双極神ティアナ⑧
その後もティアナさんは、いくつか俺に馴染みのない感じの不思議な食材を出して食べさせてくれて、異世界の文化に触れているというか、どれも新鮮で非常に楽しかった。
「う~ん、やっぱり別世界のものは新鮮で面白いですね。初めてトリニィアに来た時も、結構いろいろ戸惑いましたけどアレもこれも新鮮って感じの気持ちを思い出しました」
トリニィアは過去の勇者役のおかげもあって、ある程度異世界人が馴染みやすい土台ができていたので割と自然な感じで馴染めたが、それでも魔法とかも含めて驚いた覚えがあるし、食材でもクロとデートした時のワームの肉やら噛みついてきて食べられる花やらには驚いた覚えがある。
「そういう新鮮さを体験できるのは、私たちみたいな世界創造主より快人くんみたいな子が明確に優れてる点だって言えるかもしれないね。特に私もそうだけど、全知の力を持ってると新鮮な驚きってのにはなかなか出会えない……そういう意味だと、必ずしも力が大きい方が優れてるってわけじゃないのかもしれないね」
「なるほど、その考え方はなんというか凄くいいですね。ティアナさんは優しくていい人だってカナーリスさんが言ってたのが、よく分かりますよ」
「ありがとう。でも、もし私のことが優しくていい人に見えるのなら、それは私だけじゃなくて快人くんが優しくていい子だからってのもあると思うよ。ほら、優しい相手にはこっちも優しくしたくなるでしょ?」
「たしかに、そうかもしれませんね」
ここまで話してみた限りだと、本当にティアナさんは滅茶苦茶優しくていい人という印象である。雰囲気が凄く優しくて穏やかというものあるのだが、こっちの称賛の言葉は素直に受け取りつつも、合わせてこちらのことも褒めてくれたり、全知全能というとんでもない力を持っているのに偉そうだったり力を誇示したりというのもまったくない。
カナーリスさんやイレクトローネさんも凄くいい人だが、カナーリスさんは表情が常に無表情、イレクトローネさんはテンションのスイッチみたいなのがあってやや癖があると考えると、異世界の世界創造主の中では一番真っ当かつ話しやすい方という感じがする。
それこそ、ティアナさんであればリリアさんとかに紹介したとしても、リリアさんもあまり胃を痛めることなく仲良くなれそうな気がする。
「……けど、いくつかの品を見せてもらいましたけど、ティアナさんの世界はやっぱり俺の居た世界よりだいぶ文明が発展してる気がしますね」
「そうだね。生態系とか世界の仕組みとかに違いがあるから、一概に同じとは言えないけど……快人くんの認識で言えば、SFチックな世界って感じかもしれないね。まぁ、あくまで私が作った世界はね」
「ああ、そういえば、カナーリスさんが作った世界も管理してるんでしたっけ? ふたつの世界を管理するって大変じゃないですか?」
ティアナさんが、カナーリスさんが作った世界の管理を本人から託されているというのは、カナーリスさんに聞いたので知っている。
ふたつの世界の管理となると、かなり大変そうなイメージがあって尋ねてみると、ティアナさんは苦笑を浮かべて頬をかき、その動きに合わせてチリンと鈴の音が聞こえてきた。
「あ~いや、実はふたつじゃなくて、私の管理してる世界はいまのところ4853個あるんだよね」
「……へ? えっと、それは惑星がとか宇宙がとかではなく、世界そのものが……ですか?」
「うん。私の作った世界はひとつだけどね。カナーリスは特殊な事情があったけど、それ以外にも……なんていうのかな、あんま褒められたことじゃないけど世界の管理に飽きた世界創造主に頼まれたり、世界創造主がいろんな事情で消滅したりして残された世界や、世界創造主に見捨てられた世界を引き取ったりしてるうちに増えちゃったね」
そう言って苦笑するティアナさんだが、5000近い世界をひとりで管理しているというのはとんでもないというか、俺では想像もできないような規模の話である。
「他の世界創造主との戦いに負けたりとか、単純に力があまり強くなくて寿命があったりで世界創造主が消滅したりってパターンは仕方ない部分もあるけど……飽きたり見捨てたりは、世界創造主本人はよくても、その世界の住人が可哀そうだから、できるだけ引き取るようにしてるよ」
「それはなんというか……大変じゃないですか?」
「う~ん、まぁ、そんなに細かく管理してるわけじゃないから手間はほとんどかかって無いよ。それぞれの世界ごとに生態系とか生活とかはあるわけだし、私が手を加えるようなことは殆ど無いよ。でも、じゃあ放っておいても大丈夫かというと、そうじゃないんだよね。世界って結構複雑だからね。エネルギーの流れとかが変に狂って、次元の壁とかに穴が開いちゃうこともあるから、そういう……その世界の住人だけじゃ対処できないようなトラブルを処理してくるぐらいだね」
本当に特に負担と思っているような様子はなく、ティアナさんにとっては複数の世界の管理は片手間に行える程度のものらしい。
そういえばカナーリスさんも複数個所に本体が同時に存在するとかって芸当をやってたし、ティアナさんにとっては数は大して問題ではないのだろう。
ただ、本人は当たり前の事のように語っていたが、自分が作ったわけでもない創造主に見捨てられた世界にごく自然に手を差し伸べているあたり、やっぱり根っからの優しさというのが伝わってきて、なんというかスケールが大きい話ではあるが胸が温かくなるような気がした。
シリアス先輩「そうか、滅茶苦茶強いって点を除けば、見た目とか喋り方に癖は全くないのか……快人本人に対して、嫉妬に狂ったバーサークゴリラモードになるわけもないし、快人にしてみれば滅茶苦茶接しやすい相手……カナーリスとかが言ってた通り、訪問許可とか余裕でとれそう」




