリっすね。後はまぁ、カイトさんとヒカリさん次第ってところですか……まぁ、これ以上私が動く必要はないでしょうね。後はのんびり観戦させてもらいましょう」



???「おっとここで謎の人物の登場ですよ。いや~影ながらカイトさんとサポートする謎の存在。全く想像がつきませんが、きっと超絶可愛くてプリティで慈愛に満ちたメインヒロイン級の人気キャラなんでしょうね。間違いないです!」
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