双極神ティアナ⑲
ティアナさんとイレクトローネがリリアさんに挨拶に行っている間に、俺はネピュラを呼んでカナーリスさんと三人でバーベキューの準備をしていた。
「このヤギ肉は臭みも無くてかなりいいと思うんですよ。たはぁ~山羊乳の方はイマイチな味でしたけど」
「そういった偶発的ないい品が生まれるのも、試行錯誤の醍醐味ですね。確かに臭みや癖も少なく食べやすそうですね」
「俺はヤギ肉は初めてですけど、どんな味なんですかね?」
「赤身でサッパリした味わいですが、皮付近などがかなり臭みが強いのでショウガなどで臭みを消すのが一般的ですね。ただこのヤギ肉はほとんど臭みが無いので、そのままでも美味しく食べられると思いますよ!」
カナーリスさんが用意してくれたヤギ肉に関して尋ねると、ネピュラが元気よく答えてくれた。確かに見た感じ赤身で、牛もも肉とかに近い見た目かもしれない。
現在はカナーリスさんが肉や野菜などを用意して、俺が串に刺していき、ネピュラはバーベキューソースを作ってくれている。こうやってワイワイ話しながら準備するもの、結構楽しいものである。
そんなことを考えつつのんびり準備をしていると、ティアナさんとイレクトローネさんが戻ってきた。
「おかえりなさい、挨拶は問題なかったですか?」
「ただいま、そしてネピュラさん、こんにちは……うん。問題なく挨拶できたよ」
『感想を出力……《用意した手土産も喜んでもらえたようでよかったよ~》……快人様の助言に重ねて感謝します』
「……手土産?」
どうやらうまく挨拶は終わった様子だったが、その際にイレクトローネさんが口にした手土産という言葉にネピュラが不思議そうに首を傾げた。
そういえば、ネピュラは手土産を決める時には居なかったっけ。
『当機と双極神がリリア・アルベルトに持って行ったものです。快人様の助言を得て、すべてこの世界に存在する品で作った模型です』
「リリアちゃんがドラゴン好きだって話だったので、私とイレクトローネのそれぞれの世界のドラゴンを模型にして手土産にした感じですね」
「なるほど……ところでそれは『この世界の現時点の技術体系で再現可能な品』ですか?」
「『……え?』」
ネピュラの問いかけにイレクトローネさんとティアナさんは、予想外の質問をされたというような表情を浮かべた。
「例に挙げるならマキナさんの世界の機械類などは、この世界に存在する素材で作ることは可能ですが、この世界には機械工学等の技術体系は無く、機械製品というのは未知の品と言えるわけです」
『……当機の渡した品は……おそらく技術的には可能……かと』
「……あ~これ、私がやらかしちゃったかもしれないです。私が作った品は四大元素を融合して物質化してるんですが、その技術って……」
「無いですね。仮にあったとしても、実現可能なのはクロムエイナさんなどのごく一部の上澄みの方たちだけでしょうね」
「ま、不味い感じですかね?」
「う~ん、とはいえ目視で見て四大元素の融合物質化を用いた品であると判断するのは難しいでしょうし……まぁ、大丈夫だとは思います」
俺も気づかなかったが、ティアナさんが作った模型はこの世界の技術では現時点では再現不可能な品だったようだ。
「主様のように特別な立ち位置にいる相手に渡したり、自身で使う分には問題ないですが、リリアさんなどに贈り物をする際は素材だけではなく技術部分などにも注意しなければなりませんよ」
「はい」
『申し訳ありません、当機も浅慮でした』
そういえば、カナーリスさんも凄い品を作るがあくまで俺が使うか自分で使うかの場合だけで、注文用タブレットなどを作成する際は「この世界の技術で再現可能であるかどうか」を事前に調べていた覚えがある。タブレットは確か、箱に入れた手紙を対となる箱に送る魔法具の技術を応用してるんだったかな?
「リリアちゃんに謝罪してきた方がいいですかね?」
「いえ、謝罪は不要でしょう。かえって恐縮させてしまうだけでしょうし……ただ一度リリアさんのところには行って、送った模型は『公開などはせずに個人で楽しんで問題はない』と伝えておくべきだと思いますよ。いかに貴女達が常識的で礼を持って接したとしても、リリアさんにとっては圧倒的上位者であることには変わりませんし、そんな相手から貰った品は目立つところに飾らないと不敬……と、そんな風に考えても不思議ではありません。マキナさんから貰った世界にコレクションとしてしまって楽しんでもらって大丈夫だと伝えておいてあげるべきだと思いますよ」
「なるほど……じゃあ、私ちょっと行って伝えてきます」
ネピュラの言葉に納得したように頷いたあとで、ティアナさんは姿を消した。たぶん先ほどネピュラに言われたことを伝えに言ったのだろう。
「……う~ん、やっぱりネピュラはいろいろ気が利いて凄いね」
「妾は絶対者ですからね! 絶対者たるもの、様々な視点から物事を見るべきなのです!!」
「なるほど、さすがネピュラ」
小さな体で胸を張るネピュラを微笑ましく思いつつ頭を撫でると、ネピュラも目を細めて嬉しそうに微笑んでくれた。
絶対者「……片付けろ」
胃痛の悪魔「……ア、ハイ」
シリアス先輩「継続胃痛発生装置を速攻撤去した!? こ、これが絶対者……」




