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バレンタイン番外編~クロムエイナ&シャローヴァナル~

大変お待たせしました。バレンタイン番外編です。

かなりの数になりますので、活動報告に順番を記載しています。よろしければご確認ください。


【注意】

この番外編は本編終了後を想定していますので、ネタバレを含む部分もありますので、ご注意ください。

早い話がクリスマス番外編と同じ感じです。

時系列はバラバラです。



 バレンタイン……過去の勇者役より伝わったこの行事は、瞬く間に広まった。

 異世界とこの世界では時間の流れが違う事もあり、伝わった元である異世界では七百年ほどの歴史だが、この世界では既に千年近く続く伝統用事と、既に元の世界の歴史を越えていた。

 尤も、過去の勇者役から伝わったのは概要のみであり、元となった人物を知る者はいない。


 一夫多妻が常識であるこの世界においては、バレンタインに貰えるチョコレートの数は、男性にとって一種のステータス。多くの愛を集める者が、より優れた存在である。


「っと言うわけで、バレンタイン大作戦を決行するよ!」

「……おー」

「なんてやる気のない返事……いや? いつも通りかな?」


 黒いロングコートを翻しながら、ビシッとポーズを決めて告げるクロムエイナの言葉を聞き、シャローヴァナルは全くの無表情で応える。

 そう、現在彼女達はチョコレートを作る為に集まって……もとい、クロムエイナが神域に一方的に訪れていた。


「ともかく、バレンタインだからチョコレートを作って、カイトくんにプレゼントするの! イベントは重要だよ、そこをしっかり押さえて、カイトくんのハートをガシッて鷲掴みにしておくんだよ!」

「貴女の腕力で心臓を握ると、快人さんが死ぬと思いますが?」

「いや……比喩だからね」


 シャローヴァナルの天然発言に呆れたような表情を浮かべつつ、クロムエイナは黒いコートを変化させ、可愛らしいエプロンに変える。


「っというわけで、シロ! 一緒にチョコレート作ろう!」

「分かりました。では『食べた者の一番好みの味に変化する』チョコレートを……」

「いやいや、なにまたとんでもない物創造しようとしてるの……シロ、創造禁止……ちゃんと普通に作って」

「料理などしたことがありませんが?」

「大丈夫、大丈夫。ボクがちゃんと教えてあげるからね」


 ニコニコと明るい笑顔を浮かべながら、クロムエイナは空間魔法を発動させ、材料と……なにやら大きな鉄板を取り出す。


「……私の知識が正しければ、基本的なチョコレート作りに鉄板は使用しない筈ですが? これは?」

「え? だってこれないと、ベビーカステラ作れないじゃん」

「なぜ、ベビーカステラにしなければならないのですか?」

「美味しいじゃん!」

「なるほど」


 或いはここに快人が居れば、クロムエイナに対してツッコミを入れていたのかもしれない。しかし、この場に居るのはシャローヴァナルだけ……当然のスルーである。


「まぁ、とにかくボクはチョコベビーカステラ作るって決めてるから、先にシロにチョコレートの作り方を教えるよ」

「わかりました」

「初めは上手くいかないと思うけど、根気よくね~」


 手早く道具を用意しつつ、クロムエイナは明るく笑い、シャローヴァナルにチョコレートの作り方を教える。









 そして……。


「……うわっ、ほぼ全能腹立つ……」

「うん?」

「なんで一発で完璧に作れるの? ボクが作ったのより美味しいんだけど……シロ、料理初めてなんだよね?」

「この程度、レシピを見れば誰でも可能でしょう」

「……殴っていい?」

「なぜ?」


 いくら天然とはいえ、シャローヴァナルはほぼ全能と言って過言ではない神であり、やったことが無くても『やればできる』……やる気のない子供を言い聞かせる言葉ではなく、本当に出来てしまうのだ。

 一度クロムエイナに作り方を聞き、レシピを一目見ただけで熟練の職人以上に仕上げたシャローヴァナルに、クロムエイナは恨めしそうな視線を向けていた。


「……で、でも、シロのチョコレートにはユーモアが足りない!」

「……初めて聞く食材ですね」

「材料の話してるんじゃないからね!? 遊び心が足りないんだよ」

「ふむ」

「もっとこう、材料に工夫したり……個性を出していかないと!」

「なるほど、わかりました」


 もっと面白みのあるチョコをと言うクロムエイナの言葉に頷いた後、シャローヴァナルは完成していたチョコを砕き……湯煎しながら、様々な食材を手当たりしだいに入れ始めた。

 山のようなドライフルーツを入れたかと思えば、次は様々な調味料を投入し始めた。


「ちょっ、し、シロ!? なにしてんの?」

「個性を出しています」

「いやいや、もの凄く適当に食材放り込んでるだけだからね……って、あれ? フルーツとか、固形物が見当たらないんだけど……」

「全て溶かしました」

「……そ、そう……」

「……改めて、完成です」

「凄いよ。色と形だけはまともに見える」


 材料は適当でも、無駄にハイスペックなシャローヴァナルは、瞬く間にチョコレートを成型し……時を操って、即座に固めて完成させてしまった。

 それなりに数を作ったみたいで、クロムエイナの評価を聞こうと、その内の一つを差し出す。


 チョコレートを受け取ったクロムエイナは、何度かチョコレートとシャローヴァナルを交互に見た後、恐る恐る口に運ぶ。


「……っ!? な、なにこれ……色々な味が複雑に絡み合ってて、二度と再現できなさそうな味で……美味しい」

「ふむ、ではこれを快人さんに贈ります」

「……ねぇ、シロ?」

「なんですか?」

「やっぱり、一発殴って良い?」

「……貴女も同じものを作ったらよいのでは?」

「……出来ると思うの?」

「できないのですか?」

「……よし、やっぱ殴る!!」

「駄目です」


 まるでなにをやっても上手くいくことが約束されているかのような、そんなシャローヴァナルを見て……クロムエイナは静かに拳を握った。

 この後、神域にて天地を揺るがす喧嘩が起ったのは言うまでもない。





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