双極神ティアナ⑨
快人とティアナが楽しくお茶をしていた頃、快人の家の裏庭にある亜空間にはカナーリスともうひとり……イレクトローネの姿があった。
シャローヴァナルにトリニィアに自由に来る許可を貰っているイレクトローネは、今回ティアナが快人と会うことを知って、覗き見……もとい、参考にするためにカナーリスの作った空間から様子を見ていた。
『さすが、快人様と称えるべきか双極神も非常に楽しそうに見える。羨望を出力……《快人様とお茶は羨ましいよぉ。推しと同じテーブルで向かい合ってお茶とか尊みが凄まじくて、幸せビックバンだろうし、私もやりたいなぁ~》……当機は基本的に飲食は行わないが、やろうと思えば可能である』
「まぁ、気持ちは分かりますね。自分もたびたび快人様とお茶をすることはありますが、幸福度が半端ないですからね。しかし、こうやって覗き見してて大丈夫ですかね? 自分、この前顔がドーナツみたいになったんですが……」
『それは惚気倒した流転神の自業自得だと考える。次いで意見を出力……《別に覗き見ぐらいじゃ∇∮◆£は怒らないでしょ。基本的にめっちゃ優しいし、邪魔しようとしたら怒るかも? ふむ……》……当機に閃き走る』
「……自分ちょっと離れますね」
一瞬イタズラを思いついたような表情に変わったイレクトローネを見て、カナーリスはスッと少し距離を取った。イレクトローネは普段は感情を抑制している影響なのか、感情を出力する際にはややハイテンション気味になる傾向があり、気心知れた特別に仲のいい相手にはイタズラを仕掛けたりということもある。
そして、ティアナはその気心知れた特別に仲のいい相手にしっかり該当している。
なにかをしようとスッと指を向けたイレクトローネは……直後に上半身が消し飛び、数秒後に再生した。
『……動作を知覚できなかった。驚愕を出力……《こっちがなにかする前に、快人様どころか私たちにも見えない速度で先制してきたんだけど、あのゴリラ半端ないよ。なんなら、嫉妬でバーサークモードになってる時は、それでもまだ手加減してたみたいで戦慄だよ》……妙な事を考えるべきではないようだ』
「そりゃ、∇∮◆£……ティアナにとっては、待ちに待った快人様との会合なわけですしね。いや、実際長い付き合いの自分でもなかなか見ないぐらいに上機嫌ですからね。たはぁ~快人様側からの好印象を感じ取って嬉しくなってるんでしょうねぇ……あれ? そういえば、ティアナはどこのファンクラブでしたっけ?」
『解答を出力……《ガチ恋派閥のひとつだけど、私の居るところは別派閥だね。私は推し活寄りのガチ恋派閥だけど、∇∮◆£……ティアナは、もうちょっと見守り寄りっていうか、可愛い快人様を穏やかに見守りつつガチ恋してるみたいな派閥だね》……ガチ恋勢も様々な形があるということだ』
「なるほど、まぁ、自分もイレクトローネやティアナとは違う派閥……快人様のヒーロー的なカッコよさに胸を射貫かれた世界創造主が集まってるファンクラブですし、嗜好の差はでますよね。たはぁ~とはいえ、快人様を想う気持ちに貴賎など無いわけですが」
『心より同意する。優先する部分は違えど、快人様を愛する気持ちは同じである』
あえて区別するのであれば、カナーリスは快人のカッコよさを、イレクトローネは快人の尊さを、ティアナは快人の可愛さを一番重視して推しているという形である。ティアナの所属するファンクラブの嗜好は、マキナが好むものに近いため、マキナとティアナが快人の話をすれば意気投合するのは確実と言えた。
『……別の話題を出力……《そういえば、せっかく来たんだしリリアちゃんにも一声かけてこようかな?》……手土産の用意もある』
「ん~それなら、後でティアナと一緒に行けばいいのでは? たぶん、ティアナも挨拶はしたがるでしょう」
『ふむ、なるほど……確かに複数回に分けてはリリア・アルベルトの手間になるか、双極神と一緒に行ったほうがよさそうだ』
「ですね。リリアさんは今日は外出の予定はなくて家にいるはずなので、たぶん問題なく挨拶はできると思いますよ」
『では、そうしよう。依頼を出力……《あ、カナーリス。ついでに、快人様とリリアちゃんへのそれぞれのお土産に関して相談に乗ってもらっていいかな? いちおうシャローヴァナルの許可は取ってけど、どれがいいと思う? これは流石に大きすぎるかなぁ?》……失礼の無いように事前に決めておきたい』
「そうですね。庭とかに置くならともかく、10m越えの品は手土産には大きすぎるかと……しかし結構種類がありますし、食品も多い……おっと? さては、快人様がティアナから異世界の食材食べさせてもらって喜んでたのを見て、羨ましくなりましたね?」
『……否定は大変に難しい。当機もあの太陽のような笑顔を向けられたいという気持ちが無いと言えば、嘘になってしまう』
「見てるこっちまで溶けちゃいそうな、ゲキマブスマイルでしたからね~」
しみじみと語り合いつつ、仲良く手土産を相談していくカナーリスとイレクトローネだったが……丁度そのタイミングで、執務室に居たリリアは胃に氷の塊でも叩き込まれたかのような寒気を感じて、無意識にお腹を撫でていた。
シリアス先輩「胃痛の悪魔くんさ……本当に人の心が無いレベルで、予想の外側から刺してくるじゃん……異世界の神二人同時に手土産もって来訪って……」




