双極神ティアナ⑰
来客があり、玄関で応対にあたったルナマリアから連絡がもたらされた時、リリアは「ついに来たか」という気持ちだった。
「……お嬢様に一言挨拶がしたいと、ミヤマ様の元を訪れている双極神様らしき御方と、イレクトローネ様がいらっしゃいました。ミヤマ様の姿はありません」
「イレクトローネ様が? 予想外ですね……カイトさんを伴わずに双極神様おひとりでいらっしゃる可能性は想定してましたが……」
元々、快人の元をティアナが訪れているのはリリアも知っており、顔合わせを行う可能性が高いとは彼女自身も思っていたことだ。
可能性が高いのは快人が連れてくるパターンだとは思っていたが、以前の誕生日パーティのイレクトローネの時のように神単独でやってくる可能性は考慮していた。
「双極神様とイレクトローネ様が知り合いであれば、共通の知り合いということになりますし、カイトさんではなくイレクトローネ様が紹介に来てくださってもおかしくは無いですね。ルナが、双極神様らしき方と言ったのは、応対のやり取りはイレクトローネ様と行ったからですよね? その御方は間違いなく双極神様なのですか?」
「まず間違いないかと……お嬢様も一目見れば分かります」
「凄く嫌な予感がするのですが……と、ともかく、会わないという選択肢はありませんしお通ししてください」
ルナマリアの言い回しに不安な気持ちを大きくさせつつも、それでもわざわざ訪ねてきた異世界の神々と合わないなどという選択肢は存在しない。
というか、そもそもリリアもティアナとの顔合わせはほぼ確実だろうと、応接室で待機していたので、このまま呼んでもらって問題ない。
出迎えるために座っていた席から立って、ティアナとイレクトローネの到着を待っていると、少してルナマリアが戻ってきた。
「……お連れいたしました」
「入っていただいてください」
リリアの言葉に反応してルナマリアがドアを開け、まずは見覚えのあるイレクトローネ……そして、チリンという鈴の音と共にティアナが入室してきて、リリアは少し前のルナマリアの言葉の意味を理解した。
ティアナという存在は、あまりにも圧倒的だった。決して死の魔力などのように威圧感があったりするわけではなく、息苦しさなどを感じるわけでもない。
だが、違う……表現するのならば……存在感の桁が違うとでもいうべきだろう。一目見れば理解できた。あまりにも圧倒的な格の違い、力の差云々以前に存在としての次元がそもそも違うような印象を受けた。
見た目は己とそう変わらない人型の体のはずなのに、まるで天を突くような巨人が目の前にいるかのような、一目で格の違いを理解させられるほどの存在感に思わず息を飲む。
とはいえ、あくまで存在感が凄まじいだけで圧などを感じるわけでもなく、言葉を発したりすることは普通にできる。
「ようこそいらっしゃいました。どうぞ、こちらのお席に」
『急な来訪になってしまって申し訳ない。快人様の誕生日パーティ以来ではあるが、壮健なようで安心した』
「ご無沙汰しております、イレクトローネ様」
「私は初めましてだね。私の名前はティアナ、双極神って呼ばれることもある異世界の神だよ。会えて嬉しいよ、リリアちゃん」
「初めまして、リリア・アルベルトと申します」
軽く挨拶を交わしながらふたりの神は席につき、それを確認してからリリアは「失礼します」と一声かけて向かいの席に座った。
(さ、さすがは神様というべきとてつもない存在感ですが、とても柔らかい雰囲気の御方のようでそこはホッとしました)
圧倒的上位者ともいえる存在感に驚きはしたが、快人が初対面でティアナが優しい相手だと感じ取ったように、リリアもティアナの微笑みを雰囲気から優し気な空気を感じていた。
少なくとも始めて会った時のマキナ……もといエデンのような威圧感はなく、イレクトローネに関しても以前のパーティで話して人柄は知っているので、少しだ安心はできた。
……まぁ、それはそれとして、座ってなお途方もない存在感には思わず背筋が伸びるのだが……。
しかし、この凄まじい存在感はティアナも意識してやっていることでは無かった。というのも、彼女はこの世界に合わせてかなり力を落としており、その調整度合いに関しては快人の反応を見て調整していた。
そう、それは誕生日パーティの時のイレクトローネと同じぐらいの調整であり、イレクトローネは快人以外の面々の反応を見て調整をし直したが、ティアナは快人の反応を見て問題ないと判断したため再調整は行っていなかった。
そしてリリアが、異世界の神に対して緊張した様子であるというのは予想できた反応であるため、己が凄まじい存在感であることには気づけていない。
以前同じミスをしたイレクトローネなら気付ける可能性はあるのだが……正直言ってその程度の調整は、彼女たちのレベルで言えば誤差の範囲であり、この場に誕生日パーティの時のような完全な一般人というレベルの存在でもいない限りは、反応から察するのは難しかった。
そんな偶然もあり、リリアは圧倒的な上位者オーラを放つ神と向かい合って座ることとなっており、人柄は優しそうだと感じつつも、胃はキリキリと痛んでいた。
シリアス先輩「で、なまじリリアも強いから、どのぐらいかとかはまったく分からないものの、滅茶苦茶に強い存在であるってことは理解できるだろうし、そら胃も痛いだろう」




