双極神ティアナ㉒
ネピュラとのんびりバーベキューを楽しんでいると、どうやら喧嘩も終わったらしい。特に揺れたり衝撃があったりはせず、本当に喧嘩していたのかもわからないほどなのだが……結果としては、とりあえず普通に立ってるティアナさんと、地面に膝と両手を突いて項垂れているカナーリスさんとイレクトローネさんという構図になっているのは分った。
『理不尽への思いを出力……《もうやだこのゴリラ強すぎる。圧倒的な強者はなにをやっても許されるっていうの? そんなの理不尽だよ、あんまりだよ》……不正行為がまかり通る現状を悲観する』
「なにが酷いって、完全にワガママ言ってくる困った相手を窘めるみたいに、自分とイレクトローネふたりがかり相手に反撃すらせずに、全部あしらったとこですね。自分のことは嫉妬で簡単にぶん殴ってくるくせに……」
「い、いや、うん。ふたりの気持ちはわかるし、殴り返したりしちゃうのは違うかなって……だからってその、進んで殴られたいわけでもないから防御とか回避はするけど……」
どうもカナーリスさんとイレクトローネさんのふたりがかりの攻勢を、ティアナさんが軽くあしらって終わったらしい感じである。
全知全能級ふたりがかりでもまったく相手にならないぐらいにはティアナさんが強いみたいで、カナーリスさんとイレクトローネさんは悔し気な感じである。
というか、そもそもの原因が俺に肉を食べさせたことではあるのだが……。
「これ、例えば俺が三人に食べさせてあげたりしたら仲直りとかは……」
『「「ッ!?」」』
いや、ティアナさんの行いが不公平だとカナーリスさんとイレクトローネさんが訴えるのであれば、同じようなことをすれば解決するのではないかと思った。
食べさせてもらうのは、意識してやるのは恥ずかしいので俺が食べさせる側ならいいかなぁと、本当にそんな思い付きでの発言だった。不公平感が無いようにティアナさんも含めて三人にと告げたわけだが、反応が想像以上に凄かったというか……結構距離がある状態で呟くように言ったのに、もの凄い勢いで三人ともこっちを振り返っていた。
「ごめんね、カナーリス、イレクトローネ……私の行動が軽率だったよ」
『反省を出力……《ううん。私の方こそ変にムキになっちゃったごめんね》……争いはなにも生まない』
「自分もちょっと感情のコントロールができてなかったですね。申し訳ない」
そして、もの凄く分かりやすいぐらいに仲直りをして握手を交わし、チラリと期待の目でこちらを見てきたので軽く頷く。
「はい、それでは主様に迷惑をかけないように、順番に並んでください」
『「「はい!」」』
そしてネピュラの声かけと共に綺麗に整列し、ネピュラが俺に一口サイズに切ったベーコンがみっつ乗った小皿を差し出してきた。
な、なんか、凄い状況になった気がするが……ま、まぁ、これで喧嘩が解決すらなら別にいいか……えっと、最初はティアナさんか。
「で、では、どうぞ」
「ありがとう! う~ん、美味しい! 今日は本当に来てよかったよ」
ベーコンを食べて幸せそうな表情を浮かべた後で、ティアナさんはスッと横にズレて続けてイレクトローネさんが俺の前に来た。
さっき見た電子情報化して食べる食べ方に、この所謂「あ~ん」という行為が意味があるのかは疑問ではあるが、とりあえず同じようにベーコンを差し出す。
「どうぞ」
『至福の思いを出力……《はぁぁぁ、ネピュラさんの作ったベーコンを、快人様から食べさせてもらう! 推しと推しのスーパーてぇてぇコラボレーション! 溢れる幸せは、まさに、メモリー!!》……最大の感謝を』
相変わらずのテンションの落差であるが、多少慣れてきた気もする。とりあえずテンションが上がると限界アイドルオタクみたいになることは分かった。
そしてイレクトローネさんが横にズレて、最後にカナーリスさんにもベーコンを食べさせる。
「どうぞ、カナーリスさん」
「ありがとうございます! たはぁ~控えめに言って最高ですね。いやはや、快人様にはお見苦しいところをお見せしまって、自分もまだまだ未熟者で申し訳ない! ですが、結果としてこういう幸せ満点な状態に繋がったのであれば、結果的には良かった気もします。おっと、だからと言って今後ワザと喧嘩したりとか、そのようなことはしませんのでご安心を!」
カナーリスさんも相変わらずの無表情ながら、非常に嬉しそうな声でお礼を告げた。なんというか、完全なアイドル扱いで若干の困惑はあるが、とりあえずまぁ、喧嘩が終わったのでよしとしておこう。
と、そこでふと思いついてベーコンを小さくカットして、ネピュラの方を向く。
「……えっと、ネピュラもよかったら食べる?」
「妾には別に必要はありませんが……ですが、主様の厚意はとても嬉しいので、いただくことにします」
ネピュラは一瞬キョトンとした後で明るい笑顔を浮かべて、俺が差し出したベーコンを小さな口で食べる。その可愛らしい仕草に和みつつ、その後はなんだかんだで穏やかに皆でバーベキューを楽しんだ。
シリアス先輩「で、この後他のファンクラブの連中にボコボコにされると……ティアナだけ返り討ちにしそうだけど……」




