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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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十分変わり者なんだと思う



 襲撃による騒動が一段落した後、残念ながらカトレア王女達とのお茶は中止になった。
 それも仕方が無い事だろう。聞けば、勇者役の一行にここまで大胆に仕掛けてきたのは初らしく、警備体制の見直しも含めて調整が必要らしい。

 まぁ、あくまでその理由は建前で、実際の所はカトレア王女が光永君を医者に診せると言って聞かなかったから……光永君は大丈夫だと言っていたが、やはりカトレア王女はリリアさんに似て心配症らしく、念の為に診てもらうべきだと強引に光永君を連れて行ってしまった。
 普段の厳しい言動も含めて、カトレア王女は本当に光永君を大切に想っているみたいで、なんというかその慌てようは微笑ましかった。

 ともあれそれで、今回の件は無事解決……とは残念ながらいかず、俺は現在さらに困った事態に遭遇していた。

「い、いや、ですから……俺は怪我ひとつしてませんから、お、落ち着いて下さい!?」
「……カイトを……虐めた馬鹿……殺す」
「いやいや、だからその襲撃犯はとっくに連行されて……あ、アイシスさん!? とりあえず落ち着いて……」
「……氷漬けにして……粉々にして……肉片一つこの世に……残さない」
「……」

 そう、現在俺の前には額に青筋を浮かべ、完全にぶち切れているアイシスさんの姿があった。
 纏う魔力はとんでもなく、死の魔力も凄まじい猛威を振るっているみたいで、周囲にいた人達は逃げ去り、まるでゴーストタウンみたいになっている。
 いや、まだ最悪アイシスさんだけなら……ここまで悲惨な事にはならなかったかもしれないが……

「駄目だよアイシス、簡単に殺しちゃ……痛みで気絶出来ないようにして、指先から少しずつ『消滅』させよう」
「お前もお落ち着いてくれクロ!? 俺は大丈夫だから!!」
「……流石……クロムエイナ」
「アイシスさん!? なにも流石じゃないですからね!?」

 そう、最悪な事にこの場にはもう一人……クロの姿もあった。
 クロも相当怒っているらしく、体からは黒い霧が噴出しており、放出される魔力の余波で地面に亀裂が入っていっている。

 二人はカトレア王女と光永君が去ってからすぐ、物凄い殺気を纏いながら現れ、襲撃犯はどこだと詰め寄ってきた。
 どうやら六王祭の準備を放り出してきたみたいで、今頃リリウッドさん辺りが頭を抱えてるんじゃないかと思う。

 と、ともかく、それは置いておいて……なんで俺は、必死になって襲撃犯を庇ってるんだろう? いや、理由は分かる……アリスの時点で既にオーバーキル状態なのに、ここにさらにこの二人が加わると、いくら襲撃犯と言えども同情してしまうからだ。
 というかここまで怒っていたら、襲撃犯ごとこの街すら消しかねないので、それは何としても阻止しなければならない。

「……あ、アリス! なんとかならない!?」
「無理です……下手に止めたら、標的が私になるだけなんで……」
「それで済むなら、そうしてくれ」
「私の扱いっ!?」

 いや、だって、アリスならなんだかんだで逃げ切れそうだし……








 結局、クロとアイシスさんをなだめるまで長い時間がかかった。
 本当に、本当に……疲れたが、なんとか二人とも納得して帰ってくれてよかった。

「はぁ……疲れた」
「あはは、お疲れ様です。流石カイトさん」
「……お前、本当に全然手伝わなかったな……」
「いや~無理ですって、あんなに怒ってるクロさんとアイシスさんをなだめるとか、カイトさん以外じゃ無理っすから」
「……はぁ」

 苦笑するアリスの前でもう一度溜息を吐く。いやはや、本当に疲れた。
 まぁ、でも、それだけ心配してくれていたという事だし、それは素直に嬉しいけど……

「ところで、カイトさん」
「うん?」
「私、今回結構活躍したと思うんですよ」
「あ、あぁ、まぁ……最後は手伝わなかったけど、カトレア王女と光永君を守ってくれたのは本当に助かった」

 アリスが突然話を切り替えるように口を開いたので、俺は首を傾げながらも肯定する。
 確かに今回のMVPは間違いなくアリスだろう。カトレア王女と光永君だけでなく、周囲にいた護衛の騎士達も爆発から守り、襲撃犯を素早く捕らえて背後関係まで洗い出して、そちらも対処してくれた。
 もしアリスがいなかったら、カトレア王女と光永君は怪我を……最悪死んでいたかもしれないし、混乱に乗じて襲撃犯も逃げて煙に巻かれていたかもしれない。
 アリスには感謝してもしきれない、本当に彼女が俺の護衛についていてくれてよかった……けど、なぜ突然それを?

「でしょう! 私頑張りましたよ……さて、話は変わるんですが……」
「うん?」
「そろそろ夕食の時間すよね~私もお腹が空いて来ました」
「……」
「頑張った私には、ご褒美があっても良いんじゃないかなぁ~……まぁ、これは独り言なんすけどね」
「……」

 コノヤロウ……いちいち回りくどい言い方をしてるけど、要するにしっかり働いたからご飯奢ってくれって事だろ!?
 しかし、まぁ、確かに今回アリスが活躍したのは事実だし、感謝の気持ちを伝えると言う意味でも、それは悪くない気がする。

「……なにが食べたいんだ?」
「えぇ!? まさか、カイトさん! 奢ってくれるんですか~」
「白々しい!」
「いや~申し訳ないっすねぇ、私は当然の事をしただけなのに……美味しい魚料理を出す高級店があるんですけど!」

 この白々しさ、そしてこのウザさ……安定のアリスである。しかもちゃっかり高級店とか言ってるし、高いもの要求してきてる。

「……はぁ、まあいいや。行くか」
「やった~!! さっすがカイトさん! 部下をしっかり労う理想の上司ですよ! これは惚れますね。今夜はオールナイトOKですよ」
「断固拒否する」
「あまりにも強くハッキリとしたNOの言葉ッ!?」

 ちょっと褒めればすぐ茶化す、そんなどうしようもないアリスを見て再び大きく溜息を吐きながら、薄暗くなってきた道を歩き、アリスの言う高級店に向かう事にした。









「はぐっ、あむっ、むしゃ……あっ、おかわりください!」
「……なぁ、アリス。お前、テーブルマナーって知ってるか?」

 アリスの案内でやってきた店は、確かに高級レストランみたいで、出てくる魚料理もフレンチみたいなお洒落な感じだった。
 そしてそれを、マナーなんて知った事ではないと言いたげに、リスのように頬いっぱいに料理を積め込みながらがっつく馬鹿が一人……一緒のテーブルなのが恥ずかしくなってくる。
 いや、別に俺もテーブルマナーに詳しい訳じゃないが、コイツの食べ方が滅茶苦茶という事だけはハッキリと分かる。

「……カイトさん、マナーなんてのは『甘え』なんすよ」
「……は?」

 しかしそこは安定の馬鹿、訳の分からないドヤ顔でなにか言い始めた。

「美味しく食べる事こそ料理にとっての最大の敬意です! お上品な食べ方なんて、それが好きな方が勝手にやってればいいんすよ」
「……店の人に怒られても知らないぞ?」
「あっ、大丈夫です。ここのオーナー、私の配下なんで」
「……」

 あ、頭が痛くなってきた……もう何度も思った事だけど、こんなのが六王で良いんだろうか?

「すみませ~ん。メニューのここから、ここまで追加で!」
「……」

 しかし馬鹿は気にした様子もなく、まるで居酒屋でつまみでも注文するような感覚で次々料理を注文していく。

「……アリス、お前、遠慮って言葉知ってる?」
「残念ながら私の辞書にはありませんね。他人のお金で食べるご飯は最高に美味しい――ふぎゃっ!?」
「……とりあえず、コレ没収」
「あぁぁ!? 私のムニエルぅぅぅ!?」

 はぁ、本当になんというか……いざという時は頼もしいのに、普段はこんなのだから始末に悪い。まぁ、それもアリスらしさなのかな? 

 拝啓、母さん、父さん――アリスは相変わらず困った奴だけど……少なくとも、こんな馬鹿を相手にしているのに、なんだかんだで楽しいと、気が休まると感じてる俺も――十分変わり者なんだと思う。



シリアス先輩「……アイツ(アリス)キライ……」
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