双極神ティアナ⑬
クロを加えてのお茶の中、ティアナさんが最初に俺に出してくれた見た目はビー玉、食べるとクッキーのお菓子を再び出してくれた。
たぶんクロは食べてないので、クロにも異世界の食材を体験してもらおうという優しさからだろう。
「クロムエイナちゃん、よかったらどうぞ」
「……えっと……ガラス玉? いや、飴玉とかかな?」
「快人くんにはさっき出したんだけど、私の世界の食べ物でこっちの世界で言うところのクッキーみたいなものだよ」
「へぇ、これがクッキー……それじゃあ、いただきます――ッ!? す、すごい! 持った時は硬かったのに、食べたらサクサクした食感で、本当にクッキーみたいな味だ!?」
食べたクロは感動したような目を輝かせて、その様子を見てティアナさんも微笑みを浮かべる。
「俺も結構いろいろ食べさせてもらったんだけど、流石異世界の食材だけあって、こっちの常識じゃ考えられないようなものも多くて楽しかったよ」
「そうなんだ……異世界の食材……」
う~ん、俺もクロとの付き合いが長くなったから分かるんだけど……いま、コイツ……ベビーカステラのこと考えたな。
「あ、あの、ティアナさん……ボク異世界の食材に興味があって、もっと詳しく話が聞きたいんだ。あと、無理なお願いってのは自覚してるんだけど……せ、せめて一種類だけとか……譲って貰えたりは……」
完全にベビーカステラの新しい可能性を見つけた顔してる。異世界の食材が欲しくてたまらないってのが、表情とか仕草から分かりやすすぎる。
しかし、そんなクロのお願いを聞いたティアナさんは難しそうな表情を浮かべた。
「う、う~ん、この場で食べさせてあげたりってのは、シャローヴァナルにも許可を取ってるから大丈夫なんだけど……譲渡となると、私の一存じゃ決めれないんだよね。あくまでここはシャローヴァナルの世界だから……」
「うっ、そ、そうだよね。シロとの契約とかもあるんだもんね。無理いってるのはボクの方だから、仕方ないよ」
シロさんの許可が無ければ食材を譲渡することはできないというティアナさんの言葉を聞いて、クロはガックリと肩を落としながらある程度は予想していたのか、思った以上にアッサリと引き下がった。
……と思ったのだが、そのあとでチラッと俺の方を見たかと思うと、ススッと素早い動きで俺の隣に来て腕に抱きついてきた。
「……カイトくん。ボクね、どうしても……どうしても、異世界の食材が欲しいんだ……お願い、力を貸して……」
すっごい甘えたような声かつ上目遣いで媚びるようにお願いしてきた……そこまで欲しいのか異世界の食材……欲しいんだろうな。
そして、クロはしっかり状況を理解している。シロさんがクロのベビーカステラの作りに協力する理由はなく、まず間違いなくクロが頼んだところで却下される。
しかし、俺が頼めば可能性はあるかもしれないと考えて、こうして強請ってきてるのだろう。そして、悲しいかな……実に有効というか、恋人である俺に対してだけであろうあねだり……実に効果的だと言わざるを得ない。
……えっと、シロさん、たぶん話は聞いてましたよね?
(……聞いていましたが、なぜ私がそこのベビーカステラ狂いの手助けをする必要が?)
それは本当にもっともだと思うんですが、俺としてもなんとかクロの願いは叶えてあげたいというか……シロさんだけが頼りなんです!
(……ふむふむ……もう一回)
……はい?
(いまのやつを、もう一回お願いします)
いまのやつ? えっと……ああ、シロさんだけが頼りなんです!
(……愛する恋人の……はい、それでは、もう一度)
……えっと……愛する恋人のシロさんだけが頼りなんです! 助けてください!
(仕方ありませんね。以前に困った際に助けを求めるようにと言ったのは私ですし、快人さんにそこまで熱心にお願いされたのであれば、恋人である私が応えぬわけにはいかないでしょう)
なんか、心なしか……かなり嬉しそうにしていらっしゃる。そういえば、前にマキナさんに頼った時もガッツリクレーム入れてきたし、頼られて嬉しいのかもしれない。
そんなことを考えていると、なにやらピクッとティアナさんが反応を示した。
「……え? シャローヴァナル? へ? えぇぇぇ!? 自由来訪許可? 一品譲渡するだけで? いや、不満は全くないどころか、その条件だと私が得し過ぎるから、後で交渉に使おうと思ってたのを出すよ。うん、そういうやつ……快人くんとふたりで使う場面に限定されるとは思うけど、うん。詳細は後で……そうだね、お互いいい契約が結べそうだね」
どうやらシロさんはさっそく動いてくれたみたいで、そのままティアナさんとなにかやりとりをして合意したような感じだった。
「……えっと、じゃあ、クロムエイナちゃん。間違いなく快人くんのおかげだけど、シャローヴァナルが許可を出してくれたから、私の世界の食材を一種譲渡するよ」
「ッ!? あ、ありがとう……カイトくんっ! 大好き!」
クロは感極まった様子で飛びつくように抱き着いてきた。やっぱりどうもクロには若干甘くなってしまうというか、これだけ喜んでもらえたならシロさんに頼んだかいがあったと、自然とそう思えた。
シリアス先輩「平和だ。実に平和な感じだ……軽いイチャラブが肌に刺さる痛みだけど、基本的に平和……ここから一体どんな風に胃痛に持って行くんだ?」
~~~~数話前の場面~~~~
ティアナのオーラ「……私はむやみやたらに周囲を威圧するような品の無い魔力とは違う。圧力などは与えず、それでいて絶対的な上位者であることは理解できるような格の違いを自然に理解させる。それが圧倒的上位者のオーラの嗜み……」
小さな物語の終わり「……」
ティアナのオーラ「……ちゃうんすよ……いや、本当にちゃうんすよ。あくまで、一般的な話でして、快人様はもちろん除外なわけです。快人様に圧なんて与えませんし、スッとこちらから三つ指突いて適応しますので……」
※ティアナは『快人の反応』を見て、オーラなどの調整は問題ないと判断した。
※クロはティアナを一目見て、とんでもない強さの存在と感じていた。
※イレクトローネが最初に現れた時には、明確に上位者オーラ的な気配を快人以外が感じており、その反応を見て調整した。
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シリアス先輩「……あっ、これ、ティアナも気づかないうちに上位者オーラ纏ったまま、胃痛公爵のとこ行く感じのやつだ……」




