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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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また神界に勧誘されたよ



 さて、今の心境をどう例えたものだろうか……目の前にいるのは甲羅に手足を引っ込めた亀か、はたまた全身の毛をトゲのようにして威嚇するハリネズミか……ハッキリしているのは、現状こちらに心を開く気はないと言う事。
 考えろ、考えるんだ! フェイトさんの性格上、頭ごなしに働けと言っても聞いてくれる訳が無い。理想は自発的に仕事をしようと思わせる事だが、やはり難易度は高そうだ。
 かと言ってなにも話しかけないと解決の糸口も掴めない。まずはそっと、刺激しないように……

「……フェイトさん、大丈夫ですか?」
「う、うぅ……カイちゃん……」

 出来るだけ優しく呼びかけると、布団の隙間から涙目のフェイトさんがチラリとこちらを見る。
 まだ警戒心はMAXと言っても良い、ファーストミッションはフェイトさんの顔を布団から出す事だ。

「……カイちゃんは、私をこれ以上拷問しないよね……私、頑張ったよね!」
「え、ええ、フェイトさんは頑張ってると思います」
「だよね! だってもう二日も連続で働いたんだよ! 『過去最長』だよ! もう十分頑張ったよ!」

 過去最高のハードル低っ!? この方は本当にどんだけ働かないのか……ニートになりたいとか言ってたけど、もう十分ニートだと思う。
 い、いや、駄目だ……否定的な事を言ったら即ミッション失敗。ここはぐっと堪えてフェイトさんを持ちあげるんだ。

「そうですね。フェイトさん、頑張ってましたよね……俺は仕事の様子を見る事は出来ませんでしたけど、街に入る時のフェイトさんはカッコ良かったです!」
「……そ、そう? 私……カッコ良かった?」
「はい。それはもう……普段のフェイトさんも可愛らしくて素敵ですけど、真面目なフェイトさんもまた違った魅力があると思いました」
「そ、そうかなぁ……えへへ……そっかぁ~」

 正直大袈裟に持ち上げすぎたかと思ったが、フェイトさん的には嬉しかったみたいで、フェイトさんがはにかむように笑いながら布団から顔を出す。
 よし! 第一関門突破……なんとか顔を出してくれたし、少し警戒も薄れてきている気がする。
 でも駄目だ。ここで調子に乗って攻めると逆効果、まだ、まだ攻め時では無い……じっくり、こちらの射程に誘いこむ。

「俺は仕事してるフェイトさんも素敵だと思いますけど……フェイトさんとしては、もう働きたくないんですよね?」
「うん。もうやだぁ~私はゴロゴロしてたいよ。仕事つまらないし……」
「ですよね。フェイトさんは最高神ですし、どうしても仕事も多くなりますよね……しかも、それが長引いたりするなんて、酷い話ですよね」
「本当にそうだよ! 昨日で終わる予定だったのに!! 私は残業なんて言葉は大っ嫌いだ!」

 ひたすらフェイトさんを肯定して、俺はフェイトさんの味方ですよとアピールしていると、少しずつフェイトさんは俺の話に乗ってきてくれた。良い流れだ……しかし、ここでもうひと押しほしい。
 まずはフェイトさんの気持ちを、仕事しても良いかもしれないな~ぐらいまでは回復させないといけない。
 フェイトさんは他人に殆ど興味が無い感じだったし、議員達やシアさん、ハートさんが困っているとかそんな流れでは気持ちは動かないだろう。

 ならば、どうするか……フェイトさんにとって楽しい事を引き合いに出す!

「ただ、フェイトさん。一つ思い出してほしい事があるんです」
「……なに?」
「フェイトさんは、この仕事が終わったら、俺とデートしてくれるんですよね?」
「う、うん。そうだけど?」

 もうこの際デートは仕方ない。ハッキリ言って餌無しで動いてくれるような方では無いし、交渉材料としてこの程度の譲歩は必要経費だ。

「やっぱり折角デートするんでするんですから、楽しみたいですよね?」
「そりゃ、勿論……」
「でも、俺はちっぽけな人間ですから……きっと気にしちゃうと思うんです」
「……え?」

 あくまでフェイトさんが悪いという方向には持っていかないように気を使いつつ、少し落ち込んだ声で言葉を続ける。

「仕事をしなかった事で、フェイトさんがクロノアさんに怒られたりしたらどうしようって……きっと、俺はデート中そんな事を考えちゃうと思うんです。フェイトさんみたいにしっかり切り替えられればいいんですけど、俺には難しいと思います」
「……カイちゃん」
「だから、ちょっと怖いんです。凄く楽しみにしてた。本当に楽しみにしてたフェイトさんとのデートを、もしかしたら俺は心から楽しめないんじゃないかって……」
「……」

 ウソはいってない。多少大袈裟に言ってはいるが……なんだかんだでフェイトさんと出かけるのは楽しそうだし、楽しみにしていると言うのは本当だ。
 そしてフェイトさんが仕事をしないままだと、それを気にしてしまうだろうと言うのも事実。

「か、カイちゃんは……私とのデート、そんなに楽しみにしてくれてたの?」

 少し大袈裟に苦悩する様子を見せながら告げると、フェイトさんはゆっくりと布団から上半身を出す。
 きたっ!? 好機!! ここが攻め所だ! 一気に畳みかける!

「はい……実は、デートでフェイトさんに渡そうと『プレゼント』まで用意してたんです」
「プレゼント!? カイちゃんが、私に!?」

 ……ごめんなさい、これは嘘です。で、でも、フェイトさんが仕事に行った後、ダッシュで買いに行けば嘘じゃなくなるので問題無い。

「はい。俺はフェイトさんと最高のデートをしたいんです。俺もフェイトさんも心から楽しめるような……」
「……う、うぅ……」
「だから、フェイトさん。今日だけは、俺の為に少しだけ頑張ってくれませんか?」
「う、う~ん……ど、どうしようかなぁ……」

 揺れ始めた! 良いぞ、良い流れだ……もうひと押し、後一つなにか決定的なカードが欲しい。
 でも、デートに関してこれ以上盛るのは厳しいし、それ以外でなにか、なにかないか?
 そ、そうだ……

「もし、フェイトさんが仕事で疲れて帰ってきたら……えと、マッサージとかで良ければしますよ?」
「マッサージ!? カイちゃんが、私にボディタッチ!?」
「え、ええ、まぁ……あくまで、マッサージですが……」

 なんか変な方向に変換されてしまっていた気がするが、俺が提案した真面目に仕事をしてくれたらマッサージして労いますよという言葉は、予想以上にフェイトさんに興味を抱かせたらしく、フェイトさんは被っていた布団を跳ねのけて起き上がる。

「……し、しかたないなぁ……将来カイちゃんに養ってもらう為にも、しっかり先行投資しなきゃいけないし……カイちゃんの為なら、まぁ、ちょっとぐらい頑張っても良いかなぁ……」
「あ、ありがとうございます!」
「ふふふ、よ~し、やる気出た! じゃ、ちゃちゃと終わらせてくるね!!」
「あ、はい。いってらっしゃい」

 どうやら無事にフェイトさんのやる気スイッチをONにする事ができたみたいで、フェイトさんは物凄いスピードで部屋から飛び出していった。
 なんか色々大袈裟に盛り過ぎてしまった気がしない訳でもないが……一先ず、ミッションクリアかな?

 っと、そんな事を考えてフェイトさんの去って言った方向を見ていると、不意に後ろから両肩に手が置かれた。

「……え? シアさん? ハートさん?」
「……いくら欲しい? 給料は言い値で払う、待遇も保証する」
「……運命神様を働く気にさせる……なんて稀有で素晴らしい才能。それを埋もれさせてしまう訳にはいきません!」
「は? え?」

 ガッシリと俺の方を掴みながら、シアさんとハートさんは物凄く力の籠った目を向けてくる。
 てか、シアさんに至っては初めて目を合わせてくれたよ。

「……なんなら、運命神様の配下の中でお前が№2でも良い」
「はい! 最高の待遇でお迎えしますので! 是非神界に!!」
「……」

 それは大変切実で悲哀に満ちた嘆願だった……フェイトさん……貴方普段どれだけ配下に仕事押し付けまくってるんですか? シアさんに至っては目が血走ってるんですけど?

 拝啓、母さん、父さん――なんだか前にもこんな事があった気がする。具体的には最高神の一人に同じような事を言われた覚えがある。本当にフェイトさんに関しては皆苦労しているらしく――また神界に勧誘されたよ。



シリアス先輩「要するに口説いただけじゃねぇか!! はよ爆ぜろ!!」
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