双極神ティアナ③
残業で帰宅が遅くなりました
本人が快人に伝えた様に、翌日クロムエイナは招待状を持参してリリアに魔界にオープンする遊園地に関する話をした。
「……というわけで、カイトくんやリリアちゃんを招待したいんだよ。まぁ、招待とは言っても、セレモニーとかじゃ無いし、なにかしてもらうってわけじゃなくて普通に遊園地で遊んでくれればいいんだけどね。急な話になっちゃったのだけは、ごめんね」
「なるほど、お話は分かりました。ありがたい申し出ですし、是非参加させていただきますね」
確かにいまから9日後というのは中々に急な話ではあるが、あくまで来賓等ではなく普通に遊園地に招待という形なので予定が合わなければ参加しなくても問題はない。
ただ幸いリリアの予定も空いており、遊園地に行くのは問題なかったため、リリアは招待状を受け取りつつ参加の意思を伝えた。
「こっちの世界では珍しい遊具が多いから、是非楽しんでよ……あ~でも、それとは別にリリアちゃんに個人的にお願いがあるんだけどいいかな?」
「お願い、ですか?」
「うん。もしよければ、リリアちゃんが遊園地に遊びにきたってのを宣伝に使わせてほしいんだ。リリアちゃんって、魔界でもかなり知名度があるからさ」
「え? ええ、それぐらいでしたらなにも問題は……私も日頃、間接的にとはいえ六王様との交流などを社交の場で使っているわけですし……」
リリアが遊園地に訪れたという情報を宣伝として使わせてほしいというクロムエイナに対し、リリアは快く了承の言葉を返す。
そもそもリリアも、クロムエイナを始めとした魔界や神界の重鎮との交流のおかげで、日頃の社交などで優位な立場に立てているので、ある意味ではクロムエイナの知名度を使わせてもらっていると言えるため、自分の名をクロムエイナが使いたいというのであれば断る理由は無かった。
「ありがとう! じゃあ、そういうことだから、カイトくんたちと一緒に楽しんでね」
笑顔でお礼を告げた後、クロムエイナは軽く手を振って転移魔法で去っていった。それを見送った後で、リリアは少し沈黙し……すぐ近くに控えていたルナマリアに声をかける。
「……ルナ、私って魔界で有名なんでしょうか? あんまりそういう認識は無かったですが……」
「う、う~ん、どうでしょう? 冥王様が宣伝に使いたいと仰られるぐらいなので、明確に効果があると見込んでの事でしょうが……ふむ、お嬢様の立場……ふむ……これまでの状況……あ~えっと……お嬢様、もしかすると想像以上に凄いかもしれません」
「……え?」
リリアの質問にしばらく考えるように腕を組んでいたルナマリアだったが、考えをまとめた後でなにやら気の毒そうな表情を浮かべた。
「……いえ、改めて考えてみると盲点だったかもしれません。お嬢様は、元々王女で通り名持ちで、人界では知名度は高かったので人界内では変化に気づき辛かったですが、よくよく考えてみると、いま魔界でのお嬢様の知名度はとんでもないことになってる可能性が高いですね」
「…………へ?」
「我々の認識として、とんでもない方というのはもちろんミヤマ様です。お嬢様の凄まじい交流の大半もミヤマ様が原因ですし……しかし、ミヤマ様に関してはアリス様がそれはもう献身的にサポートしているので、人界においても貴族などには名を知られていますが、一般人にはほぼ知られていないという状態ですよね?」
「そ、そうですね」
「そしてそれは、恐らく魔界でも同様かと……もちろん六王配下の方々などは知っているでしょうが、そこに属さない一般人に関しては、人界と同じようにミヤマ様をほぼ知らないのでは?」
「……つ、つまり?」
ルナマリアの言葉を聞いて、リリアもなんとなく意味が分かったのか、青ざめた表情で確認するように問いかける。
「……魔界の一般市民の目線で考えると、お嬢様は六王様や最高神様と懇意かつ高い評価を得ている人族であり、さらに実力主義の風潮が強い魔界において、まさに選ばれし者と言える伯爵級高位魔族の領域に20年少々で到達しているとんでもない天才で……予想ではありますが、魔界でのお嬢様って……人界で言うところの、六王様や最高神様並みに有名人なのでは?」
「ひぇ……」
「改めて思い返してみるとヒントになる場面はあったんですよ。ハーモニックシンフォニーで妖精族の方々が、お嬢様に群がってましたし……たぶん、魔界において一番有名かつ人気がある人族が、お嬢様なのでは?」
「……お、お腹痛い」
知らないうちに魔界でとんでもない有名人になっていた事実に気付き、リリアは思わずお腹を押さえて呟いた。するとまるで図ったかのようなタイミングで部屋がノックされ、入室を促すと快人が入ってきた。
「失礼します。リリアさん、ちょっと話が……え? な、なんか顔色悪くないですか?」
「お嬢様は、いつもの胃痛でございます」
「……え、えっと……また俺がなにかしました?」
「う、う~ん……いや、元を辿って行けば大元の原因はカイトさんと言えるかもしれませんが、そんなことを言い出してしまうと本当にキリが無いですし、カイトさんのせいでは無いですよ。ちょっと、個人的に驚きの事実を再認識しただけで……それで、カイトさんはなにか用事があったのでは?」
もしかしてまた気付かないうちにリリアの胃を痛めつけるようなことをしてしまったかと、快人が申し訳なさそうな表情を浮かべたが、リリアは苦笑を浮かべつつ快人のせいではないと優しい声で返した。
それを聞いてほっとした表情になった快人は、改めて訪ねてきた理由を告げる。
「……えっと、明後日に異世界の世界創造主の双極神さんって方が来るらしいので、リリアさんに事前に伝えておこうと思って……」
「…………前言を撤回します。やっぱりカイトさんのせいでお腹が痛いです」
快人が告げた言葉を聞いて、リリアは遠い目をしながら慣れた様子で胃薬を取り出した。
シリアス先輩「確かに、魔界の一般市民にとってリリアって滅茶苦茶有名人でもおかしくないのか……伯爵級レベルへの到達速度も、魔族と人族の違いはあれ℃ぶっちぎりで歴代最速だし……」




