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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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どんな人なのだろうか?



 ハイドラ王国にて偶然にも再会した今年の勇者役であり、俺と同じ異世界人の光永正義君。
 以前見た時とは明らかに変わったという雰囲気の光永君に驚きつつ、俺はゆっくりと口を開く。

「……本当に久しぶり。元気にしてた?」
「はい! 宮間さんもお元気そうで……噂はよく聞いてますよ」
「う、噂?」
「はい。カティ……あ、いえ、同行しているカトレア王女から色々聞いてます」

 俺の噂を聞いているという光永君……そう言えば確か、勇者役の一行にはシンフォニア王国の第二王女が同行しているらしいし、ライズさんやアマリエさんオーキッドと手紙のやり取りをしていても不思議ではない。
 しかし、ふむ……カトレア王女……カティは愛称かな? アリスの言う通りに、仲は良さそうな感じだ。

「六王様と知り合いになったり、宝樹祭で優勝したりしたとか……」
「あ、あはは……いや、本当にどれもたまたまで……」
「いえ、凄いですよ! 僕はまだ六王様とはあった事が無いので、羨ましいぐらいです。魔界のトップですし、きっと威厳のある……RPGのラスボスみたいな感じなんでしょうね!」
「……」

 その印象が適応されるのは、メギドさんとマグナウェルさんだけだと思う。

「そ、そういえば、光永君は……勇者役の巡礼でこの街に来てるの?」
「え? あ、はい。先日アルクレシア帝国を回り終えて、この街に来ました」
「へぇ、やっぱり演説とかしたりするの?」
「ええ、と言っても、殆ど渡された台本を読んでるだけで、自分で考えて話すのなんて数ヶ所だけですけどね」

 爽やかな笑顔を浮かべて話す光永君は、本当に明るくなったと思う。
 いや、俺は以前の光永君がどうだったかよく知ってる訳ではないが、彼の表情や口振りから今の巡礼が良い経験になっているのだと感じていた。

 そのまま立ち話というのもアレだったので、少し移動して広場のような所で座りながら話の続きをする事にした。

「……葵ちゃんや陽菜ちゃんも、心配してたよ」
「そうですか? 楠先輩は分かるんですけど、陽菜の奴は『正義の馬鹿は一回痛い目見れば良い』とでも言ってたんじゃないですか?」
「……あ、いや、それは……」
「昔っから、アイツは僕の事毛嫌いしてますからね……まぁ、僕も悪いんですが」

 確かにそんな事言ってた。夜会で会った時に調子に乗ってたとも……どうも陽菜ちゃんは、光永君の話題にだけは非常に辛辣な感じがする。

「……二人は、幼馴染なんだっけ?」
「ええ、まぁ、というか……『従妹』です」
「え? えぇ!? そ、そうなの?」
「はい。僕が4月生まれ、陽菜が3月生まれなので、僕の方が少し早く生まれた感じですね」

 なんと、光永君と陽菜ちゃんは従妹らしい。
 あんまり似ている気はしないが、そこは男性と女性だし兄妹ほどは似ないのだろう。

「……まぁ、僕は昔から我儘で身内にだけ態度の大きな、駄目な奴でしたからね。思いっきり嫌われてますよ。しかもアレですよ。よく物語とかである口では嫌いと言いつつも……とかではなく、純粋に嫌いみたいです」
「そ、それは、なんというか……」
「いえ、仕方ない事だと思います。僕自身、昔の自分は嫌いですしね」
「……」

 なんとなくだが、光永君は自分自身で変わろうとして、今の感じになったんじゃないかと思う。
 俺もそうだったように、彼にもこの世界でなにか大きな転機に巡り合った。そんな感じがする。

 そんな事を考えていると、光永君は少し遠い目をして広場を歩く人達を眺めつつ、ゆっくりと穏やかな声で口を開く。

「……僕は、この世界に来た時。自分がまるで物語の主人公になったみたいな気でいました。異世界に召喚された勇者が活躍する話……そういうのが好きで、自分もそうなれたんだって」
「……実は俺も、ライトノベルとか好きで、そう思ってた」
「宮間さんもですか!? いいですよね転移物! まぁ、自分がそうなるなんて思ってませんでしたけど……」
「うん」

 俺も同じ趣味を持っていた事を聞いて、光永君は嬉しそうに笑う。

「そういうのって、勇者がチート能力を持ってるのが多いじゃないですか、だから自分もそうなのかなって」
「そうだね。でも、複数召喚されて勇者に選ばれなかった方がってパターンもあるよね」
「ですね! まぁ、僕はその事を考える冷静さは無かったですけど……」

 そこまで話してから、光永君は微かに顔を伏せ、どこか過去を悔むような表情を浮かべる。

「……本当に僕は馬鹿でした。自分が偉くなった訳でもないのに、なんでも出来る気になって、調子に乗って我儘ばかり……穴があったら入りたい気分です」
「……俺も逆の立場だったらそうなってたかもしれない。丁重に扱われて、増長してたと思う。それに、そう思うって事は、今は違うんでしょ?」

 そう、もし俺が光永君の立場だったとしたら、俺も調子に乗っていたかもしれない。
 自分が物語の主人公になったんだって、偉いんだって考えて、そんな風に振舞っていたかもしれない。

「……僕、実は、あまり叱られた事ってないんですよ。いえ、それどころか『両親と会話』した事も、殆ど無いんです」
「……そうなの?」
「はい。仕事人間だったうちの両親にとって、僕は望んで生んだ存在じゃなくて『生まれてしまった』存在って感じでした」
「……」

 その言葉は淡々としており、光永君が両親を良く思っていないのが伝わってきた。

「育児放棄ってほどじゃないですけど、殆ど僕には無関心でした。誕生日とかもポンとお金渡されて、自分で好きな物買えとか、そんな感じで……褒められた事も怒られた事も、殆ど無かったですね」
「そっか……」
「まぁ、そればかりが原因じゃないですけど、僕自身結構ひねくれてたと自分でも思います」
「そう言うって事は、今は違うって事だよね?」

 それは光永君にとって決して良い思い出では無いのだろう。だけど、少なくともそれを昔話として他人に語れるぐらいには、光永君は成長している。
 それは本当に立派な事だと思うし、簡単な事じゃないとも思う……そして、そんな光永君を変えたのはきっと……

「はい。この世界に来て、調子に乗ってた僕は……カトレア王女に思いっきり叱られました。それはもう、天狗になってた鼻が粉々にへし折られるぐらいきっつく……借り物の権威で何様のつもりだって……」
「……」
「……変な言い方かもしれませんけど、嬉しかったです。あんなにも真っ直ぐ僕の事を見て、本気で叱ってくれる人なんて今までいませんでしたから……」

 光永君は以前の自分の事を我儘だったと表現した。そして今、叱られて嬉しかったとも……もしかしたら光永君は、誰かに自分を見て欲しくて、叱って欲しくて我儘に振舞っていたのかもしれない。
 救われる事を願い続けながらも、自分の殻に閉じこもっていた俺みたいに……

「それから僕は、変わろうとしました……現金ではありますけど、この人に認められたい、失望させたくないって……まだまだ未熟者ですけど、それでも変われたって思うのは、やっぱりカトレア王女のお陰です」
「……成程」

 カトレア王女の事を語る光永君の表情は明るく、本当に大切に思っているというのが伝わってきた。
 っと同時に、俺は以前不可効力ながらある事を聞いてしまったのを思い出して、光永君の方を向いて軽く頭を下げる。

「そう言えば、光永君に謝らないと……」
「え? 謝る?」
「うん、実は前に光永君がどうしてるのかって気になって、知り合いに調べてもらったんだけど……その時、その、光永君がカトレア王女に告白した事を聞いちゃって……本当にごめん!」
「え? えぇ!? そのこと知ってるんですか!? うわっ、恥ずかしい……い、いや、まぁ知られて駄目な事って訳じゃないですけどね」

 俺が謝罪すると、光永君は驚いたような表情を浮かべた後で恥ずかしそうに頭をかく。

「……ちなみに、結果まで知ってます?」
「えっと……告白した後ビンタされたってだけ」
「ぷっ、あはは……なんか他人の口から聞くと情けないですね。まぁ、事実なんですけど……」

 そう、俺は光永君がカトレア王女に告白した事、そしてビンタされた事は知っているが、詳しい結果までは知らない。
 話を聞いただけの時はビンタされたって事は振られちゃったのかとも思ったが、今こうして見る限りそんな感じはしない。

「……あっ、ちなみに告白の返事は保留でした」
「保留?」

 するとそんな俺の疑問を察したのか、光永君が穏やかな微笑みを浮かべて告白の結果を伝えてきた。

「ええ、告白したビンタされたのは本当です。それで『私に依存しようとするのはお止めなさい! 貴方は未だ自分に自信を持ててすらいない! 縋る気持ちの……甘えからくる告白など受けるつもりなどありませんわ!』って言われました」
「……え、えっと……」
「でも、その後で『ですが、貴方の想い自体はとても嬉しい。でも、だからこそ、私が貴方の成長を止める訳にはいきません。だから、まずは貴方自身で頑張ると決めた事、勇者役としての役割を最後までしっかりやり遂げて見せなさい』って言ってくれました」
「それは、好感触って事で、良いのかな?」
「はい……さらに続けて『もし、貴方がそれを最後までやり遂げ、自分にしっかりと自信を持てた上で、それでも想いが変わらなかったのなら……もう一度今の言葉を聞かせてください。その時は、王族という立場を捨ててでも、貴方の隣に立つ事を約束しますわ』って……恥ずかしそうに言ってくれました」

 そう語る光永君はとても嬉しそうで、今もカトレア王女との関係が良好なのが伝わってきた。

「その後でカトレア王女はすぐにシンフォニア国王に伺いの手紙を送ってくれて……シンフォニア国王も、それを了承してくれました」
「そうなんだ……おめでとう」
「ありがとうございます……って、まだ気が早いですけどね。なので、当面の目標は、カトレア王女の隣に立つのに相応しい男になる事です!」

 グッと両手を握りしめ、やる気に満ち溢れた表情を浮かべる光永君。
 その目には、確かな力強さと決意が見て取れ、それが何よりも彼を変えた要因だと理解出来た。

 拝啓、母さん、父さん――再会した光永君は、明るくやる気に満ち溢れた好青年になっていた。光永君に大きな変化をもたらした人物、カトレア王女とは、一体――どんな人なのだろうか?



シリアス先輩「甘く……ない?」

貴重なノンシュガー回。
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