茶会の話~ジュティア~
エリスさんの茶会に招待されて思い付きから始まった俺主催の茶会に関してだが、なんだかんだで当初想定していた10人ぐらいという人数は集まった。
なのでこのまま本格的に日程とかを考えてもいいのだが、その前にあとふたり……俺の知り合いの中でも、トップクラスの紅茶好きであるアインさんとジュティアさんには声をかけておこうと考えた。
ただ正直、アインさんに関しては参加するとは思えない。アインさんはメイドであることに対して強すぎるほどの拘りを持つ方であり、茶会に招待客として参加する姿が全く想像できない。
給仕の方には参加したがるかもしれないが、招待される側に回ることはまずありえないと断言できるレベルだ。
「へぇぇ、異世界の紅茶……凄いな、凄いな、ボクとっても興味があるんだぜぃ。だけど、だけど、飲める機会は無さそうで悲しいぜぃ」
「味はフルーツティーに近い感じでしたが、花束から作ってたので果たして紅茶と呼んでいいのかは疑問ですけどね」
「異世界ってのは面白いね」
というわけで、最初はジュティアさんに確認をしに来た。急な来訪にも拘らずジュティアさんは快く出迎えてくれて、ジュティアさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら最初は軽い雑談をしていた。
ティアナさんに飲ませてもらった異世界の紅茶に興味津々という様子ではあったが、アレはあくまであの場で俺とティアナさんのふたりだけだったので気軽に飲ませてもらえただけで、実際はシロさんとの契約関係とかがあって難しいのだろう。そして、ジュティアさんもそれを理解しており、興味深そうにしつつも自分が飲むことが出来ないのは納得している様子だった。
「……それで、話は変わるんですが……実は今度俺主催でお茶会をやろうと思ってて……」
「ふむふむ」
とりあえず本題である茶会の話に移り、参加者も含めて詳しく説明をした。とはいっても、まだ具体的な内容が決まっているわけではなく、茶会をするつもりであるということと参加者の詳細を伝えただけだ。
そして俺の話を聞いたジュティアさんは、難しそうな表情で腕を組んだ。
「う~~~ん。カイト主催のお茶会、特別なブレンドの紅茶も出るだろうし、もしかしたら新作も……とっても、とっても興味はあるんだぜぃ。でもでも、でもでも、駄目だぁ……参加者がその面子だと、立場的にリリウッド様を差し置いてボクが参加するわけにはいかないんだぜぃ」
「あ~六王配下のバランス的なのがあるんですかね?」
「クロムエイナ様にシャローヴァナル様、異世界の神々にアルクレシア帝国の皇帝に教主……その状況で、王たるリリウッド様が不参加なのに、界王配下幹部のボクだけ参加ってのは……対外的な問題が無くても、ボク自身の心境としても微妙なところだぜぃ。本当に、本当に、ほんっとうに! 茶会で出る紅茶には興味があるし、もの凄く、もの凄く、ものすご~く悩むんだけど、今回は遠慮しておくぜぃ」
茶会や紅茶には物凄く興味はあるが、クロやシロさんを始めとした各界の頂点と言っていい存在が集まる中に、リリウッドさんを差し置いて参加するのは気が進まないみたいだ。
公的な場ではないにせよ、ジュティアさんの感覚としては複雑なところなのだろう。物凄く未練はあるように感じられるし、不参加を表明したいまも悩んでる感じはあるが……。
「リリウッドさんも招待するって方法もありますが、リリウッドさんは飲食しないので茶会に呼ぶのも逆に失礼な気がしますし……じゃあ、まだ詳細は決まってないんですが茶会で新しい茶葉や特別なブレンドを出したなら、それはジュティアさんにも後日差し上げますよ」
「本当かい!? それは、とってもとっても嬉しいんだけど……いいのかな? いいのかな? ボクってば、いっつもカイトにいろいろ貰ってばかりで、申し訳ないんだぜぃ」
嬉しさと申し訳なさが混ざったような表情を浮かべるジュティアさんは、なんというかやはり非常にまともというか……対比になるアインさんが、新しい茶葉と聞くととりあえず襲来しようとしてクロに叱られてるのを考えると、自制心の高さに感心する。
「気にしないでください。俺もジュティアさんにはいつもよくしてもらってますから」
「そうかな、そうかな? そう言ってくれるなら、お言葉に甘えさせてもらうぜぃ」
「はい。まぁ、まだ新作とかを確実に出すと決まったわけでは無いですけど……出すようなら、必ずジュティアさんに渡せるように確保しておきますので」
アインさんの方もたぶん目当てはそっちになるだろうし、最初に不参加でも茶会で出した紅茶の茶葉などはプレゼントすると前置きしたほうが話が早そうな気がする。
俺がそんな風に考えていると、ジュティアさんは座っていた椅子から立ち上がって俺のすぐ横まで着て、軽く手招きというか……姿勢を低くしてほしいみたいな感じのジェスチャーをしてきたので、軽く身をかがめると……不意にジュティアさんが俺の頭を抱えるように抱きしめてきた。
フワッと広がるように香る森の匂いと、柔らかな感触と少し高めの体温……頭にはジュティアさんの手が置かれ、優しく撫でてくれる。
「本当に、本当に、いつもありがとう。ボクは優しい君が大好きだぜぃ。少しでも、少しでも、感謝の気持ちが伝わるといいな」
森の香りにはリラックス効果があると聞くが、本当になんというかホッとするような……暖かな日差しが差し込む森の中に居るような心地よさを感じつつ、少し驚きつつもしばしその心地よい感触に身を任せていた。
シリアス先輩「こいつ結構積極的に動くよね!? 行動力あるっていうか、快人への好感度が高すぎるせいで、割とホイホイ抱き着いたり抱きしめたりするじゃん! 甘くなりそうな気配が強いから、勘弁してほしいところ……」




