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冥王愛好会という組織があるらしい



 メギドさんがクロに連れ去られた後、改めてアリスと芸術広場を見て回る事になったが、本当に広くどこに行けばいいのかよく分からない。


「……人形劇って言っても、数がありそうだけど、なに見よう?」

「えっと、ちょっと待ってくださいね」

「うん?」


 相談してみると、アリスはちょっと待ってくれと告げ、パチンを指を弾く。

 すると少し離れた場所で絵を描いていた画家が近付いて来て、どこからともなく取り出した紙の束をアリスに手渡す。


「本日の演目。確定しているものと、過去の傾向からの想定です」

「ほい、確かに。じゃ、戻っていいっすよ」

「失礼致します」


 アリスに深々と頭を下げてから、元居た位置に戻り、何事も無かったかのように絵を描き始める画家……これは、つまりアレだろう。あの画家もアリスの配下って事か……


「配下?」

「ええ、この広場だけでも『18人』くらいは居ますので……」

「さ、流石……」


 本当に比喩じゃなくて、コイツの配下はどこにでもいる。うん、幻王ノーフェイスが恐れられている理由がよく分かる。

 ともあれこれで、どこでどんな演目をやっているのかが分かり、それを参考にしながら人形劇を見に行く事にした。








 芸術広場で行われていた人形劇は、短めの作品が多い為か、どれもシンプルなストーリーではあったが、魔法によって動く人形。所々に見える魔法演出もあり、見慣れていない俺にはとても新鮮で、気付けば時間を忘れて楽しんでいた。


 そして時刻が昼になり、そろそろメインの一つであるランチを食べる事にする。

 当初の予定では、普段行く通りの店に行く予定だったが……折角あまり来ることの無かった地区に居る訳だし、こちらで食事をしようと提案し、アリスも了承してくれた。


 後はアリスの要望通り、豪華なランチになるように、手元に一冊の本を取り出して店を探す事にする。


「……うん? カイトさん、それってもしかして、クロさんの『まるごと食べ歩きガイド~シンフォニア王都編~』ですか?」

「……そのタイトルは初耳だけど、確かにこれはクロから貰ったものだよ」


 現在俺の手にある英和辞典位の大きさの本は、アリスの言葉通りクロから貰ったものだ。

 今回のデート……正確には数日前のデートで行く店に関して、俺は食べ歩きが趣味と言っていたクロに相談をした。

 するとクロは物凄く乗り気で応じてくれ、こうして王都の飲食店について書かれた本をくれたわけだ。


「なんか、これと同じサイズの本を100冊ぐらいくれたんだけど……やっぱり全部、クロが書いてる本だったのか……」

「ええ、クロさんが趣味で書いてる本ですね。カイトさんもご存じとは思いますけど、クロさんは食べ歩きが趣味でして……時々気に入った店を纏めて本にしてます」

「……有名な本だったりするの?」

「う~ん。有名ではありますけど……実物を見た事がある人は、殆どいないんじゃないですかね?」

「そうなの?」


 ちなみにこの本には、王都中の飲食店一つ一つに対し、クロからの評価と感想が書かれており、挿絵まで入っているというこだわりの一冊だ。

 ただ、まぁ、趣味の延長らしく……かなり主観が入ってるみたいで「デザートにプリンが食べたい」とか、そんな感想も書かれていたりする。


 ちなみに評価はどこかで聞きかじったのか、某有名ガイドみたいに星の数で評価している。尤も星十とかそんなのもあるので、完全に同じという訳ではないみたいだが……

 尚、以前クロと一緒に行ったレッドベアーサンドの店に関しては……「大好きな人と一緒だったから、最高に美味しかった」と赤面ものの感想も書かれていたので、この本を読んでいた時の俺は、きっとニヤニヤ気持ち悪い顔をしていたと思う。


 そしてアリスもこの本の存在を知っているという事は、有名な本なのかと思ったが、どうもアリスは妙な言い回しを返してきた。


「ええ、クロさん曰く、それはあくまで趣味の延長ってことで……その本は身内。要するに、クロさんが家族と呼ぶ相手に配っているだけで、発売はしてません。本の扱いは個人の自由なので、ごく稀にオークションに出たりしますが……大抵とんでもない金額で競り落とされます」

「……マジで?」

「はい。全てクロさんの直筆なので、特に『冥王愛好会』のメンバーにとっては、全財産をはたいても欲しい品でしょうね」

「……ちょっと待て、今サラッと変な単語が聞こえた気がするんだけど……冥王愛好会?」


 ごく自然な流れの中で、大変業の深そうな名前が聞こえてきた。主になんか、どこぞの狂信者が所属してそうな組織の名前が……


「クロさんのファンクラブみたいな感じですね。かなり大規模で、その情報力や発言力は一国を上回ると言われています……まぁ、うちの軍勢の縮小版みたいな感じですかね? 取り扱ってる情報はクロさんのものだけですが……」

「ふぁ、ファンクラブとかあるんだ……」

「ええ、クロさんは世界中でも屈指の人気者ですからね。魔族、人族問わず、相当数の信者がいますよ」

「……」

「……ちなみにクロさんに気安く近付いたら、その組織に消されるとすら噂されてます」

「なにそれ、怖い」


 一国を上回る力を持つ裏組織。それがクロのファンクラブとは……成程、ルナマリアさんがやたら情報通なのは、そこから情報を得ていたからか……

 てか、それ、ヤバくない? 俺、敵視されてたりするんじゃない?


「ああ、それは大丈夫です。カイトさんは『冥王愛好会の名誉会長扱い』なので……」

「ちょっと待って!? なんで、俺の知らない所で、勝手に祀り上げられてるの!?」

「それは、いくつか理由はありますけど……一番大きいのは、クロさんがあちこちで『カイトくんが大好き』って公言してるからだと思います」

「クロォォォォ!?」


 なにやってんの!? え? なんで、そんな意図しないところで羞恥プレイ!? い、いや、大好きと言われて嬉しいのは嬉しいけど、それ以上に恥ずかしいわ!!


「あと、そのファンクラブを世界屈指の組織に押し上げた『会長』が、カイトさんの信奉者なので、それも大きいですね」

「おかしいよね? なんでクロのファンクラブの会長が、俺を信奉してるわけ?」

「……会長は『世界で二番目にカイト様を優先する』って公言してます」

「……背中に嫌な汗が流れてきたんだけど……まさか、その会長って……」

「アインさんです」

「やっぱりかあぁぁぁぁ!!」


 本当になにやってんだあの主従!? 後、冥王愛好会の会長がアインさん? もう、なんでその組織が世界最大規模なのか、理不尽なほどに理解してしまった。

 いや、本当に、なんで、俺本人が預かり知らぬ所でとんでもない事になってるんだ……もう、本当に、どうしてこうなった?


 拝啓、母さん、父さん――クロに貰ったガイドブック。そこから判明した驚愕の事実。いや、信者がいるのは知ってたけど、まさか組織だって動いているとは……うん。なんか――冥王愛好会という組織があるらしい。



 


クロの居ない所で、クロといちゃつくという謎技術。


感想返信は仕事から帰った後で。

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