茶会の話~アイン~
ジュティアさんに続いてアインさんの元を訪れ、茶会についての話をしてみた。もちろん先に、新しい茶葉などを出す場合はアインさんにもプレゼントするとも伝えてある。
「そうですね。クロム様からも話は聞いていましたが、カイト様の想像通りメイドたる私が茶会に参加者として……それも、主たるクロム様と同じ席につくなどというのはありえません」
「ですよね」
「そして、カイト様はおそらく私が給仕側で参加するのを希望するのではと考えているのでしょうが……以前の新築記念パーティのような裏方としてならともかく、主が主催する茶会の給仕となれば、メイドにとっては誇りと栄誉ある大役……まさに花形と語ってもいいほどのポストです。であれば、部外者である私がメイドが輝ける場を奪うという蛮行を犯すつもりはありません」
メイド界では、茶会の給仕は憧れの仕事みたいな感じなのだろうか? よくは分らないが、メイド関連についてはいつもよく分からないので、とりあえずはスルーが安定である。
なんにせよ、アインさんは給仕側としても参加する気は無い様子だった。
「もし仮に、カイト様の家のメイドのメイド力がクロム様に紅茶をお出しできる基準に無いのであれば割って入ったかもしれませんが、イルネスほどに優れたメイドであればまったく問題無いでしょう。それこそ、彼女の腕前でダメなのであれば、私かシャルティアにしか務まりませんしね」
「なるほど……まぁ、なんにせよアインさんは不参加ってことですね」
「ええ、むしろ茶会で出す茶葉をいただけるというカイト様の配慮に感謝しかありません。カイト様が初めて主催する茶会ともなれば、ネピュラ様もそれにふさわしい茶葉を用意するでしょうし、いまから楽しみでもあります」
「その辺はまだ全然考えては無いので、これからって感じではありますけどね」
そんな感じに茶会に関するやりとりを終えた後は、アインさんも特に急ぐ用事もないということでそのまま雑談を続けた。
「そういえば、クロム様が不思議な調味料を持っていましたね」
「ああ、ティアナさんに貰った星の粉生成器で作ったんですね」
「非常に楽しみにしている様子で、ここ数日は決まった時間に新しい調味料を取り出して、楽しそうにベビーカステラで試していましたね」
どうもさっそくベビーカステラの可能性を追い求め始めたらしい……こりゃ、近い内に星の粉使ったベビーカステラ持ってきそうである。
ただあの星の粉って、本当にいろいろな味の調味料ができるみたいで、俺も使ってみたんだけど凄くスパイシーな感じの調味料が出来た。それこそカレーとかにかけると美味しそうな味わいだったので、今度試してみようと思うが……そもそもカレーを食べる機会が……。
シンフォニア王国にはカレーの店はほぼない。ハイドラ王国にはあるみたいなので今度行ってみたいが、調味料の持ち込みは駄目だろうし……アリスに作ってもらうのがいいかもしれない。
「……花束から紅茶を?」
「正確には紅茶ってわけじゃないんでしょうけど、味はそれっぽかったですね。原子変換とかっていう異世界特有の技術を使ってるみたいで、再現は難しそうでした」
「さすがは異世界というべきでしょうか、驚きの品があるのですね。そういえば、異世界の茶といえばシャルティアが以前に不思議な味わいの茶を淹れてくれたことがありましたね」
「不思議な味わいですか?」
「ええ、コクチャだとか、プーアル茶だとか言っていましたね。かなり色の濃い茶で……おそらく発酵のさせ方が違うではないかと思いますね」
「ああ、プーアル茶ですか……俺も飲んだことは無いですが、名前は知ってますね」
中国茶だったかな? 俺は烏龍茶ぐらいしか飲んだことはないが、いろいろ種類があるというのは聞いたことがあるし、そのうちのひとつなのだろう。
アインさんの反応を見る限り、紅茶というジャンルじゃないからか、あくまで珍しい異世界の品って感じの印象みたいで、特にそれが欲しいとかそういうことを考えている感じではなさそうだ。
先程の花束を使った茶も興味深そうにしつつも、欲しがってたりはしていないので……あくまで強い熱意があるのは紅茶に対してっぽい感じである。
「カイト様、お話は大きく変わってしまうのですが……昼食がまだのようでしたら、こちらで召し上がって行きませんか?」
「いいんですか? それじゃあ、せっかくなんでお言葉に甘えましょうかね」
「ご用意するのはカレーで問題ありませんか?」
「あっ、丁度食べたか……え? なんで分かったんですか?」
「相手の望むものを察するのは、メイドとして当然の嗜み……ふむ」
ちょうどさっき食べたいと思ったカレーを用意するというアインさんは、いつも通りのメイド万能論を口にすると思ったのだが、なぜか途中で言葉を止めて考えるような表情を浮かべ……。
「……愛しい相手の欲しいものぐらい、顔を見れば分かるものですよ」
そういって、いらずらっぽい笑みで軽くウィンクをしてから、カレーを用意してくれた。
シリアス先輩「……こいつもかなり好感度高いからなぁ……」




