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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした  作者: 灯台


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茶会の話~胃痛なる者⑩~



 若干の浮足立った雰囲気を感じるジム内で、エリスは移動しつつもかなり動揺していた。間もなくこのジムに来るのは竜王マグナウェル……マグナウェルは六王の中でも特にアルクレシア帝国と関わりが強く、アルクレシア帝国貴族であるエリスにとっては絶対失礼があってはならない相手である。


 それこそ叶うことなら会うことなく帰りたいのだが、マグナウェルが来ると知っていて挨拶もなく帰るのは完全に不敬であり選べるはずもない選択肢である。かといってこの場に留まったからといって、エリス側から声をかける……ましてや挨拶をするなど、とても許されない立場の存在ではある。

 ……そう、この場に……世界の特異点さえ存在していなければ……。


(私が単独で遭遇したのであれば、竜王様と言葉を交わすことなどなく、一礼する私の前を竜王様が通り過ぎて終わる話ではあります。ですが、カイト様がいるとなると状況がまったく変わるというか……挨拶をすることを前提に考えておくべきでしょう。万が一にも無礼があってはいけない相手……い、胃が……)


 胃の痛みを感じつつジムの入り口近くに行くと、先に来ていた快人がエリスに気付いて微笑みを浮かべる。


「お待たせして申し訳ありません」

「いえ、気にしないでください。俺もさっき来たところですし……ああ、それで、ナミルさんに聞いたんですが、これからマグナウェルさんが視察に来るみたいなんですけど、どうしますか? 特に約束とかしてるわけでもないですし、帰ります?」


 それは、快人なりの気遣いの言葉ではあった。エリスがマグナウェルと会うと恐縮するだろうと考え、その前に帰ることを提案したという。間違いなく善意と気遣いからの発言ではあった。

 ただ、問題点を挙げるとすれば……マグナウェルが来ると分かっていて、さっさと帰るという選択肢が許されるのは快人だけということである。


(それが許されるのは貴方だけですよ、カイト様!! 私がそれをすると、アルクレシア帝国中の貴族から非難されてしまうのですが!?)


 ともかくマグナウェルがアルクレシア帝国と関りが深く、シンフォニア王国にとってのリリウッドのように、六王の中でも特に重要な相手というのが問題だった。


「いえ、竜王様がいらっしゃると分かっていて帰るのは無礼でしょうし、カイト様の予定が問題ないのであればお待ちしましょう」

「確かにそうですね。じゃあ、マグナウェルさんに軽く挨拶をしてから帰りましょうか」


 マグナウェルがこの場に来るという時点で、エリスは半分諦めているのだが、それでもまだ心には余裕があった。

 というのも、状況的に己は快人の知り合いとして軽く紹介されるのみで、特にマグナウェルと話の接点になるようなものは無いからだ。


 コーネリアの話はエリスも聞いているが、アレはあくまで専用ブラシあってのことであり、六王の中でも極めて王らしい振る舞いを行うマグナウェルが、貴族であるエリスと長々と会話……いわゆる目をかけるような事態になるとは思えない。

 せいぜい快人の恩恵で軽く挨拶を許されて、それで終わりだろうと想定していた。


 ほどなくしてマグナウェルが到着し、ナミルを始めとした竜王配下の面々が深く頭を下げて挨拶をする。


「よい、楽にせよ。今回ワシはニーズベルトに勧められて新しい試みの施設を見に来ただけじゃ。口出しをする気も無ければ、この場の振る舞いを裁定する気もない」


 あくまで見学に来ただけと配下たちに声をかけた後で、マグナウェルは快人の元にやってくる。


「こんにちは、マグナウェルさん」

「うむ、息災なようじゃな、ミヤマカイト。ニーズベルトから体験に来ておるとは聞いておったが、どうじゃったか?」

「俺の知ってるジムと同じような部分もあれば、この世界独自の工夫がされている部分もあってよかったですよ。俺も少し運動不足気味なので、正式にオープンしたら通わせてもらいましょうかね」

「ははは、それはよいな。なにをするにせよ体は資本、鍛えておいて損はないからのぅ……ふむ」


 上機嫌で快人と会話を行った後、マグナウェルはチラリとエリスを見る。エリスの思惑ではここで快人の紹介で軽く挨拶を行って、それで終わり……なのだが、残念ながらそこには大きな誤算があった。

 というのも、コーネリアは確かにそうだった。マグナウェルにとって偶然会った快人の知り合いの貴族の娘程度であり、快人から紹介が無ければ特別関わりを持つことは無かっただろう。


 だが、コーネリアとエリスでは前提が大きく違うのだ。というのも、エリスはコーネリアと違い……快人の誕生日パーティーに参加している。いや、ただ参加しただけではなく、ゲーム大会の初回で決勝に残ったり、運が味方したとはいえクイズでいい成績を残したりと、それなりに目立っていた。


「……見覚えのある顔じゃな。たしか、ミヤマカイトと親しくしておるアルクレシア帝国の貴族じゃったか……」

「ッ!?」


 そう、そのためマグナウェルにとってエリスは、以前誕生日パーティーでもみた快人と特別親しい貴族の娘という認識であり、興味を抱くに値する相手だった。

 さもありなん、快人に貴族の知り合いが増えたのは誕生日パーティー後であり、その時点ではエリスはクリスを除いてアルクレシア帝国貴族で唯一快人と親しい存在であり、アルクレシア帝国と関わりの強いマグナウェルが興味を抱くのも必然と言えた。


「……ふむ。家名も含めて名乗ることを許す」


 それらが導き出す結果として……快人に紹介されるのではなく、マグナウェル自身が興味を抱いた形でエリスを貴族と認識した上で、家名も含めた自己紹介を許可した。

 つまりこれは、自己紹介後にある程度会話も行うという前提かつ、今後の付き合いも考えた上での許可であり……想定外の高評価に、表には出さなかったがエリスの胃は悲鳴を上げていた。




シリアス先輩「ああそっか、言われてみればエリスって誕生日パーティーでそこそこ注目を集めるような活躍もしてたから、快人の知り合いたちにとっては船上パーティ―におけるリリアみたいな感じで、一度話をしてみたいと思っていた相手ってことか……優秀で好成績を収めたことが胃痛に繋がるとは、このシリアスの目をもってしても……」

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― 新着の感想 ―
胃痛から逃れるにはもう開き直るしかないのよ笑
異世界は胃痛でした
最近、胃痛娘達を虐める小説になってる気が……。 良いぞ、もっとやれ
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