茶会の話~胃痛なる者⑦~
ルームランナーで体を温めた後は、ベンチプレスにチャレンジしてみることになった。やったことはないがテレビとかで見たことはある。寝転がった状態でバーベルを持ち上げるやつである。
「では、こちらで順番にベンチプレスを行います。とりあえず、おふたりがどのぐらい上げられるかを確認してみましょう」
「……ちなみにこれ、平均がどのぐらいとかってあるんですか?」
「今回のジムを作りにあたって調査はしましたが、種族差が大きいので人族と一括りにするのは難しいですね。いくつか例を挙げるなら、ドワーフ族は男女ともに力が強く、エルフ族は男女ともに力は弱い傾向にあります。男女間の腕力差に関しても、人間族は男性の方が力が強い傾向にありますが、マーメイド族などは女性の方が力が強いといった感じですね。ちなみに人間族に限定した場合は、女性が30kg前後、男性が50~60kgほどが平均ですね」
「なるほど……」
……俺、平均値上げられるかな? 腕、腕の力はどうだろ? ジョギングとかしてるから足腰はある程度鍛えてるけど、腕力とかは全然……な、なんとか、男のちっぽけな見栄としてエリスさんよりは上でありたいという気持ちもある。
「兄貴もエリス嬢も人間族ですから、傾向で言えば兄貴の方が重いバーベルを上げられるはずなので……最初はエリス嬢から行いましょうか」
「分かりました。こちらに横になればいいんですね?」
「ええ、アタシがサポートするので安心してください。では最初は、平均より少し下の20kgからいってみましょう」
実に真面目なやり取りであり、特におかしな部分はない……無いのだが、俺としては少々目のやり場に困るというか、若干居たたまれない気持ちだった。
エリスさんはベンチプレスを行うにあたって、ジャージの上着を脱いでTシャツ姿で横になった。そりゃもちろん、その方がやりやすいだろうし、俺も自分が上げる時は上着を脱ぐと思う。
だがその、Tシャツ姿で仰向けの形で寝転がると、どうしても女性特有の部分が……なんというか、目線は逸らしているのだが、不意にチラッと視線が向いてしまう。かといって後ろを向いたりしたら、胸に視線を向けて気まずい気持ちになりましたと自白するようなものなので、とりあえず視線はそらしつつできるだけ意識しないようにすることにした。
あと、次にベンチプレスをやるのは俺なのでやり方はちゃんと見ておきたい気持ちはある。
「……これはまったく問題ありませんね」
「上下に上げ下げもできますか? ……大丈夫そうですね。では次は30kg、人間族女性の平均です」
「先ほどよりは、ハッキリ重さは感じますが、まだ大丈夫そうです」
「では、次は40kgにしてみましょうか……アタシが手を添えてるので、落下する心配はありませんから、しっかり力を込めて持ちあげてみましょう」
「はい……ふっ……うっ……」
「いい感じですよ。しっかり上げ下げもできてますし……ただこの分だと、50kgは厳しそうですね。試しに一度やってみましょうか」
「……くっ、うぅぅ……も、持ち上げることはできるのですが……も、申し訳ありません、上げ下げは……」
「いやいや、50kgを持ちあげられるなら平均よりはかなり上だと思いますよ。お疲れさまです、ゆっくり手を解してください……エリス嬢は35kgぐらいでトレーニングするのがよさそうですね」
あのバーベル……魔法で重さを変えてる感じかな? 付け替えたりするわけではなく、ナミルさんが手をかざすと重さが変化している感じだった。
しかし、それはそれとして、エリスさん50kgを上げられるのか……さ、さすがに俺もいけるよね?
「では、次は兄貴も測定しましょう」
「わ、分かりました」
「どうですか? エリス嬢が上げた50kgから試してみますか?」
「じゃあ、50kgからでお願いします」
エリスさんと交代してベンチプレスの測定をすることになり、さっそく50kgにチャレンジすることになった。しっかりバーベルを持って……うん? あっ、コレだいぶ余裕でいけそう。
「……あっ、このぐらいは全然平気ですね」
「確かに上げ下げもスムーズですし、余裕が感じられますね。それだけ余裕そうなら、つぎは70kgを試してみましょうか」
「分かりました」
次は70kg、ここを上げ下げできれば平均は確実に上回れるか……よしっ……うん? これも結構軽い。さっきよりは確かに重さはあるが、全然問題ではないぐらいだ。
「これも結構軽くいけますね」
「おぉ、兄貴結構腕力強いですね。上げ下げもスムーズですし……う~ん、90kg……いってみますか? これを上げられるなら、人間族の男性としては割と力のある方だと思います」
続けて再び20kg上がって90kgだが……いや、これも全然いけるな……あれ? 俺ってもしかして結構力強い? 筋トレとかした覚えは無いけど考えてみれば全長5m越えのベルのブラッシングとかもしてるわけだし、思った以上に鍛えられてたのかもしれない。
「う~ん、兄貴……まだ余裕がありそうな感じですね。ちょっと失礼、一旦バーベルをどけて……アタシの手をバーベルを持ち上げる要領で力いっぱい押してみてもらえます?」
「わ、分かりました……こうですか?」
「おっ、おぉ……え? 兄貴、身体強化魔法は……使ってないですね。あれ? この力なら……『200kg』ぐらいいけそうですよ?」
「え? えぇ、い、いや、流石にそんな馬鹿な……」
ナミルさんの見立てでは俺の腕力は、ベンチプレス200kgを上げられるぐらいらしいが……そんな筋力があったら、俺もっとムキムキじゃないかな?
となるとこれ、違うな……なんか、筋力とかそういうとこじゃない部分で、なんか変な補正かかってる気がする。
シリアス先輩「え? これはいったい……」
???「だって、この人どんだけ祝福山盛りだと思ってるんすか、一個の影響が僅かだとしても全部まとめると基礎身体能力にもブーストかかりまくってたり、特定条件下で補正かかる祝福もあったりするんですよ。身体強化魔法が苦手で倍率が滅茶苦茶低いので、身体強化魔法有りで比較すると周りには劣ってるのでこれまで気付いてなかった感じですね……まぁ、ベンチプレスに関してはたぶんなんか補正かかかってますね。身体強化魔法切った状態で重い物を持とうとすると強い補正が働くとか、そんなのありそうですけど……カイトさんの祝福が多すぎる上に、本人もほぼ自覚してないので私にも全容が全然わからねぇんで面倒な話ですよ……」
シリアス先輩「なるほど……まぁ、私は準備するか……」
???「なんすかその道具?」
シリアス先輩「明日に備えてマキナに作らせた。しょっちゅう私の体をバクバク食べてるんだから、これぐらいは当然の権利だ」




