双極神ティアナ㉓
バーベキューを終えた後は、ふたたびティアナさんとふたりで話をしたり、俺の部屋に行ってみたいというティアナさんを部屋に案内したりしつつも、主に雑談をメインに時間を過ごしていった。
ティアナさんが優しい性格で話しやすい相手だったこともあって、会話はかなり弾みそれこそあっと言う間に時間が過ぎていった印象だった。
そして夕方に差し掛かり、あまり長居しても悪いということでティアナさんがそろそろ帰ることになった。その気になればどこからでも帰れるのだろうが、なんとなく最初にティアナさんが来た裏庭のテラス席に移動して見送ることにした。
「快人くん、今日は一日本当にありがとう。おかげで凄く楽しかったよ」
「俺の方こそ、とても楽しかったですし、いろいろ異世界の話も聞けて面白かったです。またお茶会の日程が決まったら連絡しますけど、それ以外でも気が向いたら是非遊びに来てください」
「うん。思わぬところで自由来訪の許可も貰えたから、また遊びにくるよ。出来ればいつか、快人くんも私の世界に招待したいところだけど、快人くんを別の世界に連れて行くってなるといろいろ五月蠅そうだし、その辺はいろいろ調整してからかな」
「確かに許可とか大変そうですけど……でも、興味はあるので行ってみたいって気持ちはありますね」
話を聞く限り、ティアナさんの世界は俺のイメージだとSFチックな……俺の居た世界よりはるかに文明の発展した世界という感じなので、トリニィアとはまた違った異世界感がありそうで、機会があれば行ってみたいという気持ちはある。
そんな俺の言葉を聞いて、ティアナさんは優し気に微笑んだ後……少し間を開けて、静かに口を開く。
「……快人くん、本当にありがとう。今日の事じゃなくて、君に会ったらちゃんと一度お礼を言いたいと思ってたんだ」
「えっと、それはネピュラのことですか?」
「ううん。いや、もちろんそれも大いに関係してるんだけど……もっと根本的な話でもあるかな」
「うん?」
ティアナさんの言葉に俺が首をかしげると、ティアナさんは優しい表情のままでどこかしみじみとした様子で語り始めた。
「きっかけは間違いなくネピュラさんの事ではあるんだよ。ネピュラさんの復活をきっかけに、私は……ううん、私だけじゃなくて多くの世界創造主は君のことを調べて、君がどう生きてきて、なにを得て、どんな思いでシャローヴァナルの試練に臨んだのかを見たんだ」
「ふむ……まぁ、全知の方も大勢いるんでしょうし、知られてても不思議じゃないですね」
「うん。でも、そういうきっかけがない限り、私たちが……なんて言えばいいのかな? なにかを得ようと頑張ってるひとつの生命に注目することって、まず無いんだよね。快人くんの言う通り、私は全知全能の力を持ってる。なんでも出来るしなんでも知ってる……でもだからこそ、なにも出来てなかったし、なにも知らなかったのかもしれないね」
「う、ううん?」
哲学的な話だろうか? ティアナさんの気になる言い回しの意図が分からずに首をかしげていると、ティアナさんは心底楽し気な様子で笑う。
「ふふふ、ややこしい言い方だったね。快人くんの言う通り、私たち世界創造主の中には全知持ちだっていっぱいいるし、未来を見ることができるのだっていくらでもいる。でもだからこそ……未来を変えられるなんて当たり前のことも忘れちゃってたのかもしれないね。未来を変えようと足掻いたりすることも無かったし、求めるもののために、ただ手を伸ばすってことすら出来てなかった」
「……」
「だからこそかな? 悩んで、苦しんで、迷って……決して最高効率で進むわけじゃなくて、足掻きながら自分が欲しいもののために一生懸命に手を伸ばして……たくさんの思いに背を押されながら、それを掴み取る君の姿はどうしようもなく眩しくて、全知で何もかも知りながら、なにも理解してなかったことを教えてくれた……私は未来に向かって歩く君の背に、希望を見たんだ」
それはなんというべきか、例えるなら惜しみない称賛の言葉だった。なにもかも知っていて、なんでもできるからこそ、理解していなかったことを教えてもらえたと……心の底からの感謝の言葉。
「だから、私も含めて多くの世界創造主は快人くんのことが大好きなんだよ。もちろんネピュラさんが復活するきっかけになってくれたことや、どんな形であれシャローヴァナルに勝利したっていう偉業も含めてではあるよ。でも同時に、ネピュラさんやシャローヴァナルの事を抜きにしても、間違いなく快人くんのファンなんだって自信を持って言える……いや、長々と難しく言い過ぎたね。実際は凄くシンプルなんだ……君のおかげで、私はこれから先の未来が凄く楽しみだよ……だから、ありがとうって、それだけの話だよ」
そういってにっこりと微笑むティアナさんの髪が風に揺れ、チリンと綺麗な鈴の音が聞こえた。なんというか、少しくすぐったいという気持ちはあったが……真っ直ぐに告げられるその言葉は……素直に嬉しかった。
シリアス先輩「えっと、つまり、ティアナ編は一区切りってことだよね? となると次は……?」
???「リリアさん、ジークさん、アニマさん、イルネスさん……恋人四人+他のメンバーで行く遊園地ですね」
シリアス先輩「……ちょっと……横になろうかな」




