双極神ティアナ⑦
ティアナさんが飲み物を用意してくれることになって、ティアナさんが席から立ち上がって軽く手を動かすと、少し変わった形状の道具とティーカップ……そして、1m以上はあろうかという巨大な花束が現れた。
「……花、ですか?」
「うん。この世界で言えば、紅茶とかが味は近いかな? 葉じゃなくて花から入れるお茶みたいに思ってもらえるといいよ」
そう言いながらティアナさんが透明な筒が複数組み合わさったような不思議な形状の道具を花束にかざすと、まるで吸い込まれるように巨大な花束が透明な筒に吸い込まれる。
とてもサイズ的に巨大な花束が入るような筒ではないのだが、花束は吸い込まれると共に小さな球状に圧縮され透明な筒の中に浮かび、その筒を抽出器のような道具に取り付けて傾けると、薄いピンク色の液体がカップに注がれていく。
な、なんか凄くSFチックというか、未知の飲み物って雰囲気が凄い。お湯とかで抽出するわけではなく、花束そのものを圧縮して飲み物に変えているような感じである。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。香りは、確かに紅茶っぽいような……あんまり花の香りはしませんね」
「ああ、この世界や快人くんの生まれた世界の技術体系だと馴染みが無いとは思うんだけど、これはこの世界の言語で言うなら原子変換装置みたいなもので、原子変換によって性質を変えてるんだよ。ザックリと分かりやすく言えば、花束の構造そのものを作り変えてる感じだね。そう聞くと元の物体はなにを使っても変わらないように思えるかもしれないけど、そこに特殊な量子法則と時空化学を組み込むことで、元となった物体の性質をある程度残しつつ別のものに変質させてる感じかな」
「な、なるほど……?」
「ふふ、まぁよく分からないよね。不思議な力で花をお茶に作り替えてるって認識で大丈夫だよ」
完全に俺の知ってる分化とは別物……それも、かなり発展している技術で作られたお茶ということらしい。おそらく詳しく原理を説明されてもサッパリだろうし……ティアナさんの言う通り、不思議な力でお茶が作られてるって納得しておくほうがよさそうだ。
とりあえず飲んでみようと思ってカップを手に取り、中のお茶を見る。湯気とかが出ている様子はないし、匂いもほとんどない。色もロゼワインのような色合いなので見た目だけではよく分からない。
一口飲んでみると、人肌の温度というか丁度いいぐらいの温度であり、口に含むと爽やかな香りが一気に広がった。カップに入ってる状態で嗅いだ際にはほぼ匂いは無かったはずなのに、どこにこんな香りが隠れていたのかというほど口の中に広がって、鼻から抜けていくような感覚だった。
少し甘みと酸味があり、スッキリとした味わいだが……確かに味は紅茶に近い感じで、例えるならフルーツティーとかそんな感じの味だ。
「フルーツティーっぽい味わいで、美味しいですね。口の中に入れた時の香りの広がり具合が凄いというか、未体験の爽やかさです」
「圧縮された香りが一気に広がるから、面白いでしょ? 比較的快人くんにも馴染みのある味わいの物を選んだんだけど、美味しかったならよかった」
「確かに美味しいですし、凄く新鮮な感じで楽しいですね」
「喜んでもらえたなら、私も嬉しいよ。よかったら、お菓子もどうぞ」
「ありがとうございま……お菓子?」
ティアナさんが皿に載せて差し出してくれたのは、色とりどりの球体……正直ビー玉かスーパーボールにしか見えないのだが、お菓子……飴? いや、ゼリーとかだろうか?
「えっと、この世界で言うと近い味わいなのは……ああ、クッキーだね」
「え? く、クッキー!?」
予想外のクッキーという言葉に驚きつつ、ひとつ手に取って口に入れてみる。光沢のある外見と触ってみた感触だと完全にガラスとかだったのだが、とりあえずクッキーという言葉を信じで慎重に歯で噛んでみると……サクッとした食感と共に本当に口の中にクッキーのような味が広がった。
お、おぉ、凄い。見た目から受けるイメージと、食感や味がまるで一致しない。手で持った時は明らかに硬い感じだったのに、サクサク噛めるのも不思議である。脳がバグりそうというか、なんであの外見と手触りで、この食感と味になるのかさっぱり分からない。
「な、なんというか、凄いですね。手で触ってみた感じ、ガラス玉とかそんな感じの手触りなのに、歯を立てたらサクッと噛めるというか、不思議な感じです」
「これは条件で硬度とかが変わる食材だから、手で持つと硬いけど口に入れて噛むと柔らかくなるんだよ」
「不思議な体験をしてる気分で新鮮です。あ、味は本当にクッキーみたいで美味しいですね。見た目のイメージと全然味が違って混乱しますが……」
「異世界らしいでしょ? 私の世界の食材は、快人くんにとっては未知のものも多いし、中にはこの世界とかの生物の味覚だと味を感じ取れないものとかもあるね。もちろんちゃんと、味とか安全性とかは考えて選んできてるから、安心してね」
確かに世界が違えば、俺の常識では考えられないような食材があっても不思議では無いし、そういうのを体験出来ているのはシンプルに楽しい。
あと、やはりティアナさんが優しい雰囲気で話しやすいというのもあるだろう。こちらの味覚に合わせたものを出してきてくれているし、全知で事前に俺が食べても問題ないものを選んで持ってきてくれていると思うので、そういう部分でも安心して未知の食べ物を楽しむことが出来ていた。
めーおー「あ、あの、ちょっとその辺の話もうちょっと詳しく……」
シリアス先輩「ひっこめ、ベビーカステラの悪魔……新たな可能性を感じて出て来るんじゃない」




