双極神ティアナ⑤
とある空間では双極神∇∮◆£と流転神カナーリスのふたりの姿があり、∇∮◆£に対してカナーリスが無表情ながら上機嫌な声色で話しかけていた。
「いや~そんなわけで、快人様ったら自分の心をガッチリ掴んで離さない訳なんですよ! ああいうことサラッと言っちゃうのは、マジカッコいいですよね。それにしても……たはぁ~なんだかんだでデートOKみたいな返事をいただけるとは、自分もしかして結構快人様に気に入られてるんじゃ……いやいや、自惚れ過ぎちゃいけないとは思ってるんですが、それでもそれなりに信頼はしてもらってるとか、そんな気はするわけなんですよ!」
「そ、そうだね。カナーリスの事を頼りにしてるんじゃないかな? そういう意味では、しっかり気に入られてるんだと思うよ……うん、それはいいんだけど……えっと、日程伝えに来たんだよね?」
「そうですよ。それで、その時に話題に出したのが自分が作ってる牧場だったんですが、いいですよね~のどかな牧場で快人様と並んでソフトクリームを食べるとか、エモエモの極みってもんですよ。たはぁ~想像するだけでついついニヤけちゃいそうですよ。いや、相変わらず自分の表情筋は沈黙してますが……心はスーパーハッピーですよ」
「……よ、よかったね。あれ? おかしいな? 話通じてないのかな……私がトリニィアに行く日程を伝えに来てくれたんだよね? 自慢話をしに来たってわけじゃないんだよね?」
「ええ、その通りですよ。しかし、快人様と言えばそのカッコよさもさることながら、ユーモラスな面も素敵なわけでして……」
声だけは楽し気な様子で話すカナーリスの言葉を苦笑しつつ聞いていた∇∮◆£ではあったが、一向に話が本題に移らないため、若干遠回しに「本題に移れ」と伝えたのだが……カナーリスは返事こそするものの、絶好調で快人の話……もといほぼ惚気みたいな話を続けていた。
「……カ、カナーリス? 私のことを怒らせようとしてるわけじゃないよね? 快人様と楽しく過ごしてるって話は分かったから、そろそろ本題を、ね?」
「ああ、そうですね。それで、快人様の話の続きなんですが……」
「そろそろ殴ってもいいかな? そろそろ殴っても許されるよね!? カナーリス、私が拳を握る前に日程についての話をしてくれるかな?」
「うん? ああ、∇∮◆£がトリニィアに来る日程ですが、トリニィアの時間で二日後なのでよろしくお願いします」
「うん。分かったよ。それで、快人様と会うのは初めてだしなにか注意することとか、手土産に持って行ったほうがいいものがあるなら教えて欲しいんだけど……」
「快人様と言えば、この前自分が作った空間に来た時に……」
「……」
必要なことを伝えた後は即座に惚気話に戻るカナーリスを見て、∇∮◆£の額にビキッと青筋が浮かぶが、∇∮◆£は基本的に温厚である。カナーリスがはしゃいでいる気持ちも分かると、怒りを引っ込めてなんとか表情に微笑みを浮かべる。
「……うん。カナーリスが快人様とかネピュラさんの話をいっぱいしたいのは分るよ。嬉しいことがあると、知り合いに伝えたくなったりしちゃうもんね。その気持ちはわかるし、話にも付き合うけど……まずは、私がトリニィアを訪れる際の話に関して、終わらせてからしよ?」
「うん? ∇∮◆£なら問題ないと思いますよ。快人様との性格の相性もいいでしょうし、普通にしていれば気に入られるんじゃないかと思いますね」
「それならよかった。優しい子だってのは分ってるけど、どうしてもネピュラさんの大恩人だし、ようやく会えると思うと緊張しちゃうからね。出来れば、快人様と話す時の話題とかのアドバイスも貰えると嬉しいな」
「任せてください! 快人様といえば、この前一緒にニフティの新作を考えた時なんですが、これがもう真剣な横顔が胸キュンポイントが凄くてですね」
「……ねぇ、それ、完全に惚気話に移行する感じだよね? そうじゃなくて、私が会話する時のアドバイスを……」
「たはぁ~自分は完全に見惚れちゃったわけなんですが、それも仕方ないぐらいの凛々しさでして、そのあとに紅茶をお出ししたりなんかしちゃったわけなんですけど、そこで快人様はゲキマブスマイルでお礼を……」
「……」
「……なんとそこで、ネピュラさんも加わってですね。三人でお茶をする流れになったわけで、完璧に自分得の幸せスペースが展開されたわけですよ。対面には快人様、膝の上にはネピュラさんというもはや隙のない布陣で、視覚に聴覚に触覚にと幸せ満点で、心の動揺を落ち着けるのに苦労するぐらいでしたよ。しかもその時に、ネピュラさんが……」
「…………」
「……そんなわけで実質三人でイチャイチャしてたというと、ちょっと大げさに言いすぎかもしれませんが、自分的には完全にその感覚でしたね。たはぁ~もうおふたりともファンサが凄いのなんのって、自分なんて完全に蕩けちゃいそうで……」
「………………ふんっ!」
「――ッ!?」
頬をヒクつかせた∇∮◆£によって、長々と語るカナーリスの顔面に『多次元量子宇宙貫通パンチ』が叩き込まれた。
シリアス先輩「たぶんいままでも似たような感じで殴られてるんだろうなと、容易に想像できるやりとり……」




